続・関西私鉄最王手・阪急電鉄発車チャイムの怖恐(フキョー)

前回の記事、阪急電鉄のファンの方たちも含め、沢山見にきて下さって、ありがとうございました。

でも、先日友人に会ったら
「うちの親戚、大阪なんだけど、おばちゃんに阪急発車チャイムの話したら、全く記憶に残ってないって言ってたよ」
と言われ、再びがっくし。
まあ、でも、僕もそーですもんね、渋谷駅の発車チャイム、何百回聴いたか知れないけど、全く思い出せないもの。
おそらくそのような乗客が多い中で、youtubeの書き込みには嬉しい言葉が沢山あって、ことさら嬉しかったのです。

さてさて、youtubeを色々見てみると、やたら音質のええのがあるじゃないですか。
どーぞ、こちらをご覧下さい。

このyoutube、音がメチャメチャいいです。
とゆーよりか、阪急の放送室に侵入してマスターテープからそのままダビングしたかのよーですね。

これは、おそらく関西の各電鉄会社の発車チャイムを集めて発売された、とあるCDからダビングしたんでしょう。

でも、ちょっとこのCD、ひどいんです。
作曲者の僕には、1円の印税も、もちろんギャランティーも、入ってこないんです。
オトナ達が決めた事なので、これ以上書くとあれですから、止めておきますが。

話を戻して、このyoutubeのサイト

を見ると、またもや嬉しい書き込みが多いなあ。
「なんだか懐かしく感じる」
「なんだか賛美歌ぽい」
などなど。
ここまで細かく聴いてくださっているのは、すごい事です。ありがとうございます。

梅田駅3線の解説をしていくと、まず京都線は、古都→竹のイメージで創ってほしいという依頼だったんですね。
でも、単純に連想しちゃうと、三味線や琴や尺八のアンサンブルになってしまう。これはどんなにうまく創っても、発想が安易だし、すぐに飽きられてしまうだろうし、冒険的すぎるし、チャイムっぽくないし。

そこで行き着いたのが、’70年代後期のアナログシンセの名機、プロフェット5で創ったような音色はどうだろう、と思ったんですね。
つまり、どこの発車チャイムでもありがちな今風の音色、デジタルシンセで創った音にはしたくなかった。

ちなみに、メロディー自体は、僕が過去に作曲した「theme for AT SCHOOL」の1フレーズを少し変えて引用してるんです。
宣伝めいてしまいますが、その曲が入ったCDは
http://epstein-s.net/archives/378
こちら、「the violent work of spirit 精霊の暴力」というCDです。

次に宝塚線ですが、これは高級感を出してほしいという依頼でした。
そこで僕はなぜか、ノスタルジックなアレンジにしたいなと思ったんです。
それでイメージしたのは、ディズニーランドなんかのテーマパークにありそうな、仕掛け時計でした。
大きな振り子、定時になると現れるおもちゃの人形なんかのイメージを、トイピアノで奏でてみました。
本当は、ねじ回しの音や、振り子の音も加えてファンタジックにしてみたかったんですが、
「お客さんの乗車を急がせている感じがしてしまう」
との事で、NGになりました。
残念!
そこまで実験精神に富んだものは、やはり難しかった・・・。

ちなみにこのチャイムのメロディーも、僕が過去に作った曲から引用しています。
「魂を鎮める」という曲で・・・なんと、レクイエムじゃないか。
という事で、ピアノヴァージョンはこちらのCD
http://epstein-s.net/archives/385
「太陽へ手紙 a letter to the sun」に入っています。

さらに、先ほど挙げたCD「the violent work of spirit 精霊の暴力」には、この曲のなんとチンドン屋ヴァージョンが入っています。
一体どんな作曲家なんだ俺は。

最後に神戸線です。
これは、海のイメージでという依頼でした。
そこでなぜか浮かんできたのは、アコースティックギターの音色です。
何ででしょうねえ・・・?
僕の中では、スペインかどこかの、地中海のイメージなんでしょうか。
(だから、決して若大将/加山雄三とかベンチャーズのイメージではないです)

ここでまず1番難しいのは、電車のホームという、様々なノイズがある環境では、ギターという、どちらかという線の細い音色はノイズにかき消されちまうんですね。
でも、ギターの音色を発車チャイムに使っている会社なんて絶対ないだろうから、ぜひこれは成功させたかった。
そこで、オーケストラのピチカートの音を、隠し味的に足しました。
それによって音を太くし、アタック音を強くして、ノイズに負けないようにしたんです。

・・・話が長くなったけど、とにもかくにも、どこにもないような発車チャイムを創りたかったわけで!

鎌田浩宮


2010.11.19