第78話 第2章「とある雨の朝にて」の巻

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あー、雨か

お客さん少ないだろうな…

 

今日は朝から雨

サラリーマン時代のあるクライアントさんが言ってた

 

人は太陽の申し子、って

 

意味をはき違えてるかも知んないけど

なんだかわかる気がする

 

そんな、ブルーな気分の雨の朝

 

 

 

「いや~、いやな天気だね、いつものね」

 

リタイヤした初老の常連客

 

この雨でも来てくれる

 

なんだか、うれし涙だな

 

いつもはボクからはあまりしゃべりかけないけど

今日はちょっと話しかけてみた

 

「この雨なのに、ご来店いただいてありがとうございます」

 

すると

 

「なに、急にかしこまってるの?私はヒマだから、散歩してここに来るのが日課なんだよ」

 

「お伺いしてもいいですか? 人生っていうか、人って何のために生きてるんでしょうか?」

 

アタマで考えずに、勝手に口から飛び出した

 

すると

 

「ははは、それはお答えできませんな、こんな年の私ですらわからないからね」

 

そういって、老眼鏡越しに日経新聞を読み出した

 

 

 

「そうですよね」

 

ボクはそれだけいって

モーニングセットの準備を始める

 

はあ~

何故だか、ため息が出る朝だ

 

モーニングを食べ終わり

初老の常連客が支払いの時に500円を出しながらこういった

 

「今晩、店早めに閉めてウチで晩飯でも喰わないか?」

 

「え?」

 

「君は耳が遠い年でもないだろ?イエスかノーかだよ」

 

「あ、は、はい、いいんですか?」

 

「キミは、サラリーマンやってたんだろ? そんな受答えでよく勤まったね」

 

そういって、笑いながら

伝票の裏に住所ではなく、

わかりやすい地図を書いてくれた

 

佐藤宅…

 

そうなんだ、この方サトウさんっていうんだ、

知らなかった

 

 

「では、18時においでください。女房の手料理でおまちしてますよ。」

 

「そうそう、君の彼女は行方知れずだろうから、わんちゃんも一緒にね、ではまたあとで」

 

そういって、店を出て行った

 

「・・・。」

 

確かそういえば、

リタイアする前は上場企業の重役さんだって

カノジョが言ってたっけ?

 

なんだか、

ボクだ答えを出す前に

パキパキと、決められちゃったな

 

「おい、クリス!今日は早じまいして出かけるぞ!」

 

窓際で外を見つめていたクリスはボクに振り返り

ニヤッと笑った気がした

 

なんだか、

店を開けているのがイヤになったので

今日は急遽、休業にした

 

本日の売上、500円也

 

まあ、いっか

 

よくわからないボクの人生だ

なにをやったってね

 

 

 

2012.05.02