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キャマダの、ジデン。㉗小学校卒業
著・鎌田浩宮
ある日、
大木先生に
放課後、呼び出されまして。
また怒られんのかなあ?
まるで博とさくらに呼び止められる満男のように
面倒臭そうな、僕の顔。
「この前の知能テストで、このクラスではあなたと○○さんの2人が、飛び抜けて成績が良かったの」
IQの結果は発表してはいけないはずだったが、
そう教えてくれたのは、なぜか。
こんなこと書くの、
ああそうですよ自慢ですよ!
もうこれ以降の長いジンセーで
ジデンに書くような自慢することなんか
皆目出て来ないんですから。
もー、この頃が、
ジンセーの、ピークです。
ちなみに、
中学受験、
落ちました。
なぜか同時に
僕、小説、書かされてまして。
どこぞの主催だか
僕の母が、小学生向けの
小説コンクールというものを見つけてきまして。
書きましたよ、
原稿用紙に、100枚。
それに加えて受験勉強で
睡眠時間3~4時間なもんで、
そりゃあ、落ちるです。
小説の方も
一体どんな審査をされたのだか
母に任せていたのでよく分からず。
落選。
当時三軒茶屋小学校は、
1学年4クラスあったんだども、
小学5年~6年の間は、
クラス替えもなく、担任の先生も替わらなかった。
ただ、この4人の先生は、
元から三軒茶屋小にいたのではなく、
全員他校から異動してきた先生と
大卒で初めて教壇に立った先生で
構成されていた。
そのせいかなんか知らんけれど、
大木美代子先生は
卒業式が近づくごとに
神経がとげとげしてくるんであった。
「卒業となると気分がふわふわしてきて、何か事件や事故を起こしてしまうものなの。とにかく卒業まで何も起こさないように!」
こっちは別段日常通りに過ごしているので
「なんのこっちゃ」
唖然としながら聞いていたんだが
要は、何のトラブルもなく
自分の体面を保ったまま卒業させたくて
勝手にカリカリカリカリしてたんじゃないかなあ。
先生がカリカリしていると
それが児童にも伝播しちまうもんで
多分いたずらっ子がやったんだろう、
ある日校内の窓ガラスが割られてたりして
「誰がやったの?!誰がやったか絶対突き止めるからね!」
とさらに大木先生はカリカリなんであった。
そんな最中に追い打ちをかけようと
キャマダ少年が仕掛けたのが
「抗議文」
だった。
前回までに書いた大木先生への鬱憤を
子供ながらに意思表示して
できれば詫びてほしいという思い。
その話をクラスメートにすると
何と数人、私も書くわ僕も書く
という者どもが出てくるではないか。
じゃあ3月○日に、
有志一同皆一斉に提出しよう!
約束をして、散会。
書いたなあ書いたなあ。
小さな胸ん中一杯一杯にして
分かってほしい、と書いたなあ。
皆に、裏切られました。
その日、実際に書いてきたの
僕だけだったんです。
ああ、
クラスに友達がいない僕の、悲しさよ。
確かに、相当に勇気のいる行動では
ありますけどね。
文書を叩きつけるなんて、
ある種のガクセーウンドーだもの。
ひるんでしまうの、解るんですが。
で、1人で提出して、
「あなたは最後の最後まで私に泥を塗るのね」
と先生に言われ。
いやあ、僕はかげひなたなく
あなたに問いかけたい
というだけなんですけれど…。
でも、卒業直前だったか直後かに、
裏切られたクラスメートも含め数人で
大木先生の家に、遊びに行ったりしてるんですね。
なんで行ったんだろう?
抗議する時はする、
そうでない時はコミュニケートに励んで
努力、惜しまない、
そんな子供だったんじゃないかしら…?
そして、卒業。
地元の駒沢中学校に
通うことになるのです。