行く、東北へ。⑥相馬

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取材/写真/文・鎌田浩宮

0.23を、
超えている。
こんなに、
のどかなのに。
飯も、
酒も、
旨いのに。

旅に出ると、地元の新聞を読むのが好きで、
おじさんが読み終わったのを見せてもらった。
福島民報　4月16日(月)。
気持ちのいい晴天。

どの写真も、クリックすると拡大するけれど、
それでも、なんの記事だか、判らないでしょ。
株価か？
エプスタの株価はいくらだ？

福島県各地の、放射線量測定結果だ。
単位は、マイクロシーベルト/時間。
県内1つ1つの市町村につき、
平均10～20カ所ほど前後の場所で測定している。
かなり細かく調べているな、と思いました。

おじさんちは、
どこに、
ガイガーカウンター、
閉まってあるの？

これは相馬市、そしてその南隣にある南相馬市。
僕は敢えて、旅の前に線量を調べてはいなかった。

「おじさん、これ、いくつ超えると危険なの？」
「1を超えるとじゃねえか？」
「へえ、そうなんだ」
「うちにも線量計、あるんだぞ。高ぇんだこれ」
「いくらしたの？」
「5～6万だったかな」

残念ながら、東京に戻って調べてみると、おじさんの認識は間違っていた。

埼玉県川口市や東京都西多摩郡瑞穂町のHPに、解り易く記してあるので、
抜粋しますね。
(どの自治体のHPにも解り易く書かれていないのが、逆に不可解だけどね)

【平成23年10月21日以降、基準は国で定める1時間当たり(毎時)0.23μSv
(マイクロシーベルト)を用います。

この基準は、医療行為によって受ける放射線量(医療現場でのレントゲンや
CTスキャン、がんの治療などによる放射線) に伴う被ばく量限度、
毎時0.19μSv(＝年間1mSv)に自然界からの放射線量、
毎時0.04μSv(＝年間0.38mSv)を加算したものです。

なお、数値が指針による基準値である毎時0.23マイクロシーベルト以上の場合は、指針に沿った屋外活動の時間制限を行い、簡易な除染を行う。

基本的には強い水流の利用またはブラッシング等により、洗い流す。
樹木については剪定する。落ち葉や剪定枝、泥等については回収し、生活上影響のない場所に埋める。
なお、泥等を埋める場合は、原則同一施設の敷地内で、深さ30センチメートル以上の穴を掘り、放射線の影響のない土で覆土する。】

まあ、これも日本政府が定めた基準なので、
本当にこれを下回れば人体を害さないのかどうかは、解らないのではあるが。

僕らのいる相馬市内、0.23を、超えている地域、ある。

だからといって、僕らが子供の頃によくあった、
光化学スモッグ注意報が発令された時のように
サイレンが鳴り響き、町内放送がアナウンスされたり、
といったようなことは、ない。
十数年前に来た時と同じ、相馬はすこぶる、静かで、のどかだ。

オーヴァー・
0.23
ベイビーズ。

上の写真は、原発周辺の町村。
0.23、どころでは、ない。
相馬から車で1時間以上飛ばせば、南相馬市に入り、
その一部は避難指示解除準備区域(自由に立ち入り可能、宿泊禁止)に入るが、
これは更に危険な区域の数値だ。

ちなみに、これを執筆している5月22日(火)の
東京都の線量はどのくらいかというと
新宿で、0.0505
江戸川で、0.122
とあった。
ちなみに5月22日、東京の天候は雨天。

仲間同士で、
争うのは、
奴等の
思うツボ。
だから、
認め合う。

杉ちゃんの妹さんであり、
おじさんの次女である娘さんは、
震災時、おなかに赤ちゃんがいて、
一時新潟に避難していたが、
結局、相馬で出産。
今も、おじさんと杉ちゃんの住む、実家のそばで暮らしています。
おばあちゃんが亡くなって悲しいお父さんを慮ってか、
毎日、昼に実家を訪れます。
優しいなあ。

相馬での出産、子育てを、外部にいる僕や第三者が知識を振り回して
ああだこうだと言うのは間違っているんだと思うんです。

妹さんは誰彼に言われる前に
相当に悩み苦慮した上で出した結論なんです。
安全な外にいるよそ者が頭だけで考えて、何を言うか。

東電のクソ野郎どもと、そいつらからカネをもらっている
ファッキンな政治家が引き起こした事故なのに、
なんで僕ら庶民同士が、口論して言い争いしなきゃならないんだ。
それじゃあ奴等に踊らされているようなもんだ。
まっぴらごめんだぜ、ベイベー。

つづく・・・

2012.05.25