つ、ついにI’m Sixty-Four 2014 CHABO BAND

写真/文・鎌田浩宮

まだ僕を必要としてくれますか
まだ僕にご飯を食べさせてくれますか
僕が64歳になっても

 

 

チャボが
今もいる、
歌って
くれる。

 

ポール・マッカートニーが「when I’m sixty-four」を作曲したのは、20代の頃。
この曲が好きだったであろうトノバンは、62歳で自らこの世を去ってしまった。
ポールも僕らも誰もかも、ジョンが、ジョージが、64歳まで生きられないなんて、予想すらできなかった。

RCサクセションを聴きだした中学生の頃、この5人が64歳になった時の事なんぞ、想像すらしなかった。
チャボ自身もこの日のステージで、自分が60歳になった事はおろか、40歳になる事さえ考えもしなかった、というような事を話した。
40なんて60なんてジジイだよなと思ってた、RCのファンは高校生の頃からなった子が多いんじゃない?チャボは色々話してくれた。

僕なんて、そんなファンの皆からすると、まだあおっぱなの小僧だろうか。
いやいや、僕も充分にジジイだ、46歳だ。

僕の隣に立っている客は、珍しく10代か20代前半の男の子だった。
その子はまるでチャボのライヴを観るのがが初めてかのように、声変わりしたてのようなあおっぱなの声で、1人懸命に声援を送っていた。

そんな64歳になったばかりのチャボのこの日の2曲目は「毎日がブランニューデイ」だった。
僕の人生は充実している、そんな気分が強く込められている曲だ。
やっぱりバースデイ・ライヴだもんな、祝祭に溢れた選曲が多いのかな、僕は予測しながら聴いていた。

 

様々な、
チャボを
見てきた。

 

僕らは、いろんなチャボを見てきた。
さなえちゃんのヒットに戸惑うチャボ。
ギター兼ケンカ担当のチャボ。
俺の脳みそレヴォリューション。
黒の服が多くなったRC後期のチャボ。
ホームタウンへ帰ろうと絶叫のチャボ。
ソロのステージのラストで必ず、「明日がいい日でありますように!」と言うようになったチャボ。

そんなチャボの2曲目が、それだった。

僕はいつも、考えてはいけないことを考えてしまう。
キヨシローだったら、今、何を歌うだろうか?
自分の人生の充足を歌うかも知れない、しかし、最早戦前と言われている今、社会と、世界と対峙した曲を歌うのではないだろうか。
秘密保護法に集団的自衛権に辺野古基地に原発再稼働にヘイトスピーチ、こんな時代はまっぴらだ。

チャボは、まず自分と対峙する。
その次は、二人称を描く。
ピカソはゲルニカを描いたが、描かない画家だって、もちろんいる。

でも、この日、チャボは「平和ブルース」を歌った。
そして、その前後のMCではなかったが、こんな事も言ってくれた。

64歳にもなるといい事もあってよぉ、校長先生とか、皆俺より年下なんだよ、あと、政治家とかも皆年下、安倍なんかあんな野郎まだ小僧のくせによぉ。

ニュアンスは多少違うかな?
でも、こんな風に喋ってくれたんだ。
嬉しかった。
僕は、いろんなチャボを見てきた。
今のチャボが大好きで、ケンカ担当のチャボも大好きだ。

311以降、柄にもなくふるさとというものを考えるようになった、俺にとっては新宿がふるさとなんだけど…とも語ってくれた。

チャボは、様々な二人称を歌ってくれる。
「魔法を信じるかい」は、その中の傑作。
それまでRCのアナザーサイドを歌ってきたチャボが、RC活動休止後、他の4人が奏でていたもう1つのアナザーサイドを、自ら歌うようになった頃の曲だ。
そしてその曲が終わるのと交差し、この2人の歌声を流し始めた。

幼い頃の、タッペイくんとモモちゃん。
僕は、キヨシローの声が聴こえて来やしないかと、どきどきしていた。
だって、聴こえ出したら、涙が止まらなくなるじゃないか。

この時、キヨシローが幼い2人にコーラスを猛レッスンした事を、笑いながら話すチャボ。
なんて素敵な笑顔なんだろう。
1番後ろの立見席でも、しっかり見えていたぜ、チャボ。

アイリッシュ風の曲、少しカントリー寄りの曲、多く演奏されたアコースティックセットの曲。
64年の年輪によって増えた引出しから、46歳のジジイの僕が聴いても心和むような、それこそピーター・バラカンさんが満面の笑みでもってよくラジオでかけるような、’50年代の香りのするようなアレンジ。

そんな様々な曲を経て、この曲が演奏された。

チャボの「little wing」の歌詞には、「ヒッピーに捧ぐ」等の歌詞が織り込まれている。
そして、何度となく叫び泣く、ギター。

そして数曲挟んで、この曲をチャボ・バンドで、フルで聴けた。

ブルーデイのホーンがない分激しさを増す、ロックの色彩。
「激しい雨」
仲井戸CHABO麗市の、CHABO BANDの、代表曲だ。

そして「雨上がりの夜空に」と続く。
総立ちのお客さん。

この3曲の、僕らにとってのメドレー。
天を指さすチャボ。
そして「皆もう齢なんだから座りなさい、お座り!お手!」と笑ってくれるチャボ。

僕は益々RCを、キヨシローを、そしてチャボとその曲を大好きになる。

およそ2時間45分。
10時15分頃に終わったステージ。
椅子席の人、いいよなあ。
もうジジイだから、足がつりそうだ。

「ここ、昔は映画館だったから、座席がふかふかでいいんだよ、俺も客として座ったことがあってさ、でもステージから見ると、お前らふんぞり返って座って観やがって、昔の俺なら頭に来て色々言うんだろうけれど、64歳にもなるとよぉ…。」

チャボ!


2014.10.16