第98話 第2章「電車なう」の巻

横須賀線なう

とりあえずカノジョとトーキョーに向かう

 

「でっかい旅行バック買い行くからつきあって」

という理由

 

昼過ぎの鎌倉発、東京方面の電車は空いていた

ボクとカノジョは隣同士に座り無言で電車に揺られている

カノジョはただ向かいの車窓越しに景色を眺めている

ボクは、一度はスマホを弄ってみたが

暇を持て余し、眠っているフリをした

たまに薄目でカノジョを見ると

ただただ車窓越しに景色を眺めている

 

ナニ考えてんだろう?

 

横浜辺りを過ぎた頃カノジョは口を開いた

 

「あたしゃロンドンに行くよ」

 

「ん? なに? 今なんかいった?」

 

寝たふりしていただけなので、ばっちり聞こえたけど

ごまかし半分でボクは言った

 

「きこえてんでしょ、」

 

ばれてたか…

仕方がないので目を開きこういった

 

「で、いつ行くんだ?」

 

「来週」

 

「そっか…」

 

「まあ、だからバッグ買いに行くんだもんな、そういえばパスポートは期限切れてないのか?」

 

「うん」

 

「そっか…」

 

ボクのそっか、を最後にまた沈黙が続いた

 

また寝たフリをしようかと思ったら、

カノジョがボクの手をつないできた

 

握り返したものの、言葉と目線に困り

嘘のあくびをして結局目を閉じた

 

カノジョは中指でボクの手のひらを終始ぐりぐりしていた

 

なんか文字でも書いてるんだろうか?

なんかボクにメッセージでも送ってるんだろうか?

 

目を閉じ、手のひらに神経を集中させたが

メッセージは解読できなかった

 

後10分くらいで川を渡りトーキョーにつく…

2012.09.27