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ヤツのオデコに一文字くれろ!第17回「ピーター・バラカン」
「溝」:鎌田浩宮
彼のラジオって、至極シンプルなんですよね。
いい曲をかけて、いいお喋りがある。
それだけ。
そのお喋りの中には、最近観た映画の話があったり、時には反原発や戦争法案反対の話になったり。
聴かせてあげたい曲をかけて、喋りたい事を話す。
そんな彼が大好きなのだけれど、彼をもっと好きになった理由がある。
リスナーからのメールで
「某さんのライヴに行ったら、ピーターさんをお見かけしました」
というものが、ままある。
その類のメールを読むとと必ず、ピーターさんはこの言葉を添える。
「どうぞ、気軽に声をかけて下さいね」
と。
大体ユーメー人というのは、ファンから怖い目に遭った事も多いはずだ。
追いかけられたり、付きまとわれたり、プライバシーを妨げられたり、その挙句に逆恨みされ、嫌がらせを受けたり。
ピーターさんが政治的な発言をラジオですると、
「バカ外人」
と書き込まれたりするそうだ。
街を歩いていても、いつどんな目に遭うかは、分からない。
それでも彼は、気軽に声をかけてね、と笑顔を絶やさないのだ。
僕は全くの無名人だけれど、書く記事には署名を記すようにしたり、住んでいる街を開けっぴろげに公言したり、自分のプライバシーを風通しの良いものにしているのは、ピーターさんの影響が、ある。
ジョン・レノンがダゴダ・ハウスに住んでいる事は世界中の人が知っていて、結果彼は殺されてしまった。
それでもピーターさんは、信じているんである。
風通しの良い世の中が、存在出来うる事を。
人と人との関係には、なるべく、できれば、願う事ならば、溝がない方が、いいに決まってる。
愛すべきレコードには、溝があって、針を落とすものだけれど。
ヘイ!ピーター、今日もイカした曲を、かけておくれよ!
僕は中学生の頃、彼がYMOの海外マネージャーをしている頃から、彼の番組を観聴きするようになった。
「ポッパーズMTV」、眠い目こすりながら観てたなあ。
震災前から「バラカン・モーニング」を聴いていた。
当時の僕はリーマン・ショックで8年勤めた会社を辞めざるを得なくなり、転職した会社に馴染めずにいた。
そんな時の僕の心に、どれだけ彼の選曲が励みに、慰めになったか。
朝に聴くソウルは、美味いコーヒーの10倍のカンフル剤になる。
震災後も、もちろん聴いていた。
何が正しい情報か全く分からなかったこの国で、彼はなるべく正しい情報と意見の交通整理役を、ラジオの中で買って出ていた。
震災の影響もあり、僕の愛猫が死んだ。
毎日泣いていたその時にピーターさんが、同じく不幸せな死を遂げたエイミー・ワインハウスの「涙は独りでに乾く」をかけた。
それを聴き号泣する中で、僕はどれだけ心を慰められた事か。
ヘイ!ピーター、今日もイカした曲を、かけておくれよ!
2015.07.15