行く、東北へ。⑧相馬の商店街

取材/写真/文・鎌田浩宮

津波、
来なかった
ところ、
行こうよ。

 

前回はつらい写真が多かったので、今回は楽しくいきますど。

腹が減った、ひるめしにしよう。
杉ちゃんが、相馬で1番旨いラーメン屋に連れてってくれると言う。
雨も降ってきたし、ちょうどいいや。

雨、か。
放射能ベイベー!

麺龍というラーメン屋。
車が沢山停まってる。
食べログでも、評判、いいど。
っつーか、こんなのどかな田舎のめし屋にも、
食べログの魔の手は伸びておったのだ。
恐るべし。

http://r.tabelog.com/fukushima/A0704/A070403/7006618/

ここも海から4~5㎞ほど、国道6号線沿い。
この辺は少し高台なのか、津波の被害はないみたいです。

中はお客で満員。
店員さんも生き生きとしてる。
この旅で初めて、活気のある相馬に出会いました。

実は僕、年間でラーメンを160杯前後食べるほどの、
ラーメンキチガイなんです。
だから、このメニューを見ただけで、この店は大丈夫、と確信。
白味噌、赤味噌、黒味噌、醤油と4種類のラーメン。
スープによって麺の太さも替えている。
つけ麺もあるし、東京でも珍しい焼きワンタンなんてあってね。

というか、僕のラーメンキチガイを知っていて、
ここに連れて来てくれた杉ちゃんが嬉しい。
そして、予想通り、いや、予想以上に旨かったのです。

 

市内に、
6軒しか、
ないのに。
戦争、
です。

 

さて、雨かあ。
午後、どうしようかあ。
とりあえず相馬駅に向かってドライブしていると、雨も小降りになって。
車を停めて、駅前商店街を、散歩としゃれ込んだ。

と言っても、そんなに店がたくさんあるわけじゃない。
なのに、これにゃあ驚いた。

北京料理 天安門。
食べログの相馬市中華料理店ランキング、6店中、堂々の第2位であるが。

なんと、道を挟んで真向かいに、ライバル店。
中国食堂 鉄鍋餃子 李龍。
こちらはなんと、ランキング第1位。
こんなに閑散とした商店街で、なにゆえに真向かいなのだ。
何が起きてるのだ、相馬、けんかをやめて竹内まりや。

大戦争を避け、路地に入った。

 

ひなびた
商店街。
心、
ほぐす。

戦前からあるのかな?
趣きのある、古い家屋。

お味噌屋さんだ。
相馬市内に味噌蔵のある、山形屋の出している店舗だ。
ああ、心が一気に和む。

撮影、ヘタッピでごめんなさい。
入口扉越しに、パシリ。

買いたいなあ。
でも、放射能が気になる。
ああ、震災前に、この店に出逢っていたら。

路地を進んでいきます。
お。
見た事のない標識です。
しかも、くねっと曲がってて。
「シルバー思いやりゾーン」ですか。
車も人通りもほとんどないんですけどね。

あ。
これですか。
初めて見ます。
このゾーンの両脇にも、今は閉業してると思しき商店の看板が。

わあ。
ここで、いつまでおもちゃ、売られてたんだろう。
ここで、いつまで子供の歓声、聞こえてたんだろう。

路地をさらに進むと、お城があった跡のお堀に。
そこで、なんとも色あでやかな鳥、見つけました。

絵の額から、飛び出たかのように。

商店街に戻ると、こんなお洒落な喫茶店が。
男同士、杉ちゃんとは1度も、こういう所、入ったことなかったけど、
雨宿りがてら、積もる話をしようよ、と。

天井の高い、グランドピアノもある店内。
いろんな話をしたさあ。

辺見庸が
断れなかった。
よく
分かるんです。

 

とは言っても残念なことに、生活必需品は、
国道沿いの巨大スーパーになっちゃうんだよなあ。
そこへ寄って、晩ごはんの食材、買いました。

帰宅するとお父さんが、
「なんだ、玉ねぎなら、うちの畑で採れるのに」
ときた!
レース鳩、養鶏、庭木の剪定、釣り、料理等々、
どえらい多趣味のお父さん、原発事故以降も、
庭を畑にしていて、いろんな野菜を作っているのだ。

「放射能の影響が体に出てくるの、30年後らしいんだ。おら70歳だから、関係ねえんだ」
温和で飾らない、穏やかだけどお喋り好きなお父さんにそう言われると、
なんだかこちらまで気持ちがのんびりしてきちゃうのだ。

「なんだあいつ、放射能気にしたのかな」
息子も、乳児を持つ杉ちゃんの妹も皆で食事するので
ぜしぜし気にしてほしいんですが、ガハハ。

前にも書いたが、僕はこの旅で、
出された物は全て有難くいただこうと思ってます。

僕の好きな作家、辺見庸が書いた旅と食のルポルタージュ
「もの食う人びと」
では、事故直後のチェルノブイリ近辺まで行っている。
そこで彼は、取材した家族が作ってくれた
明らかに線量を超えている食事を、断らずに食べている。

彼はその後、ガンを患ったのだが。

 

その夜は、お父さん、杉ちゃん、2人の妹、彼女の赤ちゃん、僕、
6人で賑やかに夕食を迎えました。

赤ちゃんの世話で忙しい妹さん1人を除いて
皆が替わりばんこに、1品ずつ料理を作る。
僕はわかめと野菜のお手製ドレッシング・サラダを作りました。

「まるでキャンプみたいね」
「おい、呑みながら作れよ」
「お父さん、酒、今日も負けねえぞ」

杉ちゃんにギターを弾かせ、歌わせた。
多分家族に聴かせるのは初めてなんだろう。
だから敢えて声をかけた。
げ、お父さんも弾きだしたぞ禁じられた遊び。
どこまで多趣味なんだ、しかも上手いぞ。
僕も、浪が死んで以来、初めてギターを触り、人前で歌った。

ああ、今日も、呑みすぎだ…。

つづく・・・



2012.06.08