玉音ちゃんradio 第17回「高橋幸宏 60th anniversary」

DJ・鎌田浩宮

It’s gonna work out .
Salavah !
60-year-old
Mr.Y.T.

ビートルズ一辺倒だった僕は
小学5年でYMOと出逢い、
すり減るほどLPを聴き、その後、
僕は3人のソロアルバムを聴くようになる。

皆お金がないから、
1枚買ったら、皆で回し聴き。
「バカマダに貸すと、聴きすぎて針飛び起こすようになる」
貸してもらえない時、あったりして。

その後僕は大人になっても幸宏さんを聴き続け、
2つほど、ご縁もできたりして。

その1つは、細野晴臣さん監修のオムニバスCD
「Ecole」
に僕の曲が収録され、
幸宏さんにお渡しする機会があったんです。

他の方は無言で受け取ったりもする中、
幸宏さんは、お礼まで言って下さり、
「へえ、細野さんの選曲なんだ」
と話しかけて下さったんですね。
幸宏さん、忙しいのに、優しかったんだよなあ。

もう1つのご縁は、
幸宏さんが審査員を務めた
FRED PERRYによるコンテストがあって
僕の曲
「the last of our home」
を選んで下さったんです。
寸評までいただいて
本当に嬉しかったんです。
(なお、宣伝めいてすいませんが、その曲が収録された僕のCDは、エプスタインズの下記URLにて販売中。試聴あり)
http://epstein-s.net/archives/378

さてさて、幸宏さんが6月6日に60歳となり、
YMOは3人全て還暦を迎えまして。
そして年末の12月22日に、
一夜限りの記念ライヴが行なわれるんです。
それを大いに祝して、今日は特集します。

 

Wild & Moody ~ Stranger Things Have Happened /1984

1曲目は、これだなあ!
この曲が収録されている
「Wild & Moody」
は特に大好きなアルバム。
YMO、散開直後。
幸宏さんの、
黒い=ソウル、R&B
の部分が強く出ていて、思わず、腰、動く。
このオープニング、映像だけでも興奮してくる。

 

それでは、歴史を遡っていこう。
「BGM」が発売された、この年。
アルバム「Neuromantic/ロマン神経症」より。

Glass /1981

ロック、ポップスは、
喜怒哀楽のみを表すものではない、
もっと複雑なものを表現する、
と教えてくれた、あの時。

そして。
いい時も、
悪い時も、
幸宏さんを、
聴いてきた。

 

英語で歌う幸宏さんを観て
「なんて格好いいんだ」
とたまげていた、あの頃。
アルバム「What, me worry?/ボク、大丈夫!!」より。

SAYONARA /1982

幸宏さんが日本語で歌う曲の
ベスト3に入るんでは、なかろうか。
汗臭く、ない。
湿り気、ない。
しかし、確実な情緒が、ある。

この頃の幸宏さんは
完全に才気走っていて。
女性ヴォーカリストに提供した曲も、多々あり。
SUSAN、門あさ美、サンディー&ザ・サンセッツ、等々…。
立花ハジメらへのプロデュース活動。
どれも名曲揃いで、
ここに映像を掲載したいけれど
とんでもなく膨大になっちゃうので
残念、割愛です。

さらにこの頃は、YMOの活動がありつつも、
ソロアルバムを年に1枚リリースしている。

小室哲哉がヒットを連発してた頃、よく冗談で
「ありゃあ、哲一から哲八まで8人いるんだよ」
と言って笑ってたけれど、
このことの幸宏さんの活動ぶりは
驚異としか言いようが、ない。

 

この時期に、始めて今も続く、
どうしても外せないユニットがある。
ムーンライダーズの鈴木慶一さんと。
ザ・ビートニクス。
アルバム「出口主義」より。

Une Femme Nest Pas Un Homme (The Beatniks)/1981

複雑なシンセの響きから、
一転アコースティック・ギターになるところで、
トンネルを抜けたような心持ちにさせてくれる。
この部分でピエール・バルーが目を細めた、
と、当時の雑誌に書いてあった記憶が。

実験精神が、たまらない。

 

ソロ以外のユニットと言えば、これも、ネヴァ~、外せないです。
スケッチ・ショウ。
アルバム「Audio Sponge」より。

Wilson(Sketch Show) /2002

細野さんとの、久々の再会。
そして、できたアルバムは「BGM2」とまで呼ばれ、
大歓迎で迎えられた。
もちろん僕も、狂喜乱舞。

この曲はブライアン・ウィルソンへの
オマージュにもなっていて
傑作の1つに違いない。

 

そして、このバンドも、本当に大好きなんです。
さなぎ(pupa)という名のバンド。
アルバム「floating pupa」より。

Creaks(Pupa) /2008

すごいメンバーを集めたものです。
このバンドは、幸宏さん以外の人が作曲した曲にも
メロディーのいい曲が沢山あって。
6人の才能が、湧き水のように溢れています。

あと、ユニットということで書くと
山本耀司との共作アルバム
「La Pensee(ラ・パンセ)」(1987年)
は、誰が何と言おうと、傑作。
全曲ヴォーカルなしの、インストゥルメンタル。
’60年以前の様々な曲をサンプリングし
全く違う曲たちを創り上げた。
幸宏さんのインスト、こんなにいいんだなあ。

いい映像がなかったので、割愛。
残念!

 

さて、時代を戻して、’80年代。

四月の魚 /1985

大林宣彦監督の映画「四月の魚」に、何と主演兼音楽で。
その主題歌がこれなんだけれど、
映画音楽に敬意を表して
フランシス・レイやピエール・バルーの
エッセンスが感じられる。
この曲は、数十年経った今でも、
うっとりさせられる。

 

それでは、幸宏さんの代表的なアルバム、
「薔薇色の明日」より。

Good Time /1983

このアルバムは「蜉蝣」「前兆」など、
幸宏さんの代表作がてんこ盛りなんだけど、
敢えてひねって、この曲をチョイス。
当時のテクノポップには珍しい、
テンポの変化が、いい。
大好きな曲です。
ジャケットのデザインも、いいなあいいなあ。

 

それから、少し時は移ろい、
こんな骨太のロックを作った。

Dance of Life /1988

「EGO」と名付けられたアルバム。
この中にはビートニクスの名作
「Left Bank」が収録されているけれど
敢えてこの曲をチョイス。
幸宏さんにしては珍しい
ディストーションの感触がある曲だから。
僕、根がロック野郎なんで、
こういうの、大好きなんです。

 

そして鈴木慶一さんとがっちり組んで創った
アルバム「Broadcast from Heaven」より。

Fait Accompli /1990

これも隠れた名曲だと思ってます。
「既成事実」という名のこの曲は、
大空のような雄大さがある。

 

幸宏さんの日本語の曲で好きなものを、もう2つ。
アルバム「Once a Fool…」より。

仕事を終えたぼくたちは /1985

僕はビートルズから音楽を聴くようになったので
歌詞というものはほとんど頭に入ってこない。
日本語の歌でも、だ。
例外はただ1つ。
忌野清志郎だ。
キヨシローの場合だけ、
自然に歌詞が頭の中に入ってくる。
だから、
幸宏さんの日本語の曲でも
大変失礼ながら
歌詞はほとんど頭に入らず
メロディーやアレンジのみが、強烈に印象に残る。
だけど、
この曲の作詞はアッコちゃん、
矢野顕子なのだ。
「仕事を終えたぼくたちは」
という、ロックに似つかわしくない言葉選びが
キャッチコピーのように、頭に残る。

 

次は、ちょっと変わったテイストで。
アルバム「Fate of Gold」より。

メルシィ・僕 /1995

元々は竹中直人さんのアルバムに書いた曲を
幸宏さんがセルフカヴァー。
だから、途中で入る可愛い呟きは、
竹中さんです。
彼は幸宏さんから清志郎、チャボまで
交友関係が幅広い。
僕の音楽趣味と重なるんです。

 

ここまで来たら、観てもらいましょ。

どらむ寿司

竹中さんとのコント。
面白くてたまらない。
惜しくも早逝した
スカパラの青木さんも出てるんだよ。

ボブ彦テル彦

これも当時、涙を出して笑ったです。
ふせえりのアナーキーさも、大好きなんでぇございやす。

 

For Men ~ Medicines On The Life /1999

アルバム「The Dearest Fool」より。

一時期封印していたエレクトロニックなアレンジを
吹っ切れたようにこの頃から再び、解禁。
それだけで、嬉しかった。
冒頭の声は、山本耀司。

幸宏さんは
「Once a Fool…」以降このアルバムまで
かなり長い期間、J-POPの文脈に沿った作品を書き続けていた。
シンセはなるべく表立たなくなり。
それはレコード会社の意向か、
自分の意志か。

 

そして、現在。

The Words /2009

すこぶる若々しいエレクトロニカの作品を、続々と発表。
60歳直前とは思えない瑞々しさ。

アルバム「Page by Page」より。

 

さあ、クライマックス。
時をまた、遡りますね。

Stay Close /1986

スティーブ・ジャンセンと共作した、
幸宏さんの代表作。
歌詞の中に
“dancing in the fire”
というフレーズがあるんだけれど、
幸宏さんの人と成りを表している気がする。
静かに、燃える。

 

もっと、時間、巻き戻そう。

Bijin-Kyoshi At The Swimming School /1980

幸宏さん2枚目のアルバム
「音楽殺人」
参加ミュージシャンには細野さん、坂本さんがいるものの
まだテクノポップ前夜、という感じもする。

僕が幸宏さんのソロをリアルタイムで聴き始めたのは
このアルバムから。
この頃は「高橋ユキヒロ」と名乗っていて
名前がカタカナかあ、テクノっぽいし、なんて格好いんだ、
とヤラレちまっていた。

 

そして遂に、ファーストアルバム。
「サラヴァ!」

La Rosa /1978

この企画の最後を締める曲は、
加藤和彦さんとの共作
「La Rosa」にした。
トノバンは一足先に旅立ってしまったけれど、
この曲の素晴らしさは、変わらない。
友情も、変わらない。

 

他に入れたい曲もあったんだけれど、
映像の都合で、断念。

さあ、12月22日は、この中から
どれくらい演奏してくれるかな?
この記事で予習してから、出発して下さいね。

実は幸宏さんは、
40歳代に受けたインタビューで
「60歳の頃はもう音楽はやっていないかも知れない」
と答えていた。
当時は、神経症もきつい時期だったようで
YMOで世界を飛び回っていた喧噪から離れて
少し経った頃だった。
(ちなみに鈴木慶一さんは
「ボケてもライヴをやる。ボケで1度演った曲を忘れてまた演奏する」
と言っていて、僕は5分笑った)

だから、幸宏さん。
今でも音楽を続けてくれていて、
ありがとうございます。

 

The Price to Pay /1984

と言いつつ、アンコールで、もう1曲!
アルバム「Wild & Moody」から、名作。

温かな、コーラス。
心ほぐれる、ドラミング。

「僕たちはお金持ちにもなりたくないし、ヒットスターにもなりたくない。ずっと君といたいだけ」
なんて素晴らしい歌だろう。
幸宏さんはこれからも、そう歌っていくだろう。
ずっと、歌っていくだろう。
ずっと。


2012.12.18