第101話 第3章「秋の訪れ」の巻

6時に起きてクリスの散歩に行く

日課ってやつだ

 

この前まで汗をかいていたのが嘘のように

めっきりと秋を感じる

この時間は上着がないと寒いくらいだ

 

あれから一週間

然程変わらない気がする

クリスとボクと、いつもと変わらない生活

 

7時にはお店を開け、客がいなくなれば閉店

これといって定休日もなく、

相変わらず携帯電話はならない

 

ストレスもない変わりに

ワクワクドキドキもない

平穏な生活

 

怒りもしなければ

腹を抱えて笑うこともない

悲しむこともなければ

喜びもない

 

かといって、

この際トーキョーに戻ってサラリーマンをやるつもりもない

ましてや、起業して金儲けなどする気など微塵もない

 

この生活でいい

 

そう自分に言い聞かせているのかもしれない

それでいいとボクはまた、自分に言い聞かせる

 

アルコールも煙草もやめた

 

酒を飲むと人恋しくなるから

煙草をふかすと酒が飲みたくなるから

 

老犬クリスとボクと小さなカフェ

なんだか、昔の金物屋さんみたいだ

お店の奥にこたつがあって、

おばあちゃんに“これくださいな”なんてさ

 

まあ、まだあれからたったの一週間

然程の変わりはない、そんな気がするんだけどね

 

2012.10.18