キャマダの、ジデン。㊴城南学習指導協会

鎌田浩宮・著

話を、また昔に戻しますね。

僕は小学6年から、
近くの塾なんぞに通い始めました。

三軒茶屋のビンボー連中でも通えるほどの
安~い授業料でした。

名物先生だらけ!
っつーか、名物先生しか、いない。

均一化された学校の先生より、
よほど個性的で
ある種、学校よりも、
学校らしかった。

その名も、城南学習指導協会。

フツーは、黒板に平行して
机が並んでいるもんだが
生徒の数が多すぎて
両端の壁際の側面にも机を配置。

その席の子たちは、
90度首を傾けて
授業を受けるのだ。

建物も古かったなあ。
そこに詰め込むわ詰め込むわ
1クラス100人弱もいる。

完全に消防法には引っかかっており、
もし調査員が見たら、卒倒しただろう。

そん中でも、際立っていた
先生のことを書こう。

後藤先生。
担当は社会。

ピチ目のジーンズに
蛇柄ブーツ、
たまに、ストーンズの
ベロ出しTシャツを着てた。

中学2年までは
とても優しく
笑わせて
楽しませて
和気あいあいと授業を進めるのだが
受験期となる中学3年になると
先生は豹変するのである。

「革命だよ!
革命しかないんだよ!
全てぶっ壊すんだよ!」
とかよく叫んでいたよーな記憶がある。
でも、一応進学塾なんで
「高校に落ちたら死ぬんだよお前ら!」
とか無茶苦茶なことを言って
布団たたきで黒板をバンバン叩いてた。

後藤先生、
「こんなもん、ただの紙なんだよ!紙!」
って千円札燃やしてたよなあ。

「俺は赤じゃなくて黒なんだよ!」
とも言ってた。
そう、
アナーキストなんだ。

「俺は先生になる前、
自衛隊に入ろうと思ったんだよ。」

えっ??
逆じゃん!

「入って、中からぶっ壊そうと思ったんだよ!」

スペペ!

「今度の日曜、弁当持って、来い。
12時間ぶっ通しで、公民の授業をやる。
この12時間で、中学3年間分の公民、全部叩き込んでやる」

この1日だけで公民を終わらせ
残り1年をかけて、
地理と歴史をやった。

日本史のカセットテープを作って
皆に配ってくれるんだが、
合間に、ストーンズの
「ストリート・ファイティング・マン」
や、ジョン・レノンの
「マインド・ゲームス」
が入っていて
歓喜しながら聞いたものよお。

職員室へ遊びに行くと
「でもな、鎌田、これからはこれだよ!」
と言って自慢げに見せてくれたのが
新発売のゲルニカ
(戸川純と上野耕路による唯一無二のユニット)
のアルバム
『改造への躍動』
だった!

彼は、メッセージソングだけに
重きを置いていたわけじゃあないのね。
テクノポップだもん、これ。
もー、泣きながら喜んだね。

先生、俺たちが卒業した後、少しして
クビになったとか、ならないとか。
とにかく、城南から
姿を消していた。
残念だぜ!

今、どこで何をしているのか、
何を「ぶっ壊し」ているのか。
会いたいなあ…。


2013.08.26