第95話 第2章「答えにならない応え」の巻

 「イクスキューズミー

クッダ~イ ハバァ ガリガリクン プリーズ!

イッツ ベリー ホット イズネェ!」

 

「なんだよその最後の伊豆ねって?」

 

「ぶぅあ~か! イズント イット だよ! でしょ?みたいな感じ ユーアンダスタン?」

 

「そのワケわからないヘタッピな英語もどきでしゃべんのやめてくんないかな? 疲れる…」

 

「英語は日常的に使わないと覚えないんだよ ユーアンダスタン?」

 

「いまの前半全部日本語じゃん…」

 

英語の本を手に取り、いきなりハナウタを歌って誤摩化すカノジョ

 

「ヘイ ユー! ガリガリクン プリーズ! ユー ノー ワラアイミーン?」

 

「はいはい、何味がいいんだよ? 買い出しついでに買ってきてやるから」

 

「コーンポタージュに決まってんヂャン!」

 

「は?そんなんあるの?」

 

「イエス タカスクリニャンクールビズ」

 

「・・・。」 んだそれ?

 

まあいいや、相手にしてると疲れるから買い出しに行こう…

 

「おい、クリスいくぞ!」

 

しかし、犬っていう生き物は節操がないね

散歩とエサっていえば、シッポ振ってついてきやがる

ボクだろうがカノジョだろうがね

下手すりゃ他人にもついてっちゃうんじゃないかと思うよ

 

まあ、ウチのこんな太ったコーギーを連れてく奴はいないだろうけど

 

そういえばコイツ、クリスって何歳になるんだっけ?

カノジョと同棲する、遥か前からいるらしいし…

 

「なあ、クリスってそういえば今何歳なんだ?」

 

「イングリッシュ プリ~ズ!」

 

ウゼーな…

英語でなんていえばいいんだ?

 

「えっと、ハウオールド イズ ヒム?」こんな感じかな?

 

「トゥエルブ イヤーズ オールド」

 

12歳?結構年いってるな、人間でいう何歳だろう?

なんだか気になってネットで検索してみる

 

するとなになに?

64歳?

 

太って足短いからいつもノソってしてるんだと思ってたけど

結構、年いってんだな、コイツ

しかも、ネットの年齢表だと犬年齢15歳、

人間年齢で76歳までしか表記してないじゃん

てことは、長生きしても後2~3年ってことなのか?

 

おいおい、

てことはだ、カノジョがホントにロンドンに2年間

まあ、それ以上になるか以下で帰ってくるかは

コイツのことだからわからないけど

ヘタするといない間に他界しちゃうってこともあり得るワケだな…

 

そんなことになったら想像がつかないくらい恐ろしい

 

なにげにクールに溺愛してるからな

コイツ、クリスのこと

 

「ヘイヘイボーイ! プリーズ ガリガリ スーン ナズ ポッシブル! プリーズ!」

 

「ハイハイ、わかったよ、行ってきますよ。んじゃ行くぞクリス」

 

リードをつけて、外へ出た

なんだかいまさらクリスの年を知って、

おじいちゃんだからいたわってやろう、って気持ちになった

 

しかし、もう9月になったけどめちゃめちゃ暑い

天気予報では最高気温33℃っていってたもんな

 

「なあ、クリス。オマエって、ある意味俺より年上で、俺よりアイツと一緒にいたんだよな? なあ、この先俺らはどうなるんだ?」

 

するとクリスは、ほんの一瞬ボクの目を見て、

それから顔を振るわしながらくしゃみをした

 

答えにならないクリスなりの

“応え”を示してくれたのかもしれない

 

空が眩しい、とにかく蒸し暑い

そして、カノジョの渡英まで

あと3週間を切っていたことに気付いた

2012.09.06