浪日記⑲  撮影・庫田久露武/文・鎌田浩宮

12月1日、木曜。
東京は急に寒くなり、真冬並みの気温になりました。
猫は寒いのが苦手です。
浪も、予測通り食欲が落ちてきました。

早めに手を打とうと思い、17年前からずっと通っている病院へ1週間ぶりに行きました。
最近は週に2度通っていましたが、ここのところ気温も暖かったので浪も体調がよく、1週間でも僕らにとっては久しぶりでした。

お医者さんはいつもとても親切で、
「来年の誕生日まで頑張れるといいね」
と言ってくれました。
「いやあ、年内持つかどうかも不安になっちゃいます」
と答えました。

早めの注射は効を奏して、浪は夕食を沢山食べました。

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12月2日、金曜。
変わらず寒い日でした。
僕はなぜか眠くてたまらなくて、布団から出られないでいました。
すると昔のように、浪が僕の腹の上に乗ってきました。
至福の時です。

昨日あんなに食べたのに、今朝はあまり食べてくれません。
でも、洗濯にベランダへ出ると、一緒についてきます。
元気のない時はベッドで寝たままなのです。
浪は洗濯が終わっても、寒いのにしばらくベランダでくつろいでいました。

1階のゴミ捨て場へ行くのも、ついてきました。
これは元気な証拠です。
歩いて階段を一緒に降りるのです。
肩に乗せて、道の向かいのナチュラルローソンへ行きました。
店員さんもお客さんも、可愛いねと頭を撫でてくれました。

お昼になって、13時頃、もう1度ご飯をあげました。
少しだけ食べると、ちょっと経って、昔発情期の時に泣いたような声で泣き始めました。
浪は自力でベッドから降り、おしっこを漏らしました。
最後くらい迷惑を沢山かけてもいいのに、なぜきちんとベッドから降りておしっこを漏らしたのでしょう。

お医者さんが言うには、この時点で、もう意識はなかったそうです。
11月から具合の悪くなった心臓がほとんど止まり、血圧が一気に下がっておしっこが出たそうです。
あっという間に呼吸は浅くなり、13時10分に瞳孔が完全に開き、呼吸がなくなりました。
僕は、頭痛がするほど泣き続けました。

15時に病院に行くと、お花を用意してくれていました。

お医者さんが言うには、その様子だと、ほとんど苦しまないで旅立てたとのことです。
11月に心臓が悪くなった時点で、発作が長く続く場合、苦しみから解放させてあげるために、安楽死も覚悟しておいてくれと言われていましたので、心の底から安堵しました。

仕事やら何やらで、最期を見とれる人は少ないそうです。
だからよかったね、とお医者さんは言ってくれました。

いつものように、浪に声をかけながら、病院から帰りました。

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2011.12.05