渥美清こもろ寅さん会館にて「男はつらいよ・望郷編」35㎜フィルム上映

撮影/文・鎌田浩宮

9月の3連休初日。
それでも
お客さんは
集まったのか?

朝5時、起床。
7時に家を出て、代々木駅の高速バス乗り場へ。
すごい人混み。
3連休の初日で、いつもの何倍も乗客がいる。
車内は、満席。
そして、長い渋滞。
1時間も遅れて、昼12時に小諸到着。

今日の上映、ココトラスタッフの集合時間は11時半だから、既に遅刻。
しかし僕は、自分の映画「鎌田浩宮 福島・相馬に行く」9月20日(土)小諸上映に際して、長野県最大手紙・信濃毎日新聞の取材を受けることになっていまして。
記者さんがすごく丁寧に取材をされる方で、なんと1時間もじっくりとお話しさせていただきました。

そしてようやく、午後1時過ぎに、渥美清こもろ寅さん会館地下1階会場に到着。
皆さん遅くなってすみません!
しかしココトラの皆さんは、笑顔で温かく迎えて下さいました。
僕のいない間に、重い椅子を100席分、中2階の倉庫から降ろして並べる作業も済んでいて、ああ、男手が必要だったのに、申し訳ございませんでした。

ココトラの中では、僕も若手に入るんです。
年輩の方々が椅子やら机やら何もかも運んで、普段は合気道と太鼓の練習にしか使われていない地下1階を、本来の上映会場に「復活」させるんです。

さあさ、
寄ってらっしゃい
観てらっしゃい!
渥美清こもろ寅さん会館復活のための
毎月第2土曜の広報活動!
「寅さん全作フィルムで観よう会」
始まり始まり!

毎月、開場は午後2時半なのに、いっつも2時にはお客さんが入場しだす。
外で待ってもらうのも悪いから、中に入ってもらう。

しかし。
今月はどうも、客足が悪い。

まいったなや。
まんず、皆、ずくがなくなっちまったかい?

山田洋次監督と、倍賞千恵子さんからのメッセージに、申し訳ねえだず?

ココトラの女性スタッフ、センスがいいから、こんなのまで用意してるだに。

ほ!
秋の気配をかもし出す草花だって、わざわざ持って来て飾るだよ。

館内では、先月に続き、地元のパン屋さんのパンにコーヒー、そしてなんと夜中の2時半に小諸を出て、東京・柴又の高木屋さんへ出向き仕入れてきた草だんごも売っているだに。

もっと来ないかなあ。

受付に置かれた、チラシが2種類。
寅さんと、キャマダ。

イベント、盛りだくさん。

2時半になり、毎月恒例・お楽しみコーナー。
今月は小諸草笛会の方にご登場してもらいました。
そして最後に、ココトラのメンバー、かっくんこと各務雄太のハーモニカと合奏。

さて、驚いた。

会場は靴を脱いで入場してもらうんだけど、おお!この靴の数は!

これまでの最高入場者数に、迫る勢い。
連休のせいか、若い人も多い。
毎月来て下さる方も。

東京から持って来た僕の映画のチラシも、あらかたなくなってしまった。
パンも、草だんごも、コーヒーも、完売。

さあ、
扉を閉めるよ。

映画が、
始まるよ。

わいわい
がやがや、

お喋りも、
飲食も、
なんでも自由だよ。

前に観て、あらすじも知っているのに、泣いてしまった。
全48作の中で、寅さんがこんなにも真剣に堅気になろうとしたことは、ない。
寅次郎が敬愛していたテキヤの親分は、赤線の女郎を殴りつけ、息子の子育てを一切しないろくでなしだった。
あんなもんな父親でもなんでもない、再会を拒絶して去る息子。

僕の父も(「キャマダの、ジデン。」に書いている通り)ろくでなしだったので、この息子の気持ちが痛切に伝わってくる。

そして、テキヤなんぞ続けてちゃあいけない、ありゃあ人でなしの稼業だ、真人間になろう、堅気になろう。
舎弟の登を田舎に帰し、油まみれ、汗だくになって働く寅。

1度道を踏み外した者が堅気になる難しさを、僕は体で知っている。
要は、社会が受け入れてくれないのだ。

しかし、寅は頑張る。
身を粉にして働いて、失恋してまた堅気に戻れない。
僕は涙、止まらない。

映画が、終わった。
拍手が、自然に巻き起こる。
やはり、シリーズ第5作は、傑作だった。
当時、山田洋次監督が、この作品でシリーズを終了しようと思って創っただけある。

スクリーンのあった壇上には、秋の草花と、お月見のだんご。
そして上映後のお楽しみ、ココトラ代表の轟屋いっちーこと一井正樹と、元・松竹衣装係で山田組にも参加していた本間邦仁とのトークショウ。
お客さんからの質問にも、答えます。

少々色褪せた、封切当時のフィルム。
大きな、銀幕。
こんな上映機会、東京でも見当たらない。
小諸は、幸せだ。

東京だけじゃない。
日本全国が、シネコンだらけになり、どこもかしこも同じ映画をデジタル上映する中で、ココトラの活動は素晴らしいものだと思います。

次回は2014年10月11日(土)午後3時より。
シリーズ第6作「男はつらいよ・純情編」(1971年)です。
マドンナは大映より客演、若尾文子


2014.09.14