第97話 第2章「波と風と朝陽と」の巻

まだ外は薄暗い、朝5時か

 

酒を飲んだせいか、ぐっすりと寝た

しかしそんな量ではなかったせいか、目覚めは意外と爽やかだ

 

トーキョー暮らしの時は

この時間は、酒臭いカノジョの帰宅の定時だったが

ここに来て、すっかり生活が変わった

 

今の生活は、派手さこそないけど

それなりにのんびり暮らせる

それでいいと思っている

まあ、リタイアしたオッサンって年でもないんだけどね

 

でも、時たまふとおもう

 

このままでいいんだろうか?

これからどうするというか、どうなるんだろうか?

別にストレスがある訳でもなく

これは見えない不安がある

 

もし今、夢と聞かれたらそれはそれで答えに困る

そんな日々だ

 

自分の性格からすると

なるようにしかならない、

そうとしかおもわないし、おもえない

 

カノジョはまだ眠っている

クリスも眠っている

 

ボクはそっとベッドを抜け出し

着ていたT-シャツのまま外に出た

 

煙草を一服しようとおもったが

潮風と波の音がそれを遮る

 

「煙草やめてみようかな…」

独り言をいいながら、出しかけた煙草をまた箱に戻す

 

海の向こうがダークグレーから

オレンジとブルーのグラデーションに変わり始めた

 

なんとなく過ぎて行く、

一日のはじまりを象徴するようにね

2012.09.20