第7話「キャバクラに行く〜前編〜」

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ボクはサラリーマン3年生。

ボクの働く会社は、創立まだ10年そこそこの世間でいうIT系。

社長は、まだ30代半ばで、スタッフ平均も20代後半という若い会社だ。

大学を卒業して入社、学生時代に多少アルバイトを経験したくらいで、

よその会社のことはもとより、まだまだ世間を知らない未熟者なボク。

大手企業に勤める友人は、

上司に付合わされて銀座で寿司を食っただの

その後、キャバクラだの、高級クラブに連れて行かれただのと、

所謂、会社のお付き合いとやらがあるらしい。

そこ行くと、ウチの会社は接待とやらもあまりないし

会社の連中自体が、ちょっとオタク系はいってる奴が多いので

飲み会だの、合コンなるものはほとんどといって開催されることはない。

去年の忘年会も、会社の会議室でコンビニで買ってきた

ドリンクとつまみだけの、ささやかなるものだった。

しかも、ウーロン茶となっちゃんと、ポテチに人気が集中する有様。

まるで中学校の学芸会の打ち上げだ。

正直、仕事と給料以外に、興味が何もない会社なんですね。

そんな会社ではあるが、

社長と一緒に会社を立ち上げた専務は、なかなかイケてる上司だ。

酒と煙草を一切やらない社長とは正反対に、

専務は、煙草は1日2箱、酒はザル、身長178cmのナイスガイ。

30半ばにして、年収1000万円を楽勝で超える独身。

当然のことながら、女性にもモテル。

会社で唯一、憧れにも近いボクの上司であるワケで。

そんな、上司に「今晩、付合わないか?」

「クライアントと飲みの席があるんだけど、担当者も連れてくるらしくてさ」

「こっちも、オレ一人じゃなんだから、付合えよ!」

「ウチの会社でまともの酒飲めるのお前くらいなもんだしさ」

と、さわやかな笑顔で誘われる。

今の若い奴は、酒を飲まないだとか、

上司の付き合いは避ける傾向があると言われているが、ボクは結構好きな方だ。

しかも、専務は色々と、いい店を知っていてるので、

誘ってもらえるのはうれしいくらいだ。

ということで、週末の六本木に専務とタクシーで向かう。

「お前さ、彼女いるっていってたよな?なにやってんだっけ、学生だったっけ?」

隠すことではないが、なんとなく説明がめんどくさいので

キャバ嬢とはいえず、専門学生ということにしてある。

「専門学校いってますけど、アパレル関係目指してるみたいで」

「そうか、でも、アパレルも今きついみたいだしな」

「デザイナー目指して専門学校通いつつ、キャバクラでバイトしてさ、そのままお水にどっぷりってやつ多いからな〜、今実際、なりたい職業にキャバクラ嬢がランクインしてるくらいだしな」

「あっ、運転手さんミッドタウンの手前でいいですよ、交差点混んでっから」

ちょうどいいタイミングで会話が途切れた。

しかも、その会話、まんまなんですけど、ボクんとこ…と心の中で呟くボク。

なんか、よくよく考えたらヤバイな、

ボクのカノジョここ六本木で働いちゃってんだけどなあ〜

などと考えつつ、クライアント含め、野郎4人ということで、

専務行きつけのやきとりの旨い居酒屋へとまずは向かうのであった。

続く

2010.10.21