浪日記⑮  撮影・庫田久露武/文・鎌田浩宮

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久しぶりの「浪日記」だね。

浪(なみ)は、オス、この6月で、めでたぁく!17歳になった。

もう老猫、体のあっちこちが病気になっていて
苦しまずに往生してくれればいいんだけど
特にひどいのが嘔吐。

ひどいと、毎日。
見ているこちらまで苦しくなる。

そこで僕、鎌田浩宮は
今年の3月末、仕事を辞めて看病に専念することに決めました。

その会社にはいちゃもんをつけられたので
やむなく辞めることになったんだけど
今となっては、
浪のためには最善の選択だったと思ってます。

「たかが猫のために阿呆かおんどりゃあ」

分かってまんがなあ。
でもね、僕にとっては最愛にして唯一の息子であり、
17年間分かち合ってきた親友で、
男同士で変だけど、恋人のようでもあり。

そんな目ん玉入れても痛くねえ息子が苦しんでいると、
もう数か月しか生きらんないかもしんねえなら、
ずっと付き添ってあげたいと思ったわけでござんす。

して、
この夏は、大変だった…。

まずの最大の目標は「この夏を乗り越えられるか」。

浪は、この暑さがどうにも堪える。
節電なんて冗談じゃねえ(電力は余ってる♪byキヨシロー)、
僕の苦手なクーラーを効かせて、
部屋を涼しくしてあげるんだけど
それでも部屋の隅っこで苦しそうにして、
じっとしたまんま。
食欲が一切なくなっちまった。

ずっと前からそうなる時があったから、
うちには40種類以上のキャットフードの缶詰があるんだけど
遂にどれにも口、つけなくなっちまった。

お医者さんもお手上げ。

体重も3.5kgまで落ち込んだ。
去年、体調の異変に気付いた時4.1kgまで減り、
今年2月には3.8kgにまでなったので、
何のために毎日傍にいてあげているのか。

人間で言えば、41kgあった人が35kgまで減ったと考えてみて下され。

ちなみに、健康な時は5.5kgあったんだ。
とにもかくにも、
一口でも多く口に入るように、
しかもそれを吐かないようにするには工夫が必要で
夜も、多い時は1時間おきに起きて世話をした。
3~4時間くらい夜に寝て、昼に仮眠をとる。
授乳期の母のようだね、と友人に言われた。

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そんなある日。
珍しく散歩したがるので
同じマンションの2階、新父(ニューパパ)と母が住む部屋へ。

そこには先日7歳になった2匹の猫、ひな と はな が。
浪、彼らが食べるドライフードを見て、
猛然と一緒に食べだしたんだよ。
はなのお皿から、前足でこっちへたぐり寄せてまで。

これだこれだこれだ!

でも、2匹のそれは、次第に食べなくなっちゃった。
それから血眼になって店や病院を回り、
ドライフードの試供品を10種類以上集めた。
でも、どれも少し食べると飽きちまう。

こうなりゃ試供品にはなってない正規品を買ってくるのみ。
ドライフードは3kg単位で売られてるものも多く、
食べなきゃ全部無駄になるけど
そんなこたぁ言ってる場合じゃなかとよ。

10種類くらい買ってきて、
まるでうちがペットショップのごたる。

…やった!
そのうちの2種類を、むしゃむしゃ食べるようになった!
加えて夏が過ぎ、涼しくなり、
部屋の隅で過ごさず、いつもの定位置でのびのびするように。
夜中は久々に運動会をして、仏壇の線香卓をひっくり返し、辺りは灰だらけ。
結構毛だらけ猫灰だらけ!
掃除タイヘン。
嬉しい悲鳴を久々にあげたのさ。

体重は100g戻って、3.6kg。
飛び上がって喜んだ。
親友と酒盛りをしたい気分だ。
この夏は、どこにも遠出をしなかった。

今はというと、周期的に食べなくなる。
今日も病院に連れていこうと思う。
でも、今までの経過を見ると
時期に体調は戻り、食欲も戻るはず。

僕は今日まで風邪をひいて寝込んでいた。
すると夜中、浪が前足でちょんちょんと頬を叩くのだ。
これはお腹が空いた時の合図なんだけど、
お皿にはちゃんと用意してある。
浪、あそこに置いてあるからね、と示してまた寝ると
また頬を叩くのだ。

浪、僕が風邪で寝込んでいるのを
心配してくれているのか。
起こされるのは、体がだるくてまいっちゃうけれど、
もし本当にそうだとしたら、嬉しくて涙が5リットルだ…。

2011.10.14