キャマダの、ジデン。㉛生徒会選挙

鎌田浩宮・著

さあ、生徒会選挙、当日。
全校生徒が体育館に集められ、
立候補者の演説会が始まった。
各クラスのツッパリが順に壇上に上がっては
普段学校のマイクなど持たない緊張に少々ビビリながら
「夜露死苦!」
とキメていた。

僕の出番が、来た。

全員の先生や生徒の前で
僕らは自由であり、
自治の権利があり、
先生に意見し反論し、
自分の居場所を居心地よくして行くことは、
とても素晴らしいことなんだ、と喋りだした。

制限時間が終わる、
まだ喋り続ける、
マイクのスイッチは切られてしまった、
先生が怒鳴り始める、
それでも演説し続ける僕に
それまで
生徒会なんぞ
自由なんぞ
自治なんぞ
全く興味のなかった生徒たちも含め
「なんだか分かんねぇけどいいぞやれやれ」
みたいな者も含め
生徒全員が
拍手喝采をし始めた。

生徒が1つになっている。
歓喜で一体となっている。

実は、この演説会の担当で
マイクのスイッチを途中で切ったのは
あご髭250ccライダーの先生だった。
「鎌田、壇上から降りろ!」
と僕に叫びながらも、
「やれ!もっとやれ!」
と叫んでいるような気がした。

この時、僕の弟、同じ中学の1年生でして。
「かまちょの兄ちゃんすごいぞ!」
(うち、僕も弟も、あだ名、同じなんです)
と周りが騒ぎ始め、弟、恥ずかしくって
ずっとうつむいていたそうで。
可愛いのお。

目一杯喋り
体育館全体がコーフン状態の中
応援演説に頼んでおいた
クラス1のツッパリ・純君が
(普通、応援演説って、自分の親友とかに頼むんであるが、
僕は演出的に、それを避けたんである。
構図としては、ウヨクとサヨクの共闘を気取った)
一言だけ、言った。

「かまちょを、夜露死苦ゥ」

矢沢永吉の口調だ、
僕は、腹の底から快活に笑った。

「かまちょが喋りすぎるから、俺の出番なかったじゃんよぉ」
純君に、笑いながらひがまれた。

僕が、親友などには頼まず、
ツッパリの純君に応援演説を依頼したのはね、
生徒の間にあるヒエラルキーを
壊したかったんだね。

当時は
ツッパリがクラスを牛耳っていて
ヒエラルキーのテッペン。
ガリベン君や
内気な子は
からかい、いびりの対象で、
ヒエラルキーの1番下。

そーゆー二元論的なものを
いっぺん壊して、自由になろうよ、
みたいなこと。

ツッパリが、
ツッパリ以外の応援演説をするなんて
考えられなかったからね。

そして僕は、
学校創立以来初とゆー史上最高得票で
生徒会の役員になった。

さあ、学校を、変えよう。

ゴウマンな感じで、続くよ・・・。


2013.05.08