ダイロクでおしゃべり 第3回

お相手/呉英哲(オ・ヨンチョル)校長先生
文・写真/鎌田浩宮
一部テープ起こし/土井達夫

 

2019年11月16日(土)に開催された、
東京朝鮮第六幼初級学校の公開授業。
1945年の創立以来、初めての試みだったそうです。
結果は、大成功。パチパチパチ!

(その時の感想、こちらに書きました)

その時に感じたのは、少人数、開放的。
規制やシステムに、とらわれていない。
日本の学校にとっても、学ぶところがあるなあ。

そこで、再び行ってきました。
校長先生の呉英哲さんが、
たくさんお話しして下さいました。

そんなお話を、
私たちがママ友へおしゃべりするように、
あんまり難しくなく、
カジュアルに伝えられたら
と、記事を作ってみました。

その連載は、第1回第2回と続きまして。
今回は、第3回です。
どうぞ、お読み下さい!

 

 

ご近所にあるよ!朝鮮の施設。

 

僕の友人は高校生の頃、朝鮮学校と交流する機会があったそうなんです。一方、僕は51歳で初めて朝鮮学校と交流を持たせていただきましたが、遅い!なぜもっと早くしなかったのか!自分を恥じています。僕の住む世田谷区だと、1番近い朝鮮学校はこちらになりますでしょうか?

そうですね…ただ、かつては世田谷区に第八があったんですよ。

編集部注:東京朝鮮第八初級学校は、世田谷区太子堂1…現在の世田谷区立三宿中学校隣にありましたが、2003年に閉校となり、この第六幼初級学校と統合。現在はマンションが建っています。

 

えっ?僕の家から20分ほどにあったんですね…。なんで知らなかったんだろう?学校同士の交流もなかったしなあ。猛省します。

7月の納涼祭と、10月の交流祭では、地域の方がフラダンス、太鼓、琴などを披露して下さいます。屋台風のお店も出て、お酒も食べ物もありますよ。

 

2019年7月に行われた、納涼祭。夜に集まってお楽しみ会をやるのって、子供もコーフンするんですよね。

 

2019年10月に行われた、交流祭。エスニック料理好きの人にも、たまらんものがある!

 

誰でも参加できる!納涼祭に交流祭。

 

運動会は地域のお祭りとしての要素があって、お酒やお弁当を広げながらやりますよ。学芸会は、地域の会館を借りて行います。

日本の学校も、そんな感じでオープンにできればいいのになあ。セキュリティーが厳しいから、僕がフラッと立ち寄れません。

私たちの行事では、入口に父兄は配置するけれど、不審者などのトラブルはありませんね。長年にわたる積み重ねで、地域とうまくやっているからだと思うんです。

行事などで、お手伝いできることがあれば言って下さいね!

確かに、来ていただくのもいいですが、何かを一緒にやるというのもいいですね!学校にもちょくちょく来ていただいて、発信していただければ嬉しいですよ。

遠足も、日本の学校と同じで、いろんな所に行きますよ。葛西臨海公園や、アスレチックに行ったり。キャンプにも行きます。社会科見学もあるし、ミュージカルを観に行ったり。修学旅行は、近畿ですね。朝鮮のルーツとなるエリアがたくさんあるので。

 

 

どんな感じ?授業!お昼ごはん!

 

自治体から給食の補助が出ていないので、普段はお弁当なんですが、学期に1回ほどオモニの作るお昼ごはんがありますよ。オモニの会がやってくれる、もちつきもあります。

校庭も、広ければ広いほどいいけれど、しっかりとした施設があるので。

確かにこうして拝見すると、1学年1クラスで、10人前後ですしね。

体育の授業では、ボールを使うもの…バレーボールやバスケットボール、鉄棒を使ったり。部活動のサッカーは、日本のリーグに入っています。

音楽室には、カヤグム(琴)が置いてありましたね。あの音色、好きなんですよ。「源氏物語」という映画で、大好きな細野晴臣さんが音楽を担当していたんですが、敢えて日本の琴ではなく、カヤグムを使ってて…そこがいいんですよね。

 

1987年に公開された「源氏物語」。同じスタッフで作られた「銀河鉄道の夜」に続き、鋪野さんが音楽を。いいですぞ!

 

音楽、図工、理科や算数。日本語も朝鮮語も!

 

チャンゴ(太鼓)やプク(太鼓)とかもありますし。

サムルノリも大好きです!そういった民族の音楽も、時間をさいて勉強するんですか?

そうですね、音楽の授業も多様なんですよ。歌も歌うし、一般的な鍵盤ハーモニカもやりますよ。そういう音楽的な指導すると同時に、民族の音楽も学びます。また部活動では、朝鮮の民謡も習うし、日本で作られた歌も習うし、英語の歌を朝鮮語に訳して歌ったり。

カリキュラムは一杯ですよ。時間数は、決定的に多いと思います。日本の小学校で習うものに加えて、朝鮮にまつわるものを勉強するわけですから。

朝鮮語の国語の授業では、朝鮮の昔の文学も勉強します。朝鮮の文学を、日本語に訳したり。朝鮮の歴史も習います。理科・算数の授業が少しちょっと多いかな?算数に力を入れてやっているので。図工の時間も、単純に絵を描くだけではなく、朝鮮の技法を使ったりします。

 

これ!チャンゴ。この他、中国のドラに似たケンガリなども、いい音出しますぞ。

 

バイリンガルを生かした将来も。

 

将来的には、バイリンガルを生かした職業に就く子もいらっしゃるのですか?

いますね、通訳をやっている子もいるし。基本的に日本語と朝鮮語の通訳はできる。それともう一つに、この社会に繋げていかなくてはいかない。そういう意識があるので、先生になったりとか、地域のコミュニティーを引き継いで仕事をしてみたり。昔だったら、飲食業をやるのか、会社員か、自営業か…。今は違いますよね。スポーツ界もそうですし。いろんな形で活躍の場が広がっているのは事実ですし。

逆に今でも職業差別は、ありますか?

無い事はないと思いますけど。でも、今って実力社会じゃないですか。逆に朝鮮の子が重宝される。この事が大事なんです。自己発言力があるし。バイタリティーにあふれている。生きていく力が強い。

そういう形で日本社会で活躍されている方も多いですよね。この何年間で、全然、変わってますよね。僕の時代だったら、朝鮮人だけという社会だった。今はいろんな門も開かれて、土台もできていて、高校でもスポーツなどいろんな大会に出られるとか。そういう過程で、子供達の意識が変わっていって。

ただ、日本社会では、学歴社会という強い部分がありますね。ですが、朝鮮高校を出て、朝鮮大学を出て、いろんな形で分野で働いているたくさんいますし。そういう部分では、多様になってきたのかな。だけど職業に対しての、就業に対しての障壁は、ないとは言えないと思います。

 

 

お金よりも、支援してほしいことが。

 

支援してほしいことはありますか?

高校無償化からの除外など、経済的な問題も抱えてはいるんですが、それは…頑張ろうとすれば頑張っていける部分があります。そういったお金というよりも、権利の部分ですね。権利は、子供たちに平等にあるはずじゃないですか。そこが1番引っかかるんです。

そうですよ。僕が公開授業で最初に感じた事です。この子たちは、国籍の概念なんて、知る由もない。国を選んで生まれたわけじゃない。そんな子供たちに、差異を、差別を与えていいはずがないんです。

一方大人に対しても、朝鮮という国や組織の中の人々を、十把一絡げにして差別するなんて、とんでもない。その国や組織の中には、豊かな個人がいる。いろんな考え方の人がいて、一生懸命生きています。

日本の社会にも支えていただいています。区の行政の方々も、ご理解いただいている方はたくさんいます。ただその方たちも、上からの判断には従わざるを得ないので…。そう考えると、差別的な行為って、ごく一部の心ない方によるものなんですよ。

大きく取り上げられがちなんですけど、、SNSでの差別発言だって、実は1人が複数のアカウントを使ってたりしますもの。

だから私達も発信していきます。朝鮮学校が地域にあって、いいことってたくさんあるはずなんですよね。理解し合いながら、歩み寄りながら。そんなことを、日本の方々に手伝っていただきたいなと思っています。地域からの積み上げをやっていければ、絶対にウィンウィンになると思います。

 

 

本の募集をします!

 

エプスタインズでも、何かできないか。
考えてみました。
まずはお金に頼らず、気軽にできるものは、ないかなあ?

そこで、本とCD・DVD・ブルーレイディスクを集めて、ダイロクに寄贈させていただけたらと思っています。
2歳から12歳まで向けの本や、童謡などのCD、幼児や子供向けのDVD・ブルーレイをお持ちの方、お気軽にこちらのメールアドレスまでご連絡下さい。
info☆epstein-s.net
(☆マークを@に変えて下さい)

その際、本のタイトルや内容、冊数を教えて下さいね。
図書カードやクオカード、各種ギフト券でもオッケーです。
そのうえで、発送先をお伝えします。
(ダイロクへ直接送らないように!エプスタインズでまとめてから送りますので…)

ただし…子供たちが傷つかないよう、汚れやシミ、黄ばみ、破れのないもの。
見た目としては、新品または新品同様のものを集めたいと思います。

以前、途上国の子供たちへ届ける衣服やおもちゃなどを募った際、ボランティアの方が「使い古しの物は、子供たちの心も傷つきます」と言ってたんです。
確かに、僕がその立場だったら、やはりシミのついたパンツやシャツ、壊れたところのあるおもちゃは、嫌だと思ったんですね。

なので今回は、そういったものを省かせてもらい、新品ないし新品同様のものを集めようと思います。
ぜひ、ご連絡をお待ちしています!

 


2020.02.23