第十夜:「宇宙の彼方から」

diary_utyu

けい子(仮称)です。
痩せた?と言われても喜べない程に、マイペースなわがままボディです。
 
暴走機関車のような忙しさも落ち着き、
今日は小学5年の息子とゆったりゲームをしていました。
息子は鉄郎といいます。
これは夫・太郎さんの強い希望で名付けました。
ええ、松本零士先生の影響です(笑)。
生まれてすぐに夫は亡くなったので、鉄郎は太郎さんと
一度も話した事がありません。
それでも何年かは顔を会わした時間もあったからか、
大きくなった鉄郎に父の事を聞いてみると
「お父さん、髪長かったよね」
などとも言います。 見えていたんでしょうかね。
 
 
太郎さんはこの旅館の一人息子でした。
跡継ぎとしての武者修行時代に私と東京で出会いました。
よく変な髪型をしていて、片目が出るくらい前髪を長くしたり
していたので、私は鬼太郎さんとも呼んでいました。
今だと役者の瑛太くんのような髪型って言えるのかな?
太郎さんは酷い照れ屋だったから、顔を隠したくて
あんな髪型をしていたのかもしれません。
接客業の跡継ぎなのにね(笑)。
 
なんやかんやあって私は此処に辿り着き、
次にあの人が旅立ちました。  銀河鉄道にひとり乗って・・・。
数年、いやもっとだったかな?
長い間泣き暮らしていたように今は想います。
 
ある日、幼い鉄郎を保育園へ迎えに行き、
帰り道の途中にある公園で少し遊んた時の事です。
私はまだうまく笑えない頃でした。
ブランコをしていた鉄郎が何かを思い出し、私の元へ走ってきて
カバンの中から何かを取り出しました。
それはその日に習ったという折り紙で折ったカメラでした。
 
          「はい、チーズ!・・ぱしゃ!」
 
そのスットンキョウな動作と、緩慢に低音でつぶやく「ぱしゃ!」が
あまりにおかしくて笑ってしまいました。
すると鉄郎はこんな事を言ったんです。 自分の小さな胸を指して、
 
   「ママわらうと、ぼくのここがポッカリするの、しってた?」
 
私はすぐには意味が分からず「それ、ポカポカするってこと?」と
聞くと、鉄郎は「そうそう」と笑って返してくれました。
泣かす事いうけれど、少し口説き落とせていないわが子・・・・。
ほんとうにありがとう。
 
 
あれから随分と育ってくれた鉄郎に、今日ゲームをしながら
あの日の事を覚えているか聞いてみました。
鉄郎は「・・おぼえてないよ」といいながら、少し照れた顔を隠していました。
そんな顔も、どんどんあの人に似てきています。
 
見ていますか?
 
 
 
 
 
 
 

2010.09.29