第三夜:「ノーショウするなら金をくれっ!」

diary_003

あああああ、腹が立つ! 舐めるなと言いたい!
電話よこせと言いたい! いや、電話とかの問題じゃない!
この怒りはタイトル通りです。 あ、「ノーショウ」とはNo Showです。
予約しといて客が連絡もナシにやって来ない事を言います。
無断不泊です!
あああああ、食材どうすんだよ・・・。
今年二度目だぞ・・・今回量多いぞ・・・。
おい、デブ!(※新人の板前)
明日のマカナイが豪勢になるとか喜んでんじゃねえ!
ああ、誰かノーショウ客を逮捕してよ・・・。
ああ、イケメンの板前ウチに来てよ・・・。

すみません、いろいろ取り乱しました。
どんなお仕事でも騒動やストレスはあるものでしょうが、接客商売での
怒りはなんともやり場のないものが多いです。 あ、ノーショウは別です。
あれはもはや犯罪です!
よくない、よくないと思ってはみても、お客様のお怒りや不信、
悪気なくとも起こされる問題を前にすると、どうにも笑顔の
「裏」がスクスクと育ってしまいます。
昨日面接した新人仲居さん、採用する事にしました。
可愛らしく、性格の良さそうな子です。 それに若い! それが恨めしい!
私は今回こそ、その子を健全で裏表のない、お客様に愛される
最強の仲居に育てようと思います。
私の中ですか? ええ、綺麗な“悪の華”が咲いています。
バレてはいないと思います。
 
 
 『 私の青春は、暗黒の嵐にすぎなかった、
  ここかしこ、きららかに、木洩れ日は射したけれど。
  風、雷、驟雨に、荒らされて、・・・
  わが庭に、紅い実はろくに残っていない。
  もうすでに私は、湧くべき心の秋に触れた。
  とすれば、鋤と鍬を用いて、あらためて耕し直さねばならない。
  ここ、氾濫して、水で、墓のごとき大穴を穿たれたところを。
  そして、誰が知ろう。
  私の夢みる新たな花々が、砂浜のように洗われたこの土壌のなかに、
  精気をもたらす神秘な滋養分を見出すかを。
  ──おお、苦痛、おお、苦痛!
  時が、生を食む。 そして、われらの心を囓って血を失わせる
  あのおぼろなる敵が、成長して肥えるのだ!』

  (ボードレール「悪の華」より「敵」)
 
 
 

2010.08.04