玉音ちゃんradio 第16回「sings John Lennon」

DJ・鎌田浩宮

Dear John Lennon
1940.10.9 – 1980.12.8

ジョージの日は、もうそんなにラジオでもかけなくなっちまって悲しいけれど、今日、ジョンの日には、今でもあちこちで、彼の曲が流れる。
だからエプスタでは、他の局が取り上げないもの、かけていくよ。

Booker T & The MG’s

1曲目は「デイ・トリッパー」を、大好きなスタックス・レーベルで行こう!

この日にビートルズのジョンの曲を聴くのは、嫌いじゃない。
もう、全てのわだかまりは、溶けたんだ。
確執なんて、とっくの昔の話さ。
FAB4に、戻っているのさ。
だからこの日に聴くと、平和な心持ちになれる。

ビートルズのジョンも、以降のジョンも、いや、クォリーメンのジョンでさえ、全てが、ジョンそのものなんだ。

 

2曲目は「イマジン」さ。
ヴェ?
どこだってかける曲のナンバーワンじゃないかって?

このヴァージョン、すごいんだよ、聴いてみてよ。
…と、宝箱を開くように、心のレコード針、落としてみる…。

Noa and Khaled

すごいんだ。
正に「イマジン」の精神さ。
国境を越え、宗教を越え、イスラムとユダヤの歌手のデュエットなんだ。

アレンジも、エスニックで、イカしてる。
僕、世界中の楽器、大好きなんだ。

Noa,Khaled and all stars

このライヴテイクは、後半、様々な国や地域や言語のミュージシャンが、歌いだす。
まるでビートルズが「愛こそはすべて」を歌った「アワ・ワールド」さ。
ジョンが行ったこともない国で、こんなライヴ、催されてるのさ。

アルジェリア出身の、世界的に有名なライの歌手、シェーブ・ハーレド(Sheb Khaled)が、イスラエル出身のユダヤ人の女性歌手、ノア(Noa)とデュエットしたこの「イマジン」は、ハーレドのアルバム“Kenza”の4曲目に収録されているんだけど、この曲だけ発禁で削除されちまった盤もあるので、買う時はご注意を、ってやつだ。

 

さあ、次には、どのレコードをかけようか?

2001年9月11日の同時多発テロがあって、亡くなった警察官、消防士、救急隊らへのチャリティーイヴェントが行なわれ。
既に報復への機運が高まり、この曲も各局で放送自粛になっていた最中。
彼だけが、この曲を歌った。

Neil Young

このイヴェントに限らず、他のミュージシャンが、皆自分の曲を歌った。
ストーンズは「ミス・ユー」だったし、
デヴィッド・ボウイは「ヒーロー」で、
ビリー・ジョエルは「ニュー・ヨークの想い」だった。
その後発表したサー・ポールの「フリーダム」は、最悪の曲だったさ。
全ては、意図と合おうが合うまいが、報復の機運を手伝った。

そんな中、敢えてニール・ヤングがジョンの
「イマジン」
を歌い出した時、アメリカにはどんな風が吹いたんだろう。

しかし2003年、ブッシュ政権は、無実のイラク人に対して、戦争という大きなテロを愚行したんだ。
情報操作、洗脳は恐ろしい。
そして現在。
アベ、イシハラ、ハシモト。
まるで、今の日本だ。

 

さあ!
日本でも、イマジンを歌うことのできる、すげえヤツが、いるんだ。
なんたって、チェルノブイリの頃から歌ってるんさ。
スジが、通ってるんだ。

Kiyoshiro Imawano

忌野清志郎を
「日本のジョン・レノン」
と言った人がいるけれど、それはある意味合いでは、その通りだと思う。

2人とも、真実を歌い、圧力をかけられても、歌い続けた。
愛とユーモアと茶目っ気が、大好きなんだ。

ジョンも、清志郎も、本当のことを歌うと、放送禁止だ。
そして、自分は戦争に行く気のねえジジイが、嘘ばっかり並べて、島を買い取って、この世界を荒らすだけ荒らしてる。
あんなジジイに、選挙でデカい面されたくねえんだ。
平和を、守るんだ。

 

次は、こんな隠れた名作を、かけてみよう。

息子のショーンがまだ少年で、ソロデビューする前の頃。
僕の大好きな細野晴臣さんがオノ・ヨーコの依頼を受け、これまた大好きだったフレンズ・オブ・アースという、YMOの直後に作ったユニットの名義でプロデュースした中の1曲。
「ディア・プルーデンス」を、ショーンが歌っているんだなあ。

Sean Lennon

これは確か、1990年に東京ドームで行われた、ヨーコ主催のライヴイヴェントで披露され、細野さんもステージに上がった記憶がある。

これは知らな人、多いでしょ?
もしくは、知っていたけど忘れてる、とか。

当時からビートルズ狂でありYMOキチガイの僕としては、遂にこんなセッションが行われるなんて、涙がちょちょぎれる思いでした。
ヨーコの人選、センスいいなあ!と思ったもの。

これ以降も細野さんとヨーコの交流は続き、2009年には小山田圭吾君らと、なんとあの「プラスティック・オノ・バンド」を再結成してるんだものなあ。
もちろん、海外公演もしてるよ。

 

ショーンをかけたら、ついつい本家も聴きたくなっちゃうなあ。

ジョンの死後、いち早く発表されたジョージ・ハリスンの
「過ぎ去りし日々/all those years ago」
はあんまりにも素晴らしい傑作で、ひょっとしたらフツーのラジオでも、今日はかかるかも知れない。
だからエプスタは、ちょっとひねってみた。

George Harrison

そう!
エリック・クラプトンと来日した日本公演の、おそらく隠し撮りした映像をお届けするぜ。
ジョンへの思いが伝わりそうなMC。
ギターを弾く手元も見えて嬉しい。
クラプトンのソロが上手すぎるのも、いい。
そして最後には、日本語で。
ああ…、やっぱりジョージは慈愛に満ちている。

最初に聴いた中学生の頃は、軽快なサウンドすぎて、
「ジョージは斜に構えて、ジョンに捧げる曲を創ったのかな」
と思ったりしたものだけれど、何度も噛みしめると、この軽やかさこそが、悲しみを表現していることを味わえる。

 

こうなると、ポールだって絶対にかけるよ。

「ヒア・トゥデイ/here today」は、1982年4月に発表されている。
死後、間が、開いているんだね。

だから、僕らファンとしては、ポールはジョンに曲を捧げないのか、ポールの心はまだわだかまり凍ったままなのか、と案じたものだった。

Paul McCartney

これも敢えて、弾き語りの隠し撮りから映像を選んでみた。
客の感動と、客とポールの心の距離が、見える映像なんだよ。

悲しみが露わになったメロディーは、ポールらしさ。
彼は、善きにつけ悪しきにつけ、心を率直にメロディーにできてしまう。

 

そして、このライヴも、胸を打つ。
もう、こんなことをできるのは、この世界に、ポールとリンゴしかいないのだ。

Paul McCartney

客が自然に、
「all we are saying is give peace a chance」
とリフレインする。
ジョンが、街頭のデモで皆と歌ったように。

微笑むヨーコ。
その隣は、ジョージの妻、オリヴィアかな?

 

ぼくたちは、ひとり。

ぼくたちは、夢想家。

ぼくたちの、思いと行動は、いつもはね返されてばっかりさ。

でも、はじき飛ばされても、まだ歌いたく、なる。

ジョンの歌は、誰にも止められない。

John Lennon

ギターと声だけの、「イマジン」。

はね返されない、イマジン。

ジョンは、ここに、いる。


2012.12.08