渥美清こもろ寅さん会館にて「男はつらいよ・寅次郎夕焼け小焼け」35㎜フィルム上映

文・鎌田浩宮
動画撮影・竹原Tom努
写真・大島Tomo智子/鎌田浩宮

小諸は
既に
紅葉
始まってたよ。

驚いたねえ。
東京じゃ、まだ、短パンにTシャツの日だってあるのにね。

こちらは小諸随一の観光名所・懐古園の入口。
紅葉、判るかな?

寅さん会館への道すがら、素敵なおうち。
すすきが、円を描いてる。

垣根が、紅くなっておる。

さあ、重い椅子や机を並べ、飾り付けを終え、即席映画館の完成だ。
我らがココトラ代表・一井正樹も、今日の気合の入りぶりは、すごかった。
この名作を大入り満員にしなければ、という思いだ。

3連休の初日。
お客さんは少ないのではないだろうか?
不安で一杯になる。
全48作の中でも、1、2を争う傑作の上映だけに、沢山の人に観てほしい…。

やった!
「隣の席に、荷物を置かないようにお願いします」
とアナウンスしなければならないほどの、盛況ぶり。
秋、深まりし、寅色のもみじ。

 

どこから
来たのか、
チンドン屋。

 

久々に催された、上映前のお楽しみコーナー、ゲストは…信州・小諸 与良チンドンバンド
メンバーの中には、可愛いお子さんも。

全国のコンクールで素人部門第2位に輝いた事もある、その世界ではちょいと名の知れた存在です。
「男はつらいよ」も演奏してくれました。

一緒になって歌う、観客のおじさん。
あまりに気持ちよさそうに歌うので、マイク、渡しちゃった。

 

こどもが
寅さんを
見つめる。

 

お客さんにも、この日はお子さん、多かった。
子供達に寅さん、分かるかな…いやいやなんのなんの、皆、寅さんを観て、笑ってくれた。

おもてなしコーナーに集まる、子供達。
お菓子、どれにしようかなあ?
いっぱいあるね。

毎月の上映会、お茶やお菓子を無料で、おもてなししています。

今月は、とりわけおいしそうだね。

こちらは、開店前の売店コーナー。
手作りの、のれん。

御牧ヶ原のパン屋、コッペリー

小諸駅前のドーナツ屋さん、トコトコ

だんとコーヒー

お子さんが多いという事は、若いご夫婦も多かったという事です。
これだけ老若男女が幅広く集まったのは、今回が1番かも知れないなあ。

スクリーンの脇には、毎月、季節の花が飾られます。
赤字目一杯のココトラだけど、そういうところ、手を抜かない。

 

みんな、
笑った。

 

映画が、始まった。
子供達は、退屈しないだろうか?
いつぞやの上映の時のように、始まるや否や退屈し始めて、退館しちゃう子は出てこないだろうか?
子供達が生まれてくる、約40年前の映画だ。

そこには、ルンペンと聞き慣れない言葉で呼ばれる宇野重吉さん演ずる池ノ内青観が、とらやを宿屋と勘違いし、無銭飲食やらわがままやらのし放題をする。
皆、怒りながらも、ついつい親切してしまう。
寅さんが、あのじじいは可哀想な人なんだよ、と諭す。
そして、お詫びに青観が描いた落書きのような絵が、7万円で売れる。
しかし後日さくらは青観の家に行き、丁重に7万円をお返しする。
とらやの、草団子までつけて。
私達は大したことなどしていませんので、とおじぎをして。

子供達は、そしてその親御さん達は、何かを感じてくれただろうか?
昔はよかった、今は人の心がギスギスしている、と嘆く人がいるけれど、僕らはこの映画を観て感じ入り、現代を、さくらのように生きてくことは可能なんじゃじゃないだろうか?
きっと、できるはずだ。
子供達は、この映画から学ぶ。
お金よりも大切なものを知り、他人には親切にしてあげ、その対価はお金でお返ししてもらうもんじゃない。
そんな美しい心を持つことが、どれだけ尊く、しかも簡単にできることなんだという事が。

最後に太地喜和子さん演ずるぼたんは、それまでの商売っ気の笑顔ではなく、涙ながらの笑顔で、青観からもらった絵は絶対に売らない、これは宝物だ、と語る。
お金よりも大切なものを知る人の言葉だ。
いいシーンだ。
涙なくしては、観られない。

映画が終わり、上映後のトークライヴも終わり、お客さんが帰った後も、ある男の子が寅さんの話を聞きたいと僕の所にやって来てくれて、懸命に話を聞いてくれ、僕が持って来た寅さん本を読んでくれていた。

僕は渥美さんが亡くなった1996年頃、その寂しさ、悲しさから、図書館へ通いつめ、渥美さんに関する本を読破した。
その中に、こんな本があった。

寅さん、ありがとう!!「それを言っちゃあ、おしまいよ!!」―渥美清よ永遠に
渥美清を送る会・編
1996年 鹿砦社

鹿砦社は「紙の爆弾」を発行している出版社か…。

この本の58ページに「相入れなかった太地喜和子」という一節がある。
要約すると、女優になるためなら何を犠牲にしても構わないという信条の太地さんは、東映から俳優座そして文学座と転々とする。
三国連太郎との不倫、ヌード。
人を踏み台にしてのしあがったり、他人を押しのけたり、悪口を言うなどという事を嫌う渥美さんは
「新劇の大物かも知れないが、どうも嘘っぽいね、あの人は」
と言ったそうだ。
下半身は確かに女性の武器だ、しかしそれを使う女性には恥じらいというものがあるだろう。
ストリップ時代に様々な、媚を売る女性と売らない女性を見てきた渥美さん。
「行き詰ったのよ」
太地さんの死を知った時、渥美さんはそう言ったという。

これを信じるかどうかは読み手次第だけれども、太地さんの最初の結婚相手は、寅さんの舎弟・登役で渥美さんとも縁のあった、秋野太作(津坂匡章)さんだ。
太地さんは、その後数々の人と浮名を流し、酒豪としても知られ、しかも自分の愛した男は三国さんただ1人と公言した。
共演の際、渥美さんが太地さんと距離を置いたことは想像できる。

もう1人のすごいキャスティングは、岡田嘉子さんだ。
岡田さんも、奔放とも評された数々の恋愛を経て、恋人の共産主義の演出家・杉本良吉さんと、治安維持法や特高警察や戦火を逃れるべく1937年にソ連へ亡命。
しかし恐ろしい事に、なんとソ連は2人をスパイとみなして逮捕・拷問し、スパイを認めなかった杉本さんは銃殺刑に処されてしまう。
岡田さんはスパイを泣く泣く認める。
1972年日本に帰国してからの復帰作が本作なのだ。

山田監督、よくぞこれだけのキャスティングをし、しかもまとめあげたものだ。
宇野重吉さんも、寺尾聰さんもいる。
以前はマドンナ役だった榊原るみさんも、お手伝いさん役で出ている。
次回の第18作に、旅芸人で出演する岡本茉利さんも、お手伝いさん役で出ている。
各々がプロに徹し、このような傑作が生まれたのだろう。
何しろこの年のキネマ旬報ベストテン・第2位なのだから。

 

プレイガイド、
始めます。

 

さてさて。
11月の上映より、以下の場所にて前売券を購入できます。
100円お得ですから、ぜしお買い求め下さいね。

こもろ愛のりくんコールセンター 小諸市相生町1-2-7
こもろ轟屋 小諸懐古園前
幸せの黄金の鯛焼き小諸店 小諸市与良町3-8-2
そば七 小諸市本町3-1-2
だんとコーヒー 小諸市加増(大字)719-4
tocotoco 小諸市相生町1-2-5
布引温泉こもろ 小諸市大久保620-3


2015.10.12