キャマダの、ジデン。㊺新宿高校入学

鎌田浩宮・著

入学式。

なんつったって、
制服を着て
出席しなくったっていいんだ。
坂本龍一さんたちが、
全共闘運動で、
制服制帽を
なくしちゃったんだから。
15歳のキャマダは、
コーフンしていた。

ただ、僕以外の新入生は
ほぼ100%、
標準服と呼ばれる
制服代わりの服を着ていた。
男子は、黒の詰襟。
女子は…セーラー服か?忘れた。
せっかく自由を得たのに、
皆、ダサいなあと思った。

生徒会室へ行った。
坂本さんの痕跡はなかった。
よく考えれば当たり前だった。
坂本さんたちは、
学校側に組みする生徒会役員じゃなくって
全共闘だったんだもんね。

図書室へ行った。
坂本さんが読んでいそうな
本を探した。
あった!
確か哲学の本だったと思う。
貸出カードの署名欄に、
坂本さんの自筆があった。

卒業アルバムも
見つけちゃったもんね。
七三分けや坊主頭が多い中、
坂本さんは、
坊ちゃん刈りというか、
いや、初期のビートルズのような
当時で言う
「長髪」
の類の髪形をしていた。

音楽室へも行ったと思う。
だけど、
そこで悦に浸ってピアノを弾いたり…
頬ずりなんかしたのかも知れないけれど
それよりも興味津々だったのは
美術室だった。

当時の美術の先生が
とても理解力のある先生で
坂本さんたちはその先生と一緒に
美術準備室と言われる先生の部屋で
酒盛りをしていたそうなのだ。
もちろん、
未成年だ。
そんな事が許される
いわゆるバンカラな時代。

ここか…。
ここが、自由の根城だ。
愛おしくてたまらなくなった。

前述の通り
僕は小学生の頃から絵が得意で
中学の頃からグラフィックデザインに
興味を持ち始めたのもあり
即、美術部に入部した。

僕らの頃の美術部と言うと
女子も入部しないような
人気のない部活動の
代表みたいなものだった。

けれど、
幸運なことに
1つ上の上級生に
とてもユニークな男子が多く
この生意気で自意識過剰な僕を
ずっと優しく面倒を見てくれたのだった。

そして、
中学の学校新聞の
つらく悲しい思いから
新聞部にも入部した。
今度こそ、
書きたいことを書き
自由に生きるのだ。

新聞部も同じく
人気のない代表格だった。
上級生は
2年生の女子が
2人しかいなかった。
しかし彼女達も
鼻の青くって面倒臭い僕を
気遣ってくれたのだった。

 

当時の事を知っている先生に
尻尾を振る犬のようについて回り
坂本さんの事を訊きまくった。

当たり前っちゃあ当たり前なんだが
坂本さんは
すこぶる評判が悪かった。
そりゃあそうだ。
教師と真正面から
対立してたんだから。

その中に
気になる話があった。

「坂本は男尊女卑がひどくてな。女性蔑視の発言も多かったんだぞ」

意外だった。
あの先進的で
非封建的な坂本さんが?


2014.08.27