ドナルド・ダック・ダン

文/選曲・鎌田浩宮

黒人と白人が
一緒に何かやるだなんて、
信じられない時代
だったのさ。

 

Booker T. & the MG’s – Green Onions

ドナルド・ダン。
1963年に、あの栄光のスタックス・レコード専属のスタジオ・バンド、
ブッカー・T&ザ・MG’sに加入。

 

Stax Volt Tour of Norway 1967

ウィルソン・ピケット、
サム&デイブ、
オーティス・レディング、
等々スタックス所属アーティストのバックをバシバシ熱く務め、
全米や欧州をツアーで駆け巡る。

スタックス・ヴォルト・ツアーはすげえんだ。
スタックスのアーティスト、皆で世界中を回るんだ。
バックはもちろん、MG’s。

この映像を観てくれよ。
Sam&Dave が Hold on, I’m Comin’  で盛り上げ、
大トリはOtis Redding !

 

Otis Redding – Try a Little Tenderness

黒人の客も白人の客も、ダック・ダンのベースに揺れている!
ダック・ダンも、ノリにノッている!

 

The Blues Brothers – Shake a Tail Feather

70年代後半のディスコブーム。
黒人音楽は下らねえもんになっちまった。

でも、ジョン・ランディスって監督が、MG’sを集めて
サイキョーの映画を創ったんだ。

史上最高の音楽映画、
「ブルース・ブラザース」。

 

The Blues Brothers – Everybody Needs Somebody to Love

ドナルドはトレードマークのパイプをくわえ、
ソウルは死んでねえぜとベースはじいてる。

 

忌野清志郎 – トランジスタ・ラジオ

しかし、敬愛するジョン・ベル―シが死んじまって、
ブルース・ブラザースは終わっちまった。

それから時が経ち、日本で1番のソウルキチガイが、
MG’sとやりたいんだと言い出すなんて、
こりゃあ本物のキチガイだ。

「満員の武道館が盛り上がって、キヨシローはすごい人気者なんだって知ったよ」

ソウルの復活だ!

 

Green Onions – Booker T & The MGs in Soul Comes Home(Mississipi)

2003年4月30日と思われる。
スタックスを始め、メンフィスのミュージシャンが集められ
祝いのイヴェントが行なわれた。

 

Booker T.& the MG’s – Time is Tight

2009年3月19日のライヴ。

 

 

そして、2012年5月2日の
「忌野清志郎 ロックン・ロール・ショー」
に招かれた。
でも、出演したのはギターのスティーブ・クロッパーだけで
どうしてダックは出ないのかなあ、と思った。

 しかし、その後の日本でのライヴは

STAX! featuring
スティーヴ・クロッパー、ドナルド“ダック”ダン&エディ・フロイド

というタイトルで5日間、10ステージ全てをこなした。

でも、ダックは椅子に座って演奏することもあり、MCでも
「very sick」
と言ったそうだ。

5月12日、土曜日も2ステージをこなし、
都内のホテルに戻り、
ドナルド・ダック・ダンは70歳の生涯を終えた。

詳しい情報が入ってこないのだけど
睡眠中に息を引き取ったとも言われていて
苦しまずに済んだのであれば、何よりだ…と心から思う。

ミュージシャンはステージで死ねたら本望、
ってよく言うけれど、僕には本当のところは解らない。

長年の盟友、スティーブ・クロッパーがそばにいてくれて、
死ぬ間際まで、ベースをブンブンはじいて、
黒人も白人も日本人もブリブリ言わせてたのだ。

すごい人だ。
本当に、すごい人だ。

今まで、何百回となく
心から興奮させてくれ
ソウル・ミュージックの素晴らしさを伝えてくれて
ありがとうございました。

今頃、オーティスもウィルソンもアル・ジャクソンもベルーシも清志郎も
勢揃いで貴方を迎えているだろうか…。

 

 

Donald “Duck” Dunn
(November 24, 1941 – May 13, 2012)

国際的なベーシストとして知られるドナルド・ダック・ダンさん(70)が東京都港区のホテルの客室で死亡していたことが十三日、分かった。警視庁が死因を調べているが、事件性は薄いとみられる。
関係者によると、ドナルドさんは公演のため来日し、十三日に帰国する予定だった。米テネシー州メンフィス出身で、アヒルのように歩きながら演奏するスタイルからダックの愛称で呼ばれた。
「ブッカー・T&ザ・MGズ」のメンバーとして活動したほか、ソウル歌手の故オーティス・レディングのバックも務めた。
二〇〇九年五月に死去したロック歌手の忌野清志郎さんと共演したこともあった。
(東京新聞 2012年5月14日朝刊より)


2012.05.14