第四十夜 :「My Last Song / Love GUNDAM」

diary_gundam

ちょっといい気分のけい子です!
それは以前、営業のシミズさんに連れていって頂いた
素晴らしい創作料理屋の店主ヒロシさんから
「マイ・ラスト・ソング」が私宛に届いたからです!
ブログに書いたものをそのままお送り頂いたモノらしく、
かなりの長文でしたので、何処をどう切ればいいのか、
私には考えられないのでここで全文をご紹介しようと思います。

そんな!!!美女だなんて!!!物憂げだなんて!!!
ありえない!!!いや!?お願い、ありえてっ!!!
(※ヒロシさん、私の本性知ったら幻滅するんだろうな・・・うう・・)

でもヒロシさんは「生」に真摯な、麗しい方なのだと知りました。
ただのガンダムバカではありませんでした。
これはシミズさんを介してお伝え頂こうと思います。
そして私は、「ガンダムはよく知りませんの・・・」とも(笑)
また是非寄らせて頂きますね。 今度はいつもの私で。
 
 
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My Last Song:『翔べ! ガンダム』
作詞:井荻麟 作曲:渡辺岳夫 編曲:松山祐士 唄:池田鴻

実はここだけの話なのだがあまりこの歌は好きではない。
もっと言ってしまうと『機動戦士ガンダム』という作品も
あまり好きではない。
『ガンダムシリーズ』としてしまうと話は別でこれはもう
合わせ技一本!的に群を抜いて好きなシリーズだ。ただ、
『翔べ!ガンダム』、『機動戦士ガンダム(俗に言う1stガンダム)』
だけを取って言うと、男臭すぎて、僕は少々不得手である。
 
 
<<回想>>
あれは今年の頭の頃だっただろうか。
いつものように店を開け、
カウンターの中でその日入荷した鮮魚の下ごしらえをしていると
子供の頃からの先輩であり悪友のシミケンが
雰囲気のある美女を連れてやってきた。

『ここは旨いつまみで飲ましてくれるくせに
ガンダムが飾ってあるっていう妙な店なんだよ(笑)』

(うんうん^^
うちの店を説明するにはこれ以上ないというくらい
簡潔で的確な説明だよ^^b!!
でも、そういう説明は雰囲気のある女性に対しては
やめて欲しかったかな!!、、先輩(・_・、) )

この先輩について語りだしてしまうと
このブログの文字制限いっぱいを使っても語りつくせない
涙、涙のエピソードで盛りだくさんなのだが
著しく脱線してしまいそうなので、この場では割愛させてもらう。
とりあえず、地元の老舗旅館に就職し、
長く営業として頑張っている悪友だ。
普段は営業仲間や、接待といった、男ばかりでうちの店を
利用してくれる事が多いのだが、その日に限っては
『美女と野獣』という珍しい組み合わせだった。

その女性は『けい子さん』と呼ばれていて
どうやら先輩の勤める老舗旅館の若女将さんのようだった。
確かに雰囲気のある美女だったのだが
ちょっと物憂げな感じがする方だった。
少し肌寒い晩だった、という事もあり
いつもより少しだけ高い温度でつけた燗とアテを出した。
他人の会話に聞き耳を立てないのが鉄則の商売なので
具体的にどんな話をしていたかは分からないが、
どうやら、最近落ち込み気味のけい子さんを見かねた先輩が
一杯誘った・・。という流のようだ。
物憂げな印象を受けたのはそのためだったようだ。

うん、見てると兄と妹のような雰囲気をかもし出しつつ
なにやら先輩が人生を語っている。
燗はいつもの温度に戻し3本目に手がついていた。
本来ならこういう場での定番アイテムなのだろうが
残念な事に、うちの店には串物はない・・困ったね・・
などという店主の心配など気付く様子もなく
箸の先で何やら人生の略図みたいなのを描きながら先輩は
熱弁をふるっている。

燗が4本目に入る頃には僕も一緒にいただくようになり
3人でなにやら人生のような物について笑いながら語った。
その頃になるとけい子さんも少し吹っ切れたような顔になり
時折笑顔を見せていた。
本来はこういう笑顔を見せる方なんだろう。
うんうん、ほろ酔いの美女の笑顔ってのはいいもんだ。

『ところでヒロシさん?
人生最後の瞬間に聴きたい曲ってなんですか?』

3人で話だして、初対面の硬さが和らいだ頃、
意表をつく形で尋ねられた。
どうやらけい子さんが最近気に入っているインターネットの
ブログだかホームページにある企画らしい。
一拍だけ考えて

『翔べ!ガンダムですかね?w』

と、笑いながら答えた。

『ガンダム好きのヒロシさんらしいですねw』

と、笑い返された。

『ガンダム』というキーワードが悪かったのか?
そこから先はガンダム好きの先輩に火がついてしまい
けい子さんそっちのけで、ガンダムトークに花が咲いてしまった。
あげく皆で静岡に等身大ガンダムを見に行くぞ!と
燗を6本たいらげて上機嫌な先輩がはしゃいでいる。
大事な話だっただろうに ごめんなさい、けい子さん(・_・、
タクシーに乗り込む2人を見送り、のれんを下ろし(のれんないけどw)
シャッターの下りた店のカウンターで寝酒代わりのビールを頂いた。

『人生の最後に聴きたい曲』

なかなか奥の深いテーマだと思った。
一日の終わり、酒のつまみにはなかなかの一品だ。

誰かの誕生日に~とか
自分の何かの記念に~とかではなく
自分という個の最後という一世一代の瞬間に、、、
となると、その選曲ひとつに
その人の生き方や考え方、まわりの景色まで見えてくる。
うん、奥深いし興味深いテーマ。

ガンダム好きのマスターという役柄の僕としては
とっさに『翔べ!ガンダム』と答えたものの
無論これは、僕の本心ではない。
サービス業のサービス精神のなせる技である。

『本当の僕が僕の最後に聴きたい曲かぁ・・』

寝酒のビールは飲み干したものの、
これと言った答えが出たわけでもなかったので
今度は僕の一日にのれんを下ろし床についた。

先日40歳になった。
ありがたい事に、このブログでも多くの方に祝ってもらった。
悪友である先輩からは
『MG(マスターグレード)量産型ジム』
という、無駄にグレードと値段の高い、
でもその他大勢のザコキャラ・・という、
微妙なプラモデルをいただいた。

『人生最後に聴きたい曲』
という宿題はいまだ出来ないままだったが
40歳になると不思議なもので
なんとなくそういう事としっかり向き合って考えてみたくなった。
39歳と365日目にはそんなのと向き合う気もなかったのに
40歳になったとたんにそれと向き合いたくなった。。。
というくらい自分にとって40歳というのが人生の中の
節目(チェックポイント)だったのだろうと、今は思う。
今までは自分の前には
無限に続く今日と似た『明日』という日があり、
終わりなんて想像もつかない毎日の中でがむしゃらに前進してきた。
そんな感じだった。
そこまで向き合うキッカケも無かったし
そんな事考える余裕があれば店の事!という状況だった。

とりあえず、今を生きる。明日を生きる。半年後、一年後を生きる。
前へ前へ。

でも、40というチェックポイントに差し掛かったと同時に
瞬間ふと足を止めてみたくなった。
歩いてきた道、
これから進んでいくだろう道。
ちょっと見渡してみる。
見えなかった、というか
気付かなかった物が見えてくる。
現実問題として
僕という人間が想像できる範囲での
『長生き』
という年齢の確実に半分はきてしまったようだ。
改めて気付く。

『80まで生きてられるかなぁ?^^;;;』

と、思うと、確実にもう折り返し地点は過ぎている。
50歳、60歳くらいで他界される方も少なくは無い。
となると、10年後、20年後、僕はもういないかもしれない。
そう思うと
当たり前のように続くと思っていた明日という道と
目に見える景色の端っこの方、、、
ぎりぎり自分の視野に入るか入らないかのあたりに
今まで気にも止めなかった『僕という人間の終わり』という物が
確実に意識できるようになった。

ちょうどあれだ
青く高い空、入道雲、虫取りの網と麦藁帽
縁側の昼寝と冷たく冷えたスイカ、蚊取り線香の香り、花火
無限に続くとおもってた夏の日。
それが、お盆という夏の一大イベントと同時に
少し肌寒くなり、無限だと思ってた夏の日も10日もすれば
終わるのだと気付いた少し物悲しい小学校時代の思い出・・
あれに似ている。

無論、まだまだやりたい事、やらなければならない事は山積みなので
死んでやる気など毛頭ないのだけど、
ただ淡々と日々を何気なく過ごすのではなく
意味のある一日を過ごしたいな・・
と、襟元をただしたくなるキッカケにはなったようだ。
そしてそうだな
40歳の今の僕なりに答えは見つかった。
『人生最後の瞬間に聴きたい曲』 それは、、、

『翔べ!ガンダム』

やっぱりこれだろうと思う。

正直、ここ数年好きな歌手の人はいる
女性で、昨日が誕生日で20歳になった人なのだが
とてもやわらかく、優しい歌声の方だ。
最近の喉の奥で音をこねくり回すような歌い方ではなくて
本当に優しくて真っ直ぐなけがれを知らない歌声なのだ。
仕込みや買出しのときはその人の曲を聴いて和ませてもらっている。
死ぬ時は、その人の曲聴きながら、と思うのだが
でも、それは僕個人。

僕はもう僕ではなく
マスターである僕が僕なのだと思う。
だからやっぱり
『翔べ!ガンダム』
これでいいと思う。
僕は死ぬまでマスターだろうし
死ぬまでマスターであり続けたいと願う。
たぶんそれが、自分でも気付かなかった本当の自分。

『死ぬときまでガンダムかw マスターらしいねwww』

そう笑ってもらえればそれでいいじゃないかw
自分なりには天晴れな幕引きである。
皆が僕がガンダム好きだと思っているのだから
そのままの僕で逝こうと思うよ。

余談ではあるのですが
なにげに『翔べ!ガンダム』をwikiってみると
作詞は井荻麟さん。
実はこの人は、ガンダムの産みの親であり総監督の
富野由悠季さん本人です。
異端児と呼ばれて、喧嘩しまくって、皆殺しの富野と呼ばれて、
それまでのアニメの常識をぶっ壊したガンコなおっさんです。
我を通して打ち切られたアニメも結構あります。
(現に後の伝説的となるファーストガンダムも実は打ち切りです)

誰も通った事ない道を行くやつを
人は馬鹿だと罵ったり
後ろ指さしたり
でも、この人が歩いた後には
高速道路より太い道ができました。
この人が喧嘩して後ろ指さされて道をつくらなかったら
今の日本のアニメはないです。
そしてこの人が監督をしているガンダムシリーズの
テレビ版、映画版を含めて主題歌の9割以上
自分で作詞しています。
凄いこだわりですね

僕に言い換えると
『俺の作る料理はこうでなくてはならない!』
という確固としたビジョンと信念があり
料理だけではなく
皿からパンから自分で焼いちゃった、、
みたいな感じですね

うん
なんか共感できてしまいます。
というか、尊敬に近いのかも知れません。

偶然たまたま、のりと勢いと現状に流されての選曲だったのですが
こういう人が作詞した曲を選んだってのは
僕らしくていいのかもね
  
 
 
次、先輩とけい子さんが店に来るときは
2人が選ぶ人生最後の曲について話に花をさかせつつ
楽しいお酒を飲みたいものです。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

2011.06.01