2012年8月16日(木) Sail on, Sailor

写真/文・鎌田浩宮

americaによる1時間の前座が終わり、30分のセッティング休憩。
どんどん、客席、埋まっていきます。
しかし、スタンド席は空席が目立つまま。
ううむ。
お盆明けの平日、しかも千葉。
どーゆー魂胆で企てたのだ?
これでは、ビーチ・ボーイズに申し訳なさすぎではないか。

しかも、屋外。
海のそばが原因か否か判らんが、とにかく蒸し暑いんである。
70代のメンバー、酷ではないか。

都心の屋内会場だったら、もっと客来たし涼しいし。

午後7時、遂に始まった!
総立ちのアリーナ席。
(結局、アンコールの最後まで座ることはなかった)
前回タカツカアキオがお伝えした通り、「Do It Again」でスタート。

文字通り、怒涛。
ヒット曲の、連続。
もうないだろうと思っていると、おおまだこのヒット曲もあったか!
の、連続。

44歳の僕よりも上の客層がかなり多く、リアルタイムで聴いてたんだろうな、の人々が大盛り上がり。
僕の隣のおじいさんも、汗だく叫びすぎてうるさい、そのうち失神するんじゃなかろーか。

もちろんそれよりすごいのは、ステージの彼らだ。
ブライアン以外は、立ちっぱなしなんだよ。
交替でステージ裏に引っ込む、というのも一切なし。

アメリカツアーでは3時間のステージだったとか。
今夜はこの酷暑の中、前座もたっぷりあった中、何時間やって下さるのだろう。

メインヴォーカルは、ほぼマイク・ラヴ。
たまにアル・ジャーディン。

彼らの凄いところは、原曲のキーのまま全ての曲を歌えるところだ。
そして、ベテランにありがちな、節を変えたりクセをつけて歌うという事も、ない。
だから、’60年代の手触りを、そのまま触れさせてもらえる。
これは奇跡だと思う。
この再結成は、奇跡なのだ。

そんなところからか、最初から何度、涙腺が緩んでしまった事か。

ただし、ブライアンだけは、辛そうだった。
何度もピアノを弾く手を止め、コーラスを休む。
スタッフが、タオルを持って何度も駆け寄る。
スクリーンには、虚脱したブライアンの顔が映る。

公演後、近くにいた客が言った。
「ブライアン、テンション低すぎだよね」

違うのだ。
様々な事が、全てもう限界なのだ。
再結成に参加し、新曲を、ニューアルバムを創り、ワールドツアーに参加する。
そのことだけで、僕らは感謝の限りを尽くすべきなのだ。

そんなブライアンの、メインヴォーカルを取った数少ない曲の1つ。
「Sail on, Sailor」

何とか歌い遂げる、ブライアン。
大好きなこの曲を、演じてくれるのも少し意外だった。
原曲ではヴォーカルはブライアンではないし、この曲を制作していた1972年頃、ブライアンは精神疾患と、そこからくるドラッグ依存で、この曲自体も、かのヴァン・ダイク・パークスらの手を借りてようやく完成させたもの。

この時代の曲を自ら歌うのは、ハッピーな事なのか?
いや、その次元を通り越し、達観の境地にいるんじゃないだろうか。

冗談半分本気半分で音楽仲間と話すのだけど、最近のブライアンは、
水木しげるそっくりになった気がする。
虚脱していると思うと、突然指示を出したり、歌ったりする。
達観し、そして「That’s Why God Made The Radio」のような、
新たな傑作を創ってしまう。

つづく・・・

 

I sailed an ocean, unsettled ocean

ぼくは海を行く、定まるところを知らぬ海原

Through restful waters and deep commotion

穏やかな水や大きな揺れの中

Often frightened, unenlightened

何度も脅え、闇雲になって

Sail on, sail on sailor

行け、行け、船乗り

I wrest the waters, fight Neptune’s waters

水を相手に、海神ネプチューンの水と戦う

Sail through the sorrows of life’s marauders

人生による襲撃という悲しみの中を航行する

Unrepenting, often empty

後悔はしない、何度も虚ろになって

Sail on, sail on sailor

進め、進みつづけるのだ、船乗りよ

Caught like a sewer rat alone but I sail

ドブネズミのようになって

ひとりぼっちでもぼくは船を進める

Bought like a crust of bread, but oh do I wail

パンのように買われ、だが、おゝ、ぼくはむせび泣く

Seldom stumble, never crumble

めったによろめかず、けっして転ばない

Try to tumble, life’s a rumble

けちらしてやろうか、人生は喧嘩だ

Feel the stinging I’ve been given

ひどい目に遭わされたその痛みは感じてる

Never ending, unrelenting

けっして終わることのない、容赦ない

Heartbreak searing, always fearing

心の痛みが燃えたぎる、つねに恐怖にさいなまれ

Never caring, persevering

けっして思いやられず、へこたれず

Sail on, sail on, sailor

進め、進みつづけるんだ、船乗りよ

I work the seaways, the gale-swept seaways

ぼくは海路の仕事をしている、強風にあおられる海上の道

Past shipwrecked daughters of wicked waters

邪悪な海の娘たる難破船を横に見て

Uninspired, drenched and tired

何も思わず、びしょぬれになり、くたびれて

Wail on, wail on, sailor

泣け、泣きつづけるのだ、船乗りよ

Always needing, even bleeding

いつもこと欠き、血まみれにさえなって

Never feeding all my feelings

自分のあらゆる感情をけっして満たすことなく

Damn the thunder, must I blunder

雷を呪い、ぼくは大ドジをしでかしているのだろうか

There’s no wonder all I’m under

ぼくがかなわないのに何の不思議もありゃしない

Stop the crying and the lying

泣くのをやめろ、嘘をやめろ

And the sighing and my dying

そして溜息つくのも、ぼくの死も食い止めるのだ

Sail on, sail on sailor

行け、行け、船乗り

Sail on, sail on sailor

進め、進みつづけよ、船乗りよ

Sail on, sail on sailor

進め、前進するのだ、船乗りよ

Sail on, sail on sailor

行け、行け、船乗り

Sail on, sail on sailor

セイル・オン、セイル・オン、セイラー

Sail on, sail on sailor

セイル・オン、セイル・オン、セイラー

Sail on, sail on sailor

セイル・オン、セイル・オン、セイラー


2012.09.10