第89話 第2章「コンサル、アゲハ」の巻

「おい!そこの哀愁漂う加齢臭予備軍!」

そういって、背後から腕を絡ませてきた

 

「エッチしてねーんだろ?うんうん、アタシャわかるよ、オマエらバカップルのことはね!てことでケーキ喰うぞ!アタシがおごっちゃるけん」

そういって、腕を組んだまま

ロッポンギアマンドに連れ込まれそうになる

 

「なあ、ここやめない?なんか、飯でも喰おうよ、多少金ならあるからさ」

 

「うん?あんだよ、アタシャアマンドがいいんだよアマンドが!いいから入るぞ!」

 

「・・・。」

 

結局、アマンド

はじめて入った…

 

アゲハは勝手にボクの分もオーダーして

細いメンソールの煙草に火をつける

キャバ嬢だけあって、煙草のフィルターにはベットリとルージュの後

 

「んで?なに?ヤツとまた喧嘩か?」

 

すっかりまんまとアゲハのペースでボクも口を開く

 

「まあ、喧嘩って訳じゃないんだけど、別れたいっていったんだよ、アイツに…」

 

“お待たせしました”

そういって店員がコーヒーとあんまり美味しくなさそうなケーキを持ってくる

 

もう少し、間を置けよ!なんて思った

 

「んで、どうなんよ?アイツオマエさんに惚れてるよ?」

 

「えっ?」

 

「えっ?とかいってんじゃねーよ、きこえてんてんべ?」

 

「あ、ああ、まあね」

 

「オマエ、ホントダセーよな、草食男子か?」

 

「なんだよそれ…」

 

「そういうグジグジしてる奴のこというんだよ!ハゲ!」

 

「はげてねーし、まだ,,,」

 

「めんどくセーオトコだな、いいか、黙って帰ってこいっていやいいんだよ、つべこべぬかさず、わかる?ドゥユノーワラミーン?ついでに言っとくと、ゴメンとか間違っても言うなよ!オマエいつもゴメンからはじまるからな」

 

たしかに…

いつも口グセのようにゴメンって言ってる気がする…

 

美味しくなさそうなケーキをペロリと平らげ

伝票片手に立ち上がる

 

「いいよ、アタシがここおごる。奴によろしくな。店にはいつでも稼ぎにこいって店長が言ってるって伝えといて!んじゃね♡」

 

そういって、アゲハはボクのほっぺにキスしてレジへと向かった

そして窓越しに投げキッスをして六本木の闇に消えた

 

ウインドーに映る自分のほっぺに

べっとりとキスマーク…

まあ、なんとなく、いやじゃない

 

残されたコーヒーと

一口も口につけてないボクの分の美味しくなさそうなケーキ

コーヒーを一口啜り、ケーキを一口食べてみた

 

うん、見た目通り、たいして美味くはないな…

 

素人ながらにアイツが焼いた

シフォンケーキが無性に食べたくなった

 

スマホで時間を見る pm8:45

 

まだまだ電車はあるな

 

そう思った瞬間、

申し訳なくも一口だけ食べたケーキを残し店を出た

お勘定は済んでるし

 

麻布警察の斜め前のバス停に

ちょうど渋谷行きのバスがハザードランプをつけて停ってる

ボクはすかさず小走りで飛び乗る

 

渋谷、そっからJRで鎌倉

 

よし、寄り道して帰ろう

よその家で居候しているカノジョを迎えに…

2012.07.19