第59話「カノジョの鎌倉ライフ〜後編〜」

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なんだかこのままカノジョとの距離が遠くなって行く

そんな気がした

クリスとの長い散歩を終え

“カノジョのウチ”へと戻ると、

ソファーに寝転びカノジョは本を読んでいた

ボク達はまた、カノジョが入れてくれたカフェオレを飲み

他愛のない会話を交わし

“なんとなくの時間”を過ごした

いままでカノジョと経験したことのない空気感

「ボチボチ帰るね…」そう切り出したのはボクの方だった

するとカノジョは少しばかり、よそよそしく言った

「ふーんそう、夕飯は食べてかないの?」

「ああ、まだオナカすいてないし、こっから帰ると結構時間かかるしね」

カノジョはボクを執拗に引き留めることもなく

平然とした顔でボクを玄関先で見送ってくれた

「じゃあね」

「うん、じゃあね」

考え過ぎかもしれないが

またね、とはカノジョは言わなかった

帰りの電車の中、今日一日のことを振り返ってみる

ボクは何かを求め、カノジョはボクに何も求めてはいなかった

そんな気がする

心の中でボクはカノジョからの

“一緒に住もうよ”という言葉を期待していたハズだ

でも、カノジョから、その言葉は出なかった

しかも、あまりにもクールというか、期待はずれというか

正直なところ、寂しい気持ちでいっぱいだ

カノジョからの言葉を待つ自分が

なんだか、卑怯にも思えてくる

“このままおわっちゃうのかな…”

電車の窓に映る遠くに東京の街のネオンが見えてきた頃

なんだか涙が出そうになった

なんとも情けない自分、

そう思えば思うほど

なおさら情けなくなる

ヤバイ、マジで涙腺が緩んできた

トーキョーに、

カノジョのいないあの部屋に戻りたくない

引き返してカノジョをギュッと抱きしめたい

次の駅で降りて戻るか?

でもカラダが動こうとしない

なんでだ?

どうしたらいいのかまったくわからない

そんなボクの気持ちなど関係無しに

電車はトーキョーへ向かう

もう多摩川を越えてしまった…

もうトーキョーだ…

カノジョのいないトーキョーだ…

2011.11.24