第六十七夜:「どうか、あなたは無事でいて」

diary_bujide

今年も早いもので、もう終わりに近付いています。
今宵で今年の日記は終えたいと思います。
これから年末年始と慌しくなるものですから。
そうは言っても、例年よりは静かなものです。
静かな正月がやってくるんだと思います。
 
 
 
 
今年は大きな事柄がありました。
「大震災」。
東北、関東だけでなく、全国各地で地震が起こりました。
こちら長野でも、甚大な被害がありました。
あの日、テレビで見た津波の光景をわたしは一生忘れないでしょう。
人はあの大震災で何を学んだのか?
それは来年以降、見えてくるのではないかと思います。
多くの死を越え、生き残った我々の中に
力強い「種」が生まれた事を私は信じたい。
必ずや美しい花として強く芽吹いて欲しい。
そう想うのです。
 
花板のマサさんから聞きました。 災害救助犬のお話を。
瓦礫の中、一日150人以上の遺体を救助犬は見つけていったそうです。
しかし、救助犬は元々生存者を探す為に訓練されていますから、
見つかるのが遺体ばかりだと、不安と悲しみを表すのだそうです。
そしてその鋭敏な嗅覚は、遺体を見つけるだけでなく、
遺体の臭いの嗅ぎ過ぎで急激に弱まってしまうのだそうです。
その結果、災害救助犬としてはもう二度と働けなくなるのだそうです。
私はそんな救助犬の実態を全然知りませんでした。
現在の報道は誰かの利益の為にあるのでしょう。
だから全てには光は当たらない。
しかし光を与えるのは私たちの疑問からです。
報道の裏、事実の裏、苦悩の裏をいつも探し、
疑問を自ら持たなくてはならないのだと私は思いました。
 
 
 
 
様々な困難のあった今年であっても、
私は相変わらずバカばっかりでした。 本当にバカだった。
バカな日記も沢山披露してしまいました。
先ほど読み返していたら、なんだか恥ずかしくもなってきて…。
でもあれらを書いた理由は確かにありました。
私は旅館の女将です。
痛みを抱えるだけではいけないのです。 俯いていてはダメなのです。
幸せと安心と楽しさを提供する事、それを忘れてはいけないのです。
実際、私自身、何度もそれを忘れそうになりました。
ピタリと客足が止まった時などは、もう終わりだとも思いました。
多くの知人の死を前にして、道が見えなくもなりました。
怒りと哀しみで我を忘れそうにもなりました。
しかし、それでも、人を招く仕事を続けていたかった。
こんな時だからこそ、人との仕事を捨てたくなかった。
そんな信念やらを取り戻す為に私はこちらで
バカげた文を沢山書かせてもらったのだと今は思っております。
本当に申し訳ありませんでした。
 
 
 
 
来年はどんな年になるのでしょうか?
「喉元すぎれば熱さを忘れる」とならない事、切望します。
2011年、日本人は何時でも、何処でも、誰にでも、
大変な事柄が目前に訪れるという事を知りました。
それは大きな「目覚め」だったはすです。
2012年はその「目覚め」から、どう「動く」か、なのでしょう。
それもこれも私たち次第。
本当の「選択」は来年から始まるのです。
私はただの旅館業の人間ですが、
日本中、世界中の生きとし生けるものの幸いを祈り続けます。
そう、したいからです。 それだけです。
最後に、私の大好きな文章をご紹介して今年の筆を置きたいと思います。
どうか皆様、ご無事でいて下さいませ。
 
 
 
 
 

 
わたしは、おにに生まれてきたが、
おにどものためになるなら、
できるだけよいことばかりしてみたい。
いや、そのうえに、できることなら、
人間たちのなかまになって、
なかよくくらしていきたいな
 
 
「ドコマデモ キミノ トモダチ   アオオニ」
 
 

 
浜田広介著『ないた赤おに』より
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

2011.12.21