第三話「お茶漬け」

 

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食堂に集う三十女のミキ(須藤理彩)、ルミ(小林麻子)、カナ(吉本菜穂子)。注文するのはそれぞれ「うめ」「たらこ」「しゃけ」と決まっていて、マスター(小林薫)はひそかに「お茶漬けシスターズ」と命名している。
お茶漬けを食べながら、男の話でいつも盛り上がる彼女たちだが、憧れは「純愛」による結婚。ある時、ルミが九州の実家に帰ってしまう。
さらに十歳年上の男性との見合い話もあるらしい。「裏切り行為」と憤るカナ。二人に減ったお茶漬けシスターズだが、そんな中うめ茶のミキの元カレとしゃけ茶のカナがつき合い始め、女の友情にひびが入る。
(公式サイトより抜粋)
 
 
女に友情はないのかねぇ? (マスターの台詞より)

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「めしや」にて納豆を食べているカップル。片方はニューハーフ。
カップルを見て、マスター(小林薫)の困った表情にて。
 鎌田「この辺りの、ちょっとひょうきんな小林薫さんの感じが第一話、
    二話の松岡監督とは違う感じだね」
 倉田「かなりテイスト変わっていますね」

「お茶漬けシスターズ」登場。
 鎌「俺はミキ役の須藤理彩以外は全然知らない女優さんなんだけど、
   倉田君は知ってる?」
 倉「観た事あるのはルミ役の小林麻子さんを何度か映画や昼ドラで」
 鎌「俺が知らないだけかな?しかし鮭茶漬けのカナ、こんな髪型の
   OLいないだろ?(笑)」

シスターズを罵るニューハーフに、マスターおどおど。
 鎌「このマスターへの演出とかも、これまでと随分違うね」
 倉「大分違いますね。まあ第一話、二話が硬派過ぎたのかもしれな
   いですね、深夜にしては。誰かに叱られたとか?(笑)」

愚痴り続けるお茶漬けシスターズ。
 倉「(続く愚痴に)う~ん。女の人って揃うと肯定的じゃない会話をす
   るんですかねえ?実際でも男同士とは違う何かを感じはします。
   この仲間同士で共感している部分って、弱みじゃないですか?
   強みの部分で共感はしないのかな?なんても思います。まあ、
   かなりデフォルメされてはいますが」
 
「純愛」を口にするお茶漬けシスターズに、
 鎌「俺こういう会話、男友達ともしてたな(苦笑) 男もします!(笑)」
 倉「(笑)」
 鎌「ある友人とはね、よくするねこういう話。あの女はどうだとか、
   あの女はダメだ!あの女は性格が・・とかね(笑)」
 倉「僕は若い頃から恋愛の話はそれほど多くはしないですねえ」
 鎌「あ、そう?恋愛話をツマミに飲むと楽しくて楽しくて!」
 倉「う~ん、人の恋愛も自分の恋愛も口を出すのも出されるのも
   好きじゃないからかもしれないですね」
 鎌「いや、そんな真面目な感じじゃないよ(笑) 馬鹿話にして酒の肴に
   するっていうね。俺の場合、10代の思春期の、一番自意識が
   過剰な時には恋愛の話は誰ともしなかった、できなかったね。
   相当仲のいい奴とは別にして。その反動で今となっては、何でも
   笑い話にしてしまうっていうのはあるかな。勿論真剣に悩みを
   相談する事もあるけど」

「女に友情はないのかねえ?」と呟くマスター。
 倉「今回のキーワードはここですかね。僕はそれほど女友達が多く
   いる訳ではないですけど、女の友情というものを感じた事はない
   かもしれないです。男だからか?(笑) だから逆に見てみたい!と
   いう願望はあります。それを模索して脚本に向かう事もあります
   が、何処か空想の様に感じながら書いてたりします(笑)」
 鎌「俺は良くも悪くもフェミニスト願望があるので、あまり男女で
   ジェンダーにおいて差はないはずだという理念に基づいて生きて
   いきたいんだよね。でも倉田君の言う通りかもしれない・・」
 倉「僕も男女で違いがある、という前提は持っていません。ただ僕
   の男友達から感じる裏表の無さというものから照らし合わせると、
   女性同士は全てを表には出さないように思えるので。この話から
   考えると、婚期を眼前に、婚期が遅れだす、その状態になると、
   なりふり構っていられない「何か」が女性の眼前には訪れるんで
   しょうかね・・・」
 鎌「う~ん・・・どうなんだろうね・・」
 倉「(とうとう一人になったミキに) この話を観ると僕は、女性は
   友人や友情が欲しいという訳ではないのかな?とも思えます。
   なんていうか、同じ思想を持つ人間が横にいればちょっと安心、
   共犯者的な誰かが欲しいだけなのかな?なんても考えますね。
   観続けている限り、友情という感覚がこちらに来ないので」
 鎌「でも男もそう思わない?男も共犯者が欲しいみたいな所はある
   んじゃないのかなあ?」
 倉「いや、あると思いますよ。ただ僕は今こういう仕事をしている
   からか、より真逆な人間を求める部分も強いので」
 鎌「なんだろう?友情の度合いが厚いがどうかより、愚痴をこぼせる
   奴かどうか、とかね」
 倉「う~ん・・」
 鎌「友情って相手を見る事が自分を見る事になっているじゃない?
   ミキもドえらいパーマのカナを見て、自分を見ているじゃない。
   相手に嫌な所が見つかると、それは自分を見ている事にもなる
   から、凄く嫌さが倍増するんだよね。俺も仲のいい男友達なら
   その度合が高ければ高いほど腹が立ったりしてね。そのせいで
   10代、20代、30代の頃は喧嘩ばかりしていたね・・」

お茶漬けシスターズ色々ありながらも、再び結成。
 鎌「しっかし、男っぽい、清々しい仲直りの仕方だよね(笑)」
 倉「そうですね」
 鎌「男の方がもっとウジウジしてそうだもんなあ」
 倉「でも女性でも無い気がしますよ、こんな和解の仕方は(笑)」

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マジョリティに抗って・・・

 倉「まあ、一話二話との比較ですが、情報量も多くないですけど、
   それを想起や補完するよな演出や映像演出もさほど見当たり
   ませんでしたね。僕らが女心が分からないから、かもしれな
   いですけど(笑)」
 鎌「ごく一般的な視聴者が観た時は、このお茶漬けシスターズは男
   っぽい付き合いだな、と思うかもしれないね。カテゴライズさ
   れている月9なんかのテレビドラマに出てくる女性の友情とは
   全然違うじゃない?」
 倉「でもこの作品を観ている限りだと、男の目線では根深くは感じ
   ないんですよね。ただの八つ当たりかなあって(笑)」
 鎌「最初の話に戻ると、シスターズもマジョリティに抗っている三
   人組な訳で。でも金持ちじゃないとイヤだ、年下じゃないとイ
   ヤだと、普通の事も言うんだけど。今日の話のコアは、男と女で、
   友情というものには差があるのか?無いのか?だろうね」
 倉「お茶漬けシスターズのような人間、現実に居ない訳ではないじ
   ゃないですか?実際に飲み屋に行っても自分の会社の新入社員
   を品定めするようなトークをしている30代女性なども見た事は
   ありますし。だからこの話も完全な虚構とは言えないですけど
   ストーリーのトピックばかりが目立って、この中で彼女達が普
   段何を思い、これまで何を考えていたかという内面的な部分は
   捉えづらい印象を持ちましたね」
 
 
自己投影した他者に囲まれて

 倉「僕は思うんですけど、男よりも女性の方がもしかしたら一匹狼
   気質なんではないかと」
 鎌「女性の方が一匹狼・・」
 倉「友情を求めてどうこうするよりかは、一つ意志や共感が繋がれ
   ば寄り添う、横にいる、という感じからですね。僕から見ると
   女性は初めて会った女性とでも瞬間的に友達になれたりするじゃ
   ないですか?僕はその繋がりが弱いとか深くないという事は
   思わないんですが、この話を見る限り、人の人格全部を把握す
   るよりかは、一つ「好き」という事がお互いに手に入れば、
   それが大きなパイプになるのが女性特有のもの、なのかな?
   とも想ってしまいましたね」
 鎌「今、倉田君の言ったのはマジョリティだと思うんだよね。俺は
   女性の友人は多いんだけど、お茶漬けシスターズみたいな面白
   い人種とつるむ事が多いんだよね。いわゆるマジョリティから
   解放されてしまっている友人が多いね(笑)。でもシスターズに
   関して言うと、解放されきっていない気がするんだよね。逸脱
   しきれていない。だから群れて、自己投影した他者に対して、
   癒されて、文句を言って、喧嘩して、という所なんだろうね」
 倉「鎌田さんが言われるようにシスターズは、三人が三人、鏡のよ
   うな関係にはなっていましたね。ま、言っておきますが僕には
   シスターズのような女友達はいません(笑) 頑張っても友達には
   なれません(笑)」
 鎌「僕の女友達は本当にシスターズのような奴でね、楽しんでつる
   んでいると、今度はあちら側に「鎌田はバカっぽい」とか言わ
   れて疎まれていくというね(笑)」
 倉「(笑)。 まあ、男の視聴者からすると、シスターズのような何処
   にでもいそうな普通の女性の、もう少し奥まった部分、秘めた
   部分をこのドラマでは観たかったようにも思いますね。それは
   実在するお茶漬けシスターズ的女性に対しても、胸に来るもの
   に成り得たのではないのかな?と。だから誰に向けられたドラ
   マだろう?と考えるとこの第3話は少し難しい、と・・」

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人と人は遠くなっていくもの

 鎌「10代、20代前半の頃は信頼できる親友が出来る時期じゃない?」
 倉「そうですね」
 鎌「俺は周囲の人間からは酷く珍しがられるんだよね。未だに小学
   校の幼なじみとつるんでるの?まだ中学の頃の連中と遊んでるの?
   まだ高校の?まだ大学の?とね」
 倉「鎌田さんのご友人は皆さん長いお付き合いですよね」
 鎌「うん。人間て、トカゲの尻尾を切って生きているようなものな
   んだろうね本当は。だんだん親友と呼べる人間がいなくなって、
   その代わり自分の鏡みたいな他者を見つけて、友情的な行為を
   続けていく、ようなね」
 倉「なんだか切ないですね・・」
 鎌「俺もこの年齢になるとね、心の底から親友と呼べる奴とつるん
   でいる時間というのは圧倒的に減っていっているんだよね。
   俺とある友人とは大学も一緒だったから毎日会って、例えるな
   ら清志郎とチャボみたいなね。コイツの為なら死ねる、みたい
   な事さえ思えて。でもそれがある事がきっかけで疎遠になって
   しまったりしてね。シスターズも30代前半くらいだよね?」
 倉「前半から中盤、くらいですかね?」
 鎌「うん。だからそれくらいの年齢というのは端境期にあたるんだ
   よね。周囲の人間は結婚したり、転勤したり、マイホームを買
   って遠くに行ってしまったり、或いはこのドラマの様に仲違い
   をしてしまったりしてね、親友だった人々が疎遠になっていく。
   その端境でもがきつつも、親友として継続しそうな含みを持た
   せてこの回を終わらせた事は良いんじゃないかと思う」
 倉「鏡のような関係であっても、それが悪い関係で終わる訳では
   無いかも、という事ですかね」
 鎌「「深夜食堂」全話の中では少しダウンしてしまう回ではあるけ
   ども、それでもそこら辺のドラマよりかは色々な事を思いなが
   ら観られるものではあるなと。喋ればこれだけ膨らむしね」
 倉「ふむふむ。ちなみにお茶漬けシスターズには、小中高大などの
   時期で手に入れた親友というのは居ると思いますか?」
 鎌「いると思うよ」
 倉「そうですよね。もしかしたら親友と呼べる人間は早くに結婚な
   どをしているのかも。だからあまりに近くに居て、その親友を
   妬んだり恨んだりしない為にも、今はああしているのかもしれ
   ませんよね。望んでいても親友との時間は減っていくものです
   よね・・・悲しい事ですが」
 鎌「僕が親友だと思っている友人にしても、中々昔のようにはフッ
   と日曜日に遊ぶ、なんて事もできないしね。彼は土日関わらず
   仕事が忙しいしね。でも時間的、距離的、経済的、色んな面か
   ら人と人は遠くなっていくもんなんだろうね・・・。
   男もさもありなん、ならば女性も、みたいなね」
 倉「・・・そうですよね」
 鎌「もう一人の親友とはね、お互いが親友である事を保ちたいんで
   ね、彼には奥さんも子供もいるんだけど、強引に土日に泊り込
   みで遊びに行くんだよ。それで子供といっぱい遊んだり、家で
   飲み明かしたりしてね。嗚呼、奥様には疎まれているんだろう
   なあとか思いながら(笑)」
 倉「ああ!それが容易に出来ないのが女性なんではないですか?」
 鎌「ほお!」
 倉「逆の場合、奥さんの友人女性(未婚)で鎌田さんの様に頻繁に遊び
   に泊まりに来ている風景は、一般的な感覚だと周囲からは少し不
   思議に映りやすい行動の様に思われやすくないですか?」
 鎌「う~ん、無くはないけどね。でも少ない、か」
 倉「あまり多い事ではないと思うんです。それは女性自身の気持ちの
   問題なのか、どうは言ってもまだまだオープンではない日本の人
   付き合いの形式のせいなのかは判断出来ませんが、男性の取れる
   行動全てが女性でも容易に行える環境や心境は無いんではないか
   とも思えますね。そんな事もお茶漬けシスターズの様な関係性を
   生み出すのかもしれません」
 鎌「今回の対談のテーマは、ジェンダーとしての性差はあるのか?
   という部分にも辿り着いていたね」
 
 
永谷園は偉大だ!

 倉「当初、僕はお茶漬けシスターズの関係性をうん!とは思って
   はいなかったんですが、色々話をしてみて、たとえ鏡として他
   者を側に据え置いて、時に癒され、時に罵り合い、そして疎遠
   になったとしても、それが本当に悪い事とは誰にも言えないよ
   な・・という気持ちにはなりました。 ・・・親友かぁ」
 鎌「倉田君は昔から映画を創っている仲間が沢山いるし、その中に
   は一般的な仕事関係などと比較すれば親友と呼べる人達は多い
   と思うんだけど、俺みたいに年齢を経て親友と呼べる人間が減
   っていくような印象はある?」
 倉「う~ん、それはあまり僕はないかもしれませんね」
 鎌「それは羨ましい!」
 倉「ただ、皆結婚しましたから親友と昔のように会ったりする事自
   体はさすがに難しくなってきていますよ。だから久々に会える
   と寂しさやら嫉妬やらが噴き出す事はあるかもしれません(笑)」
 鎌「俺も同じだよ(笑)」
 倉「いや、僕のは酷いもんです(笑)」
 鎌「あ!ちなみに今日のお茶漬け、美味しかった?」
 倉「う~ん・・・味が・・・無かったというか・・」
 鎌「ね・・。具を沢山入れるか、ワサビを入れたら良かったね。
   いや、だし汁かなあ?お茶じゃなくて」
 倉「・・・永谷園さんのお茶漬けの素は偉大ですね(笑)」
 鎌「(爆笑)」
  

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第四話へつづく・・・
 

 
 
 

2010.08.09