第105話 第3章「記憶の彼方に」の巻

次に目が覚めたのは昼の2時過ぎだった

こんな時間まで寝たのは久しぶりだ

 

腹を空かせたであろうクリスは

それでも何も文句はないといった素振りで

ベットから起き上がるボクを横目でみる

 

「ワルイワルイ、すぐメシつくるからな」

 

ホントにコイツはおとなしくて

ワガママいわずに、いいヤツだ

アイツとはエライ違いだよ

 

クリスのごはんを用意しながら珈琲をいれた

今日は、ミルクと砂糖いつもより多め

つまり甘ったるいカフェオレ

 

そいつを飲みながら

ボーッとしていると頭に浮かぶのはカノジョの姿

そういえば、ロンドンにいった当初は

なんだかんだと、アイツのことを考える時間が多かったけど

時とともに、その時間が短くなってきている

そのうち一日中、

一度もアイツがアタマに浮かばない日も訪れるんだろう

なんてことをふと思う

 

恋愛もそうだけど、

人や動物の死もそうだもんな

時とともに薄れていくんだ、

今目の前にないもの

目の前にいない人間は、多分記憶から徐々にね…

それって人間が前向きに生きていくためなんだろうな

まあ、詳しい事は心理学者でもないし、よくわかんないけどね

 

しかしまあ、記憶からなくなる前に

電話やメールのひとつでもしてくりゃいいのにね

 

あのバカ…

2012.11.15