第二話「猫まんま」

 

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店じまいしかけた朝六時半頃、一人の女・みゆき(田畑智子)が食堂にやっ
てきた。みゆきの注文にこたえ、好物の「猫まんま」を作るマスター(小
林薫)。話をきくと、みゆきは売れない演歌歌手で、仕事がなく、歌いた
いあまり朝までカラオケボックスにいたという。
常連客に作詞家の先生(田口トモロヲ)がいたことを思い出したマスターは
店に彼女のポスターを貼り、行きがかり上、そこでコンサートまで開くこ
とになった。自分の歌を歌ったみゆきは客たちの拍手と歓声に包まれる。
そして、その場で作詞家にプレゼントされた歌「まよい猫」が思いがけず
ヒットし始め・・・。             (公式サイトより抜粋)
  
 
人生、行きあたりばったり

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また鑑賞前に食べだす鎌田氏。
 倉田「あ!また食べちゃうんですね・・・・」
 鎌田「へへ・・・うお!ウマイ!」
 倉「ぢゃ、僕も少しだけ・・・ああ、美味いなぁ!」
 鎌「こんなウマイもの食べてたんだ・・・みゆきちゃん・・・」
 倉「鰹節が削りたてだったらもっと美味しいんでしょうね」
 鎌「ね!」

上映開始。鈴木常吉氏の主題歌「思ひ出」が鎌田氏のリビングに響いて。
 鎌「(第二話主役の)田畑智子ちゃんて、好きな女優さん?」
 倉「そうですね。僕は「お引越し」(相米慎二監督作)からですね。
   彼女のデビュー作だったと思います。子役の時の。あの時から
   凄い子だなあと思っていました」
 鎌「へえ~、子役だったんだ!」
 倉「だから大きくなった今より、子役の頃のイメージが強いです」
 鎌「子役って何歳くらい?」
 倉「まだ小学六年とかでしたよ」
 鎌「ほんと?そんな頃からやってたんだ!全然知らなかった!」
 倉「僕らの世代は「お引越し」のイメージが強烈にありますね」
 鎌「(猫まんま登場前に食べきる鎌田氏)・・ふう。ウマかったぁ!」
 倉「え?食べきったんですか?いいんすか?智子ちゃんと食べまし
   ょうよ(笑)」
 鎌「(笑)」

朝方に訪れたみゆき登場。奥にはカタギリ(オダギリジョー)がいる。
 倉「(「かつぶし」という台詞に)関東ってかつぶしって言います?」
 鎌「いや、言わないね」
 倉「ん?何処の言葉ですかね?聞いた事ないですねえ。この子何処の
   出身なんですかね?」
   (※鰹節をかつぶしと呼ぶのは新潟県の方言や甲州弁等でみられる)

 鎌「(マスターとみゆきのやり取りに堪能しているご様子)」
 倉「・・・いい間ですね、二人」
 鎌「あと、このオダギリジョー。久世光彦のドラマって、特に「ムー」
   とか本筋に関係ない人間が沢山出てくるでしょ?筋に関係してい
   るのか分からないような。彼のキャラクターはそういうのを意識
   していたみたいだよ」
 倉「ほお。そうですね、最終話でもマスターと深い関係があるのかな?
   っていう程度でしたもんね。謎な男のままで」
 鎌「「ムー」とかに居たもんな、こういうキャラクター」

削りたてのかつお節。そして美味しそうに猫まんまを食べるみゆき。
 倉「ああ・・綺麗ですねぇ削りたてのかつお節は・・」
 鎌「昔はよくおふくろにやらされたなぁ・・」
 倉「僕もやらされました。ただこんな風に綺麗には削れなかったです」
 鎌「おふくろ、まだこの削り器取っといてあるかな?」
 倉「実際に観ながら食べると美味しいですよね。なんで美味いんだろ?
   意味わかんない(笑) この美味さの意味がわかんない(笑)」
 鎌「わからない(笑)」
 倉「でもマスターとみゆきちゃん、この二人、いい出会いですよね」
 鎌「うん」
 倉「前に観た時はそうは感じなかったですが、今観たら、ちょっと
   恋愛感のようなものが匂いますよね」
 鎌「だからファンになっちゃうんだよね、マスター」
 倉「出会いの最初に炊き立てのご飯を出してあげる所とか、
   マスターのほのかな感じを思っちゃいますね」
 鎌「あるんだろうね・・」

壁に貼られたみゆきのポスターの曲名「人生行きあたりばったり」に、
 鎌「この曲名、酷すぎるよね(笑)」
 倉「語呂悪いですからね(笑)」

愚痴る常連客「お茶漬けシスターズ」に対して、
 倉「ほんっと、お茶漬けシスターズ、ウザイですよね(笑)」
 鎌「ほんとね(笑) 絶対こんなOL、夜中の終電無くなる時間に来ない
   と思うんだよね。朝まで何やってんだコイツら(笑)。面白いなぁ」
 倉「食堂に来ている時は金曜とかの設定なのかも?」
 鎌「なるほどね」
 倉「(意気投合して人をなじるシスターズ) ああ、ほんとキライ(笑)」

店内での演歌ライブシーン。
 鎌「マスター、目瞑って聞いてる!アハハ、心酔してるわ!(笑)」
 倉「いやこの歌声、そんなよくないから!(笑) マスターは歌を歌う人
   自体が嫌いじゃないのかもしれないですね」
 鎌「確かにね。この後の話でもYouにもちょっと肩入れするしね。
   またこの田畑智子が歌ヘタなんだよね~」
 倉「売れない演歌歌手って役じゃないですか。まあ、この歌声だけ聴く
   と、まあそうだろうな~とは思いますよね(笑)」
 鎌「(爆笑) いやね、よく歌わせたなあと思ったね、松岡監督が」
 倉「(猫まんまの地域差を語る忠さんに) あ!言われてみれば、僕の所は
   こういう食べ方しないですね。猫まんまって残った味噌汁をご飯に
   かけるだけだった気がします。あ、みゆきちゃん、歌った後も猫ま
   んまってのはどうかと思うなあ(笑) そこは普通に何か別のもん食べ
   なよ(笑)」

みゆきの声を聞いて浮かんだという詞を渡す作詞家。そして発売へ・・。
 倉「(笑)・・・今の声聞いてて思い浮かんじゃうんだ・・・」
 鎌「でもこの新曲「迷い猫」の方はちょっとコブシを効かせて上手くな
   るんだよね」
 倉「一応、売れない頃の曲はヘタに歌ったんでしょうね。それで新曲は
   ヒットしていく訳じゃないですか。にしては、もうちょっといい曲
   をこの作品内で使って欲しかったですよね。この作品の主題歌にな
   れるくらいの。さすがにヒットする感じはないですよね(笑)」
 鎌「でもね、俺が小学生くらいの演歌全盛の頃って、こんな似かよった
   曲が多かったと思うんだよね。なんでコレが売れてんだろ?て子供
   心にも思うんだよ」
 倉「今は演歌が売れないから逆にパターンが増えているのかもですが、
   昔は僕もメロディは全部一緒のように聞こえてた気がします。子供
   だったから、というのもありますけど」

「迷い猫」がヒットし忙しい日々のみゆき。夜の新宿を車で抜けてゆく。
 鎌「(新宿の街を眺めるみゆきに) いい瞳してるよね・・涙出てきそう」
 倉「彼女自身、猫みたいな顔ですよね。瞳が光ってて・・」
 鎌「車の後部座席から、新宿の街を見ている瞳が何か・・・純粋って
   いうか・・・なんていうのかな・・・」
 倉「彼女は病気になってから「病気じゃなかったら」とか、未来に対し
   て悔しさを滲ませるとか、そういう事を最後まで口にする事がなか
   ったじゃないですか。僕はそこに惹かれたんだと思います。普通の
   ドラマだったら「もっとこうしたかったのに!」という部分を強調
   したりすると思うんです。それを言わせずに通り過ぎる感じにした
   っていうのは・・・」
 鎌「うん・・・」
 倉「鎌田さんは音楽家ですが、この作品で彼女も音楽をやっているとい
   う事で思い入れが強くなっている、なんて事あります?」
 鎌「いや、よくこんな歌のヘタな女優に歌わせたなって(笑) ある種感動
   的ではあるなあって(笑)」

病院を抜け出し、「めしや」に久しぶりに訪れたみゆきのシーンにて。
 倉「鎌田さん、ここどう思います?病院を抜けだして食べに来てるじゃ
   ないですか。これって一話目の時の思い出に浸る為に食べているの
   とは、これは違うように見えているんです」
 鎌「ほお・・」
 倉「多分、マスターやこの場所に会いに来たかったんだと思います」
 鎌「あ、今みゆきちゃん「懐かしい」って言ったね・・」
 倉「猫まんま自体に思い入れはあるんでしょうけど、ここで食べられた
   事で新しく思い出が生まれたんではないのかな?この店でまた幸せ
   な思い出が彼女の中で始まっていたんですね・・・」
 鎌「うん・・・・」

朝、「めしや」を訪れた一匹の猫と、マスターの言葉・・・。
 鎌「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(号泣)」
 倉「(本編終了)・・・・・すげえ30分でしたね・・・・・(涙)」
 鎌「・・・うん・・(更に鎌田氏、号泣)」

エンディング・テーマについて。
 倉「この話くらいみゆきちゃんの曲掛ければいいのに、こんな曲より」
 鎌「(笑)」
 倉「僕、この作品で嫌いなのはここだけなんです」
 鎌「最悪だよねこのエンディング」
 倉「このテーマはないですよね・・これだけどうにかして欲しい・・」
 鎌「俺がこのテーマのミュージシャンだったら自分で取り下げてもらい
   に行くけどね。すいませんでしたっつって」

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代償も全て背負って、それも幸せ
 
 倉「しかし、ここまで説明少なくてやりきるとは・・凄いとしか」
 鎌「・・ウチの浪(鎌田氏の猫)って、内臓が生まれつき悪いんで子供の
   時からお医者さんが出してくれてるご飯しかあげてないんだけど
   浪もどうしょうもなくなったら、猫まんま食べさせてあげようか
   なって今想っちゃって・・・(と涙を流して)」
 倉「・・猫って本当に猫まんまって好きなんですか?飼った事なくて」
 鎌「魚の匂いのする物は何でも大好きだよ。焼き魚も刺身も好きだし」
 倉「僕はこの話自体も、みゆきちゃんの顛末も、悲しいんですけれど
   この話に思い入れを強くしてしまっているのは自分自身の事を投影
   させてしまっているからだと思います。でもこの作品をちゃんと観
   ると、みゆきちゃんは夢半ばだったのかな?とも思うんですよね。
   なにか・・・」
 鎌「だって彼女・・・幸せだったって言ってるしね・・」
 倉「そうですよね・・。だから彼女自身は演歌歌手として売れる事を願
   っていたとは思いますけど、僕は彼女がこの深夜食堂に出会えた事
   自体で救われていたのかな、とも思うんですよね。それによって売
   れたというのもありますけど。相当大きなオアシスを見つけたよう
   な気が彼女にはするんです。とはいえ一話目よりも、彼女の過去を
   想像する情報は本当に転がってなかったですけど・・」
 鎌「この話に驚嘆してしまうのは、第一話目よりもものすごく少ない情
   報量の30分でね・・・でも、涙が止まらないっていうね・・・」
 倉「僕はもしかしたら一番好きな話かもしれないです・・。この第二話
   目のおかげでこの作品全部を観ようと決意できたんで」
 鎌「何故なんだろうなあ、これってよくあるストーリーなのよ?」
 倉「そうですよね。すごく特殊な話、ではないですよね。ただそれが抱
   えた夢が何処まで行って、何処まで達成したっていう話は一切説明
   される事は無いじゃないですか。周りの応援があって達成できまし
   た!というお涙頂戴的な演出もない。実は売れていない時と売れて
   いる時の差はあまり描いてないんですよね。もっと言うと鎌田さん
   が言われた、新宿の街を車内から眺めるシーンは結構、不思議な表
   情をしていたようにも思うんですよ」
 鎌「そうなのよ」
 倉「もし成り上がりたかっただけの人間ならば、あの瞬間、もっと幸せ
   な顔があってもおかしくないですよね。ドラマ的な演出としても。
   忙しくて疲労しているとかもあったでしょうけど。だから、彼女の
   夢っていうのは本当は何処にあったのかな?なんて考えてしまいま
   すね僕は・・・」
 鎌「でも俺はね、あのシーンのみゆきちゃんの横顔はねえ、幸せそうに
   見えるんだよね」
 倉「僕も幸せそうにも見えたんですけど、それでも100%幸せそうにも
   見えなかったという。なんていうか迷っているというか・・・」
 鎌「まさに迷い猫・・」
 倉「はい。それで戻ると、何故彼女が猫まんまを食べているかという点
   とか。鎌田さんは音楽家だからそうでしょうけど、彼女自身は売れ
   る売れないじゃなくて、歌いたいだけだったのかな?なんても」
 鎌「うん・・」
 倉「次々と揃ってくる環境、色んな取材や、紅白出場とか。あれらは本
   当に彼女が心の底から望んでいた事だったのかな?って。だから僕
   は新宿を車で進むシーンから幸いに溢れている感は持てなかった」
 鎌「それで言うとね、決して売れるって幸せな事じゃなくて、代償もと
   ても大きくて。こんな事話すのも野暮な話かもしれないんだけど。
   色んな代償があるよね?それこそ忌野清志郎だってあんなに売れた
   くて5人編成にしたのに売れ出すと代償は大きかったわけで・・。
   でもなんだろう?みゆきちゃんは、売れる事の代償も引っ括めて、
   それを覚悟して、自分に自分の衣として着込んでいたというか。
   代償も全て背負って、それも含めて幸せ、みたいな。俺はそう彼女
   から感じたシーンだったんだよね」
 
 
時の流れに身を委ねること

 倉「最後、病気になって入院して。そして病院を抜けだして猫まんまを
   食べに来たみゆきちゃん。久々に、みたいな事言っていたじゃない
   ですか?という事は売れている頃は一度も来れなかったり行かなか
   ったり、どちらかは分からないですが」
 鎌「来られるはずがないよね・・」
 倉「来れなかったのか、行かなかったのか。それはどっちだったのか?
   とも思うんです」
 鎌「ふむふむ・・」
 倉「僕は幼い頃に酷く貧乏をしたとかは、ありがたい事にそれほどなか
   ったので、テレビか何かで猫まんまを見て、食べてみたくて母にム
   リいって作ってもらったのが最初だったと思うんで、彼女の出会い
   とは全然違うとは思うんです。彼女は、猫まんまが貧乏の象徴に想
   っていたような気もするんです。大好きだけれど。だから売れてい
   る時には「めしや」に行かなかったのでは?と。自分の中の貧しさ
   の象徴を捨てて、売れる事に心血注いで・・。でも病気のおかげで
   彼女は自分がずっと抱え続けていたもの、それに気づいたのかな?
   とも思うんです」
 鎌「うん・・」
 倉「例えば序盤で、猫まんまできる?とマスターに聞いて、出来ないと
   言われたら彼女は帰ったかな?と。帰らなかった気がするんです。
   何かしらは頼んで食べて帰ったとは思うんです。
   やはりこのマスターが「俺も食べたい。炊き立てで作ろうか?」と
   いう声に彼女のこれまで満たされてなかった部分が揃ったのかな?
   とも思うんです。もしかしたら友達とかそんなに多く居ない子なの
   かな?共感をしてもらえる環境にいなかったのかな?とも」
 鎌「共感・・・」
 倉「僕もモノ作りをする人間なのでちょっと分かるんですけど、共感と
   かされた事がない人生の人間は、よほど屈折しなければ、ですけど
   共感してもらえる場所を目指すような気はするんです。だから彼女
   は歌、人前に出る行為を選んだのかな?なんても思うんです。
   猫まんま自体には彼女も何か経験があるのでしょうけど・・」
 鎌「俺が思ったのはね、さっきの代償の話の続きなんだけど、売れる事
   によって良い事も沢山あり、代償もあったりして。時の流れに身を
   まかせ、じゃないけど、流れに身をまかせる事を良しとした人の話
   なんじゃないのかなと思うんだよね。大きなうねりに自分を任せて
   流れていく、その懐の深さ、その人の器の深さ、なんていうのか
   な?それも含めて享受できる人間の素晴らしさというのかな?最後
   に幸せだったと言える彼女の人としての美しさというのかな?ただ
   倉田君が言っている、それでも足りない1ピースがあって、それが
   猫まんまなのかもしれない、と」
 倉「言われる通り、彼女の曲名そんなのばかりですよね・・」
 鎌「人生行きあたりばったり!そして、迷い猫!」
 倉「彼女は落ち着ける場所はこれまで一つも無かったのかも。それで
   歌を歌って売れるという事は彼女にとっては落ち着ける場所だと
   どこかのタイミングでは思えたのかもしれないですけど。
   でもそれも違ったんじゃないかと自身で思えて。そして死ぬという
   時に、流浪してきた自分が落ち着ける場所ってあったのかな?と思
   ったら「めしや」に辿り着いたよな。それを幸せだ、嬉しい、と言
   えるのは、実は過去に拘っている様な人ではないのかもしれない」
 鎌「僕の人生をこのドラマに置き換えると、決してうまくは行っていな
   い人生なんだけれど、それを甘んじて享受して、時の流れに委ねら
   れるか?そしてそれを幸せと言える懐の深さは、心の広さはあるの
   か?試されているようにもね・・」
 倉「僕にはまだ・・無いと思います・・」
 鎌「いや、俺もないのよ。こんだけ迷って迷ってきて。だから彼女は凄
   いなあって思えたりするのかな。俺はやっぱり充足感より満たされ
   ない気持ちの方が強いんで、少し迷い猫をしているわけでね」
 倉「満たされない・・・。僕は今も売れない監督ですけど(笑)、売れた
   としてもこのままだとしても、「死」が訪れたら、彼女のようには
   受け止められない気はします・・・」
 鎌「ね。大体の人間がそうかもしれないんだけどね。このストーリーを
   シンプルに把握して言うと、深夜食堂で皆に歌を聴いてもらって、
   作詞家の先生に出会えて、ちょっと夢を掴む事ができた。それだけ
   で幸せだった、という把握の仕方も出来るよね。陳腐だけど」
 倉「そうですね。でもそこじゃないんでしょうね。そういう人生を享受
   できるか?そういう意味で言うとこのマスターも相当ですよね・・
   この流れが分かっていたような、ね・・」
 

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迷い猫たちへ

 倉「ではそろそろ、今回のシメをどうぞ」
 鎌「俺の人生観にこの作品を照らし合わせると、少し大袈裟な話をする
   と・・・自分でも結論の出ていない話をするけど、例えば普天間問
   題ハラが立つ、めちゃくちゃじゃないかと、どう考えても嘘っぱち
   だらけなのに辺野古に移設しようとして。自分ではどうにもならな
   い事って世の中にはとても沢山あるんだよね。社会的にも、他者と
   のコミュニケーションにしても、友人としても、恋人としても、妻
   としても、親としても、子としても。そういうのを全て受け入れて
   いる感じがね、あのシーンにはしたのね」
 倉「新宿を車で走るシーンですね。新宿を、まさに鎌田さん言われた、
   色んなポジション、パート、役割の中を走っている、という様に見
   れば、そうかもしれませんね・・」
 鎌「ただ、俺や倉田君に置き換えてそれを許容なんかするのは本当に難
   しいとは思うのが、我々個々の本音であったりするんだよ。
   全てを許容して、それでも幸せと言ってみせるその人の凄さよ・・
   みたいなね」
 倉「鎌田さんは、かなり田畑智子ちゃんのあの役柄、あの演技に、大き
   なものを感じたんですね・・」
 鎌「いや分かんないんだよ!俺なんでこんなに泣けるのか分からない。
   今、こんなに喋っても分かんないの。何故こんなに泣けるのかが」
 倉「僕も最後の猫のシーンで、全てが相俟って泣けてしまいました。
   間接的な表現の方が個人的にはひどく胸に来るので・・」
 鎌「もう理屈じゃない部分で、ここ(胸を指し)に来るんだろうね・・」
 倉「僕はまだ彼女個人の部分に目が向き過ぎている気はします。彼女が
   色んなモノを許容して、ああやって笑顔でいる事を、彼女の人生の
   不幸と幸福が何だったのかを掘り下げたくなって終わっているのか
   もしれません。でもそれでも身につまされる想いが僕にも確かにあ
   って。僕個人の話をするならば、サンダンスNHK国際映像作家賞グ
   ランプリを頂いた後から、上手く転がる部分と転がらない部分を経
   験して、ここ数年は昔よりも酷く「死」を意識しているんですね」
 鎌「死を意識している・・・」
 倉「それはいつ死んでもいい!という捉え方ではなくて、ただただ死に
   たくない!だけなんです。それが漠然とではなく、いつも眼前にあ
   って。それでこの作品を観ると、彼女は「死」が目の前に来ても狼
   狽える事もしなかったですよね?僕は売れていない今でも恐れてい
   て死の直前も「死にたくない」で終わりそうな気さえするんです。
   それと比べると彼女の潔さに感動しています。彼女は歌いたかった
   だけの様に思えますが、僕は映画を創りたいだけで生きていないか
   らかな?って思うと少しショックも覚えます。もっと言えば今、自
   分個人の幸せを追えている気がしていないからかもしれません。
   猫まんま一つ、僕には無いので」
 鎌「・・・俺にはあるかな?」
 倉「しかしまあ、僕と鎌田さんとは付き合いの距離も年数も少なくない
   じゃないですか。それでもこの短い作品で、今作品と同じ食材を食
   べながら鑑賞していても、これだけ似ている所と違う所が出てくる
   じゃないですか。この事が「深夜食堂」の素晴らしさだと」
 鎌「そうだよねえ」
 倉「その部分がよりこの第二話では出ているでしょうね。この二話目で
   さすが松岡監督だなと思いました。そしていつかこんな作品を撮れ
   るように僕もなりたいなと想います。でもこれは今のテレビドラマ
   の演出家では撮れないんではないでしょうか」
 鎌「撮れない撮れない!」
 倉「第二話だけで一時間行けますからね!」
 鎌「よく30分で纏めたなあ~これ!」
 倉「これ脚本の段階を知りたいですよね。色々用意あって、撮影の際に
   削られていったのか、それとも最初からだったのか。元々この形だ
   ったとしたら、もう恐ろしいです・・」
 鎌「そうだね・・」
 倉「第二話目まで観た中では・・今の所No.1です(笑)」
 鎌「まだ先があるだろう!!(笑)」
 倉「でも放送されていた時でもこの作品が胸に残っていましたね」
 鎌「うん」
 倉「もしかしたら田畑智子ちゃんに「死」が似合わないから余計に胸に
   来るのかもしれないです。キャスティングの素晴らしさですね」
 鎌「うん・・・・・」
 倉「いい加減シメて下さい(笑) あまり二人の想いが出過ぎてて、第一話
   の時よりも纏まっていないんですが・・」
 鎌「ま、纏まらなくていいんだよ。これを読む人がどう想い、どっちの
   話も聞いて、好きに考えてくれればいい訳だしね」
 倉「本当は何も知らずに、何も読まずに、この作品を観てくれる事が
   一番いいんですけどね(笑)」
 鎌「観やがれ、コノヤロウ!!!(笑)」
 倉「(笑) 観ていない人がいるのが残念!というか勿体無い!」
 鎌「俺が一人TSUTAYAで貸してやるよ!色んなヤツに!」
 倉「それしたらDVD却ってこないですよ(笑)」
一同「(爆笑)」
 
 

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第三話へつづく・・・

 


2010.07.31