渥美清こもろ寅さん会館にて「新・男はつらいよ」35㎜フィルム上映

撮影/文・鎌田浩宮

台風だ。
お盆前だ。
だからこそ、
寅さんだ。

朝7時に三軒茶屋のモナーク長屋を出て、代々木発の高速バスへ。
お盆前なので渋滞を覚悟して下さい、のアナウンス。
実際には、2カ所も事故渋滞。
11:30の集合に間に合わず、少々遅刻。
それでも、温かく迎えてくれる、ココトラの皆さん。

台風11号が近づいております。
お客さん、かなり減っちゃうんじゃないかしら…?
そういうスタッフも今回は来られない人が多く、女性スタッフも頑張って重い物を運びます。

スタッフ皆、アイデアが豊富。
ともし火の代わりに、白い風船。

何か、書いてあるど。
やっぱし、女もつらかった、か。

僕は、滝川クリステルが流行らせた「おもてなし」というスローガンが、嫌い。
日本人はおもてなしの心を持っている、とか、日本人を賛美する本が売れているそうだが、そんな心が本当にあるのなら、ヘイトスピーチなんてしないでしょ。
おもてなしっつーのはね、自画自賛なんぞしないで、こんな感じで、風船にそっと書くだけでいいのよ。

 

街中が、
寄ってたかって
祝祭空間に
変える。

 

さあ、毎月第2土曜の映画館へ、ようこそ!

なんと入口には、花が売られている。
企画が豊富だ!

その横には、かき氷の出店が。
しかも、中華料理屋さん・夜来香(イエライシャン)が、労力もいとわずに。

しかし、悲しい事に、この日に限って言えば、あまり売れなかったんです…。
だって、台風のせいで、涼しいんだもの。

番傘なんて、置いちゃったりして。
工夫、凝らす。
もう、祝祭の空間なんだなあ。

長い通路は、写真ギャラリーにした。
ココトラのスタッフが、なんと山田組の現場に立ち会う事ができて、撮った写真を飾る。

そして、燦然と輝く、山田洋次監督からの、ココトラ及び小諸に住む人々へのメッセージ。

読めますか?

その横には、先日の渥美清さん没後18年献花式のために、あの倍賞千恵子さんが我々に贈って下さった、直筆のメッセージ。

そして、沢山のお店、会社、個人からの協賛。
小諸、なんていい街だ。

スナック・ラピスだって、よくぞこんなお願いを聞いてくれたってもんだ。
玉袋筋太郎さんを、このスナックにお連れしたいなあ。

受付を通り過ぎると、寅さんグッズの販売コーナー。

 

市長、
町おこしって
こういう風に
やるんだぜ。

 

普段は合気道の練習場としか活用されていないスペースが、祝祭の空間になる。
午後2時、開場。
そう、準備時間は、たったの2時間半なのだ。
10人ほどで、汗だくで、祝祭にするのです。

そして今回から、地元のパン屋さん・コッペリーのパンを販売してみました。
何だか、町おこしみたいで、いいね。

その横には、トコトコというドーナツ屋さんの、ドーナツ。
小諸って、いろんなお店があるんだね。
知らなかった。

そして、人気の喫茶店・だんとコーヒーから、淹れたてのコーヒーを、ホットとアイスの2種類。
小諸は、お蕎麦だけではないのです。

そして、銀幕の両脇には、夏の花、ひまわり。
いいアイデア。

そして上映前のお楽しみコーナー。
今回は、僕が小諸の居酒屋・寅さんで知り合ったおじいちゃん・荻原正雄さんに、民謡を歌ってもらいました。
「武田節」「あゝ小諸城趾」と歌い、この動画は「小諸馬子唄」
これ、いい歌だなあ。
いい曲を、フィールドワークできちゃったなあ。
3曲も歌ってもらっちゃった。
あんまり上手くないところが、いいんだよねえ。

街中が盛り上げてくれているこの上映会。
上映前の〆は、ココトラ代表・轟屋いっちーこと一井正樹による、映画の紹介と挨拶。
さあ、銀幕に35㎜フィルムが投影される。

 

森川信
の、
真骨頂。

 

この第4作「新・男はつらいよ」(小林俊一監督)の冒頭は、有名な「ハワイ騒動」なんだけれど、僕はあまり好きじゃない。
ちょっと、ドタバタが過ぎるのです。
山田洋次監督だったら、もう少し情感深く描いたんじゃないかしら。

でも、後半で一気に感動を揺り動かす。
父を亡くしたマドンナ・栗原小巻
皆で励ますんだけれど、笑み1つ浮かべなくなってしまう。
そんなある時、おいちゃんと寅が、他愛もない話をして泣いている。
それを、見てごらんよとおばちゃんに誘われ、こっそり見て、その泣きっ面に笑いがこらえきれなくなるマドンナ。
それに気づき、やった、やっと笑ってくれたと、手と手を取り合い喜び合うおいちゃんと寅。
「やったな!寅!」と、心からの破顔。
初代おいちゃんの森川信にしかできない芝居だ。
このシーンだけで、一気に名作へと登り詰める。

今回は、台風のせいか、お盆で帰省している子孫の相手をしているのか、いつも来て下さる年輩の人々が来て下さらなかったんであるけれど、逆に若いお客さんがどっと増えたのも嬉しかった。
そしてお客さんの多くは上映後のトークショウにも残ってくれ、元松竹衣装部・山田組にも参加していた本間邦仁さんといっちーのお喋りを楽しんで下さった。
先月より若干客足は減ったが、素晴らしき町おこしだった。
パンとドーナツとコーヒーは、完売したんだよ。


2014.08.11