- 2022.03.07:受賞の声 第2回エプスタ随筆大賞
- 2022.02.24:大賞決定 第2回エプスタ随筆大賞
- 2022.02.20:賞品発表 第2回エプスタ随筆大賞
- 2022.01.25:応募作品#9 現場に来てまで本なんか読んでる馬鹿がいるか!
- 2022.01.23:応募作品#8 休業支援金、あるいは酸っぱい葡萄
- 2022.01.19:審査員発表 第2回エプスタ随筆大賞
- 2021.12.22:応募作品#7 連れ立って歩く
- 2021.12.08:応募作品#6 師走の地下鉄で、
- 2021.12.06:応募作品#5 「犬にとってリードとは何なのか」の変奏
- 2021.11.28:応募作品#3 犬にとってリードとは何なのか
サブ・コンテンツ
- 2022.04.28:[Radio] 平和は、この曲であろう。30日目 World Citizen
- 2022.04.26:[Epstein Talks about Futenma and Fukushima] 震度6強だったので相馬へ行きました 最終日
- 2022.04.23:[Radio] 平和は、この曲であろう。29日目 スマイル
- 2022.04.22:[Epstein Talks about Futenma and Fukushima] 震度6強だったので相馬へ行きました 8日目
- 2022.04.21:[Radio] 平和は、この曲であろう。28日目 世界中が I love you
応募作品#4 2時間35分
ブログのくせに長めの事業でこざかしい
エプスタインズ創刊11周年記念特別事業
「第2回エプスタ随筆大賞」
スズキスキーが提案した
9つのテーマから選び
随筆を、書く。
大賞決定前に、応募作品を1作ずつ掲載していきます。
2作目は、鎌田浩宮による随筆の2本目だー。
読めばいいとも!

題・2時間35分
著・鎌田浩宮
テーマ・ 始めるのに遅すぎることなんかない・遅すぎるのに始めることなんかない
ほぼ全てを、西友で買い物しておりました。なぜにあんなに安いのか。いとこの広実くんも、西友じゃないと暮らせないと言っていた。引越して、西友から遠くなって困ると嘆いていた。
西友の4階で、たわしを探していた。店員さんに場所を訊くと、何に使うの?と聞かれる。若干タメ口だったかも知れない。風呂の浴槽掃除に使うと答えると、今どきたわしは使わないと返された。
親切なのか?
その日はムキになってたわしを買ってしまったが、後日スポンジを買い直した。
そのような日々を送り続け、西友とは切っても切れない間柄になっていたのだが、東京新聞を読んで、無農薬野菜に切り替えるべきだと感じた。
欧米では農薬に対する危機感が強まり、規制が強くなっている。が、日本では逆に緩和されており、欧米の10倍にもなる強い農薬を使える状態。しかも、欧米で使用禁止になった農薬を、現在日本が輸入している。
別に苦労して長生きをしようとは思わないが、害虫が死んじまうくらいに強い農薬なんだから、体には良くないだろう、敢えてそんなものを摂取する理由はないと思えたのだ。

三軒茶屋で、無農薬・有機栽培野菜に力を入れている八百屋さんを見つけた。佐藤青果。現在で3代目にもなる古いお店なのだが、ここ10年前後で無農薬・有機栽培ものの販売に切り替えたそうだ。
若い店長や女将さん、ご主人とのお喋りも、思いのほか楽しい。行きつけの店を尋ね合い、2回目のワクチン接種は怖いぞと脅し合い、撮影で来たじゅん散歩、高田純次の実態を聞く。30分話す。
アメリカのスーパーだと、客とレジ打ちの方との長話は珍しくないらしい。 だが、西友がいくら優れたスーパーマーケットではあれど、いくら何でもレジ打ちの方と長話するわけにはいかない。
最も愛すべき映画「幸福の黄色いハンカチ」を観直してほしい。凛々しい高倉健さんは、刑務所を出所後、スーパーで買い物をする。レジを打っているのは、倍賞千恵子さんだ。もう、恋しか生まれない。恋をしないわけがない。恋をしない者は愚かでしかない。

こんなに麗しい人が店内にいたら、30分話すだろ!
人類の歴史は長い。そのうち日本でも、長話できるレジ打ちのスーパーが大量に現れ、恋が生まれ結婚したりしなかったり、幸福のハンカチがバタバタしたりしなかったりは間違いないだろう。しかし、気の短い僕は待っていられない。
三軒茶屋で最も古いと思われる、下の谷商店街。古さゆえ、シャッター街になりつつある。その中にポツンと佇む一軒家、銭場(せんば)商店。僕より少し年上の男性が、独りでコーヒー豆を炒って売っている。
西友の豆に、飽きていた。中に入る。
銭場商店の斜向かいにある銭湯では、開店の1時間も前から爺が集まりお喋りを楽しんでる。家に閉じこもって1日中BSの2時間ドラマ観てるより、ずっといいだろう。そんなどうでもいい話で、あっという間に30分。キャマダ、お前銭湯前の爺と一緒だよ!
西友でたわしについて30分話せただろうか?いや、いくら懐の深い西友でも、それは難しい。それにしても三茶は銭湯が多い。どこも繁盛している。若い子も浸かりに来ている。なぜなのか?その疑問、後半で答えを発表しますぞ!

佐藤青果。銭場商店。これで1時間経過している。その他、図書カウンター三軒茶屋を訪れる。
世田谷区内にある図書館の蔵書・雑誌・CDなどを予約すると、取り寄せてくれる施設だ。区内の福祉作業所で作ったクッキーや石鹸も売っていて、借りる本が届いてなくとも、寄る。稀にせんべいも売っていて、これがとっても旨い。昼の3時にクッキーを頬張ると、空腹が収まる。夜まで仕事を頑張れる。長居はできないけれど、たまに職員さんとお喋り。5分。
クッキーは5枚前後で100円から200円する。銭場のコーヒー豆は、100gで800円~。佐藤青果であれば、レタスは300円くらいかな。

そのことを友達に話したら、高くてとても買えないと言う。そうかなあ?それにしては、財布の減りが早い訳でもないのだ。 念のため書くと、自営業なので少し良い月もあるけれど、おしなべて50代の平均月収よりすこぶる低い。
「レット・イット・ビー・スペシャル・エディション」「ラプソディーネイキッド・デラックスエディション」「 オール・シングス・マスト・パス50周年記念スーパー・デラックス・エディション」 など、全部買う。キヨシローの「KING Deluxe Edition」は通常版と限定版があり、全部買う。こうした出費の方が、遥かに鎌田経済を圧迫する。一方、コーヒー豆が数百円高くなったとしても、1ヵ月の鎌田収支はそれほど左右されない。
そもそも工場での大量生産、何十枚も入った旨いクッキーが1袋で100円だの200円だの。同じ味と品質を手作業で行えば、5枚で100円は妥当なんです。それ以上安く売ったら、赤字になります。工場の方がイレギュラー、特異な生産方法なのだ。
話が逸れている。今回は買い物に2時間35分かかる随筆でしょ!
イタリアだったか、スペインだったか、ポルトガルだったか。午前中買い物に出かけ、あっという間に半日経ってしまうという話を聞いた。のん気すぎる。呑気大将。そんな馬鹿なと思った。しかし今や、自分がそのようになっている。
酒も、西友で買うのを止めてみる。学生時代にアルバイトで働いていた、唐木屋。昭和元年創業。関東大震災の際は配給所だったという、三茶で最も古い店の1つだ。
僕が働いていた32年前は一般的な酒屋だったが、法律が改悪され、スーパーでも酒類販売できるようになると、至る酒屋が閉店に追い込まれた。唐木屋は全国の地酒と国内外クラフトビールに特化した酒屋へくら替えし、今も頑張っている。

唐木屋の思い出を書くと長文になるので(既になっとる)、つい先日のことだけ書きます。店内の有料試飲で、20種ほどもある生樽から選んでクラフト生ビールを吞んでいると、なぜ三茶には銭湯が多く残っているのか、 隣で呑んでいる女性が教えてくれたのだ。
目から鱗。45年も住んでいるのに、なぜ気づかなかったか。物凄い分析力を持つ女性と、1時間語り合う。さあ、なぜ三茶には銭湯が残っているのか?答えは後半で書きますぞ(まだ後半じゃないのか)!
先日の早朝、衆院選の選挙へ行った。投票所は、母校・三軒茶屋小学校だ。数十年ぶりに、通学路を歩いてみる。あの道もこの道も覚えていない。どんどん歩いていくと、豆腐屋を見つけた。 信濃屋(坂本商店)。45年も住んでいるのに、なぜ気づかなかったか。
10回ほどごめん下さいと言うと、ようやく女将が出てきた。綿豆腐・がんもどき・油揚げ・惣菜を2種類買う。がんもと厚揚げの煮たの・おからの炊いたの。

すみません。45年も住んでいるのに、ここにお豆腐屋さんがあったの、気づきませんでした。三茶小を卒業して、ずっとここに住んでいるんです。
あら、うちの倅も三茶小よ。あなた何年?
申(さる)です。1968年生まれです。ビートルズがホワイトアルバムを出した年です。(ビートルズの下りは心の中で話しただけ)
倅と近いわねえ。
そうですか!鎌田と言います。
あら、あの有名な 鎌田君?可愛かったわよねえ! 覚えてるわよ!
それ、うちの弟です。子役をやってました。
うちの次男が同じクラスよ!あらあ、懐かしいわねえ!今朝は嬉しいわあ。
20分話した。後日も買いに行った。休みでフラれる日も多い。ひじき。ぜんまい。こんにゃく。きんぴらごぼう。惣菜はどれも同じ味付け。砂糖とみりんと醤油。あまじょっぱい。昔の味。どうもこうも旨い。
あれ?待てよ。よくよく思い出してみると、あそこにも豆腐屋あったよなあ。あそこにもあったよなあ。銭湯は徒歩15分圏内で5軒もあるが、豆腐屋は信濃屋以外に3軒もある。僕は浮気することに決めた。
上馬2丁目の染谷商店。旨い。 30年前に開店と教えてくれ、よせばいいのに、僕の方が年上だと、余計な自慢で返してしまった。海より深く反省。
太子堂5丁目の伊勢屋。倅の代で4代目だそうだ。初めてなのに打ち解けてくれた女将さんと、長話。5分。倅が手伝っているせいか、どれもかなり旨い。
太子堂2丁目、西川屋。60年ほど前からやっている。豆腐ハンバーグなど若者向けも含め、惣菜も充実。人がちょっと並ぶ時も。70代か80代の女将さんと話す。
すぐそこに、長崎屋ってありましたよね。
あらあ、よく覚えてるわねえ!今はマンションよ。
僕の伯父が三茶でデザイナーをやってて、長崎屋の垂れ幕を書いてたんです。大売出しとか、年末大セールとか。
あらあ、そうなの?懐かしいわあ!
伯父はもう70代で、デザイナーは辞めちゃったんですけど。でも、垂れ幕を覚えてくれている人がいて、本当に嬉しいです。伯父はビートルズが大好きで、ホワイトアルバム(ビートルズの下りは心の中で)
5分。本当は、その続きを喋りたかった。伯父の修おじさんには、大変お世話になったこと。何十年も頑張っていたが、PCを導入したDTPの波はすごかった。還暦に近い伯父が、イチからPCを覚えるのは全く困難だったこと。写植オペレーターとして雇っていた僕の母に退職金を出し、店を畳んだこと。その後は警備員として働き、今はそれも辞め、家でのんびりしていること。長崎屋の垂れ幕の仕事は、当初デザインの仕事が全く軌道に乗らず、何とか見つけた最初の仕事であったこと。そこから軌道に乗ったこと。
女将さん、三茶ってどうしてこんなに銭湯が残っているか、ご存じですか?それはですねえ、ご説明差し上げますと…エッヘン!
始めるのに遅すぎることなんかない。遅すぎるのに始めることなんかない。話は尽きない。新記録が出た。素晴らしい夜さ。言葉を忘れそうだよ。
もう、何も始まらなくていい。ぐるぐると、買い物に2時間35分で、それでいい。
エプスタインズ創刊11周年記念特別事業
第2回エプスタ随筆大賞
応募締切:締め切りましたよ~
ジャンル:随筆
形式:文字、点字
枚数:制限なし
賞品:福島県相馬市の新米及び新米酒
審査員:アガタシネマ miyako/Tamasudare
発表:2022年2月22日
応募先:hironomiya.kamada☆gmail.com ☆を@に変換して送信して下さい
郵送は〒154-0024 東京都世田谷区三軒茶屋2-20-13-410 鎌田浩宮まで
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募集・第2回エプスタ随筆大賞
審査員発表
応募作品#1 胡桃割られ人形 名無シー
応募作品#2 想像披露宴 鎌田浩宮
応募作品#3 犬にとってリードとは何なのか 名無シー
応募作品#4 2時間35分 鎌田浩宮
応募作品#5 「犬にとってリードとは何なのか」の変奏 名無シー
応募作品#6 師走の地下鉄で、 表参道が、好き
応募作品#7 連れ立って歩く もげお
応募作品#8 休業支援金、あるいは酸っぱい葡萄 加藤匡通
応募作品#9 現場に来てまで本なんか読んでる馬鹿がいるか! 加藤匡通
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