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- 2022.01.09:私の2021年日本映画ベストテン 鎌田浩宮編
- 2022.01.06:私の2021年外国映画ベストテン 鎌田浩宮編
- 2021.02.11:私の2020年映画ベストテン 鎌田浩宮編
- 2021.01.24:私の2020年文化映画ベストテン 鎌田浩宮編
- 2020.09.05:日本人の忘れもの ポレポレ千秋楽っ
- 2020.09.03:日本人の忘れもの つづきのつづきっ
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- 2020.09.02:日本人の忘れもの
- 2020.04.02:コロナウイルスvs映画館 第4回
サブ・コンテンツ
- 2023.03.26:[Radio] walkin’ to the beat everlasting⑦
- 2023.03.04:[Radio] walkin’ to the beat everlasting⑥
- 2023.02.26:[Radio] walkin’ to the beat everlasting⑤
- 2023.02.25:[Radio] walkin’ to the beat everlasting④
- 2023.02.19:[Radio] walkin’ to the beat everlasting③
私の2018年日本映画ベストテン 鎌田浩宮編
毎年恒例
あたしにとっての
去年の映画ベストテン。
海外映画編に続き
鎌田浩宮が
ああだこうだと
のたまいます。
日本映画
1 万引き家族
「そして父になる」もそうだったが本作も、どうしても實おじさんの事を思い出す。實おじさんも、身内の遺したわずかな金をあさるような粗野さがあり、しかし、近所で泣いている子供へ声をかけずにはいられない情けがあった。そして、そんな風に拾われたのが僕であり、この映画の家族だ。僕がもし實おじさんから命じられていたら、万引きをしただろう。
あと僕の親友が、日雇い人夫のありようや、工事現場の様子を、かなり忠実に描いているる事を指摘していた。是枝監督がいかにしっかりと取材をし、事実を曲げずにスクリーンへ投影していることが、分かる。
加えて、是枝監督と細野晴臣さんがタッグを組んだのも嬉しかった。今、世界中の映画音楽がつまらなくなっている。この作品をきっかけに、細野さんも世界で活躍したら…。
是枝監督と顔立ちが似ているのもあり、親友の大友太郎君をよく思い出す。大友君も、こんな映画を作っていたんじゃないかと思う。
2 あみこ
「カメラを止めるな」の50000倍面白かった。あの映画にはないものが、全てある。あんなものは、映画ではない。ドッキリカメラとか、裏話を披露したyoutubeの類だ。
「あみこ」こそが、映画だ。カメラアングル・色調・音響・音楽・台詞・演技と演出・リアリティーとシュールリアリズム・時間軸と空間軸の飛ばし方等々。映画ならではの快楽を、数々の名作映画による財産を受け継ぎながら、新しい一作として完成させている。
3 孤狼の血
日本で、快活・法外な映画を撮ろうとすると、ヤクザ映画になってしまう。対象として切り取るにふさわしく、かつリアリティーがあり、描写できる側面の豊富さから、ヤクザ映画になってしまう。日本におけるヒーロー・ヒロイン像が貧困であり、日本映画のクリエイターが貧困だからである。
例えば、北野武が映画製作により自由を得られ、充足感を得られるのは、「ソナチネ」から「アウトレイジ」までの、ヤクザを題材にした映画だけになってしまっている。彼は、社会問題や政治問題に関心があるにもかかわらず、ヤクザ映画でしか世界を切り取る事ができなくなっているのだ。
しかし、この作品はそれらと一線を画している。善人が1人も出てこない、というよりかは、悪い事をしねえと善い事が成し遂げられない…そのような人間を描き続ける、白石監督の映画が大好きだ。
4 教誨師
漣さんの初プロデュースにして、映画としては遺作になった作品。ステレオタイプの死刑囚とおざなりの展開に前半はだれるが、漣さん演じる教誨師の過去が描かれるにつれ、俄然この映画の素晴らしさが浮かび上がってくる。加えて、相模原での障がい者の方々を殺めた彼をモデルにした死刑囚らを中心に深掘りがなされ、この映画の深みが増してくる。
5 サニー/32
一時期の園子温監督のように、作品を量産。しかも、ハズレがない。助監督として埋もれそうだった白石監督が、爆発、暴発する1年だった。
6 花筐
カルト映画というよりかは、もはやモンド映画の巨匠である大林監督。素直に反戦を描けば傑作を生み出す力量がある事は、誰もが知っている。しかしそんなものを無視して、一頭の馬に全裸でまたがる青年2人を登場させる。モンドを貫く気狂いの私を許容せよ…それこそが、大林宣彦である。
7 津軽のカマリ
傑作「スケッチ・オブ・ミャーク」を生み出した大西監督。主役となる竹山自身は死去しており取材できないという弱みはあるものの、よくぞ完成させたとも思う。
8 斬、
人には例えば、ロックは好きだけどハードロックやへヴィメタルは苦手、という事がある。今回の作品は、僕にとってはハードロックやへヴィメタルだった。感情を爆発させて描けばいい、というものではないという事だ。傑作「野火」の次回作だったので、あのタッチで描いてほしかった。
9 港町
ドキュメンタリーと言えども、映画監督というものは、どうしてもカタルシスや起承転結を求めてしまうもの。そこへの異議を考えさせてくれた。なおこの映画については、この記事で名無シーさんとこの記事で語っています。
10 今夜、ロマンス劇場で
今どき、白黒映画のヒロインが銀幕から現実の世界に飛び出し、恋をするなんぞという近代的な映画が、成立するわけがないはずなのだ。しかし「ひみつのアッコちゃん」といい本作といい、綾瀬はるかさんには、それを映画として成立させてしまう何かがある。
一方2013年に「八重の桜」で福島を体現。その年のNHK紅白歌合戦で、司会を務めた。福島第一原発近くにある大熊町から、会津若松に避難している中学校を訪問した。その映像が流れた後、彼女は涙が止まらなくなり、番組の進行が滞りそうになった。
この映画の初日舞台挨拶で、この映画に例えて「かなえたい夢は?」と訊かれた綾瀬さんは、世界平和だと答えた。そして、それを揶揄する人がいた。しかし、綾瀬さんがどれほど福島と深く関わってきたかを知れば、そんな揶揄はしないのだと思う。綾瀬さんを、本当に素晴らしい人だと思う。
次点 パンク侍、斬られて候
どうしようもない失敗作だ。町田町蔵とクドカンが惜しみなく力を貸しても、こんな映画しか作れない。しかしそれでも、石井聰亙が映画を作っただけで、ただただ嬉しいのだ。
次点 止められるか、俺たちを
僕の親友が、初めてプロデューサーとして参加した作品。めでたい!
2019.01.07