応募作品#2 想像披露宴

ブログのくせに長めの事業でこざかしい
エプスタインズ創刊11周年記念特別事業
「第2回エプスタ随筆大賞」

スズキスキーが提案した
9つのテーマから選び
随筆を、書く。
大賞決定前に、応募作品を1作ずつ掲載していきます。


2作目は、鎌田浩宮による随筆です。

彼は、2020年に開催した
第1回エプスタ随筆大賞にて
作品「我が家の家電製品」で「裸の大賞
作品「ミラノの奇蹟」で「青大賞

を受賞しました。

あれから、1年。
彼は、どのような随筆を書いたのか。
読めばいいとも!

題・想像披露宴
著・鎌田浩宮
テーマ・ハラカミが聴こえる夜

僕は1978年以来ずっとYMOの大ファンで、3人のその後の活動を追い続けている。

1983年のYMO散開後、直ちに細野さんが立ち上げたFOEというユニットも大好き。2019年、東京で開催された大博覧会「細野観光」をタカツカアキオと訪れた際も「ムム!やっぱしFOEに関する展示が少ない!」と感じ入ることしばし。

当時、FOEのキャッチコピーに「想像だけなら、逮捕されない。」というものがあった。高校生、自意識過剰、周囲に壁を作りまくっていた僕はそのコピーに感激し「ですよね!ですよね細野さん!」とその青っ鼻をさらに漆黒へ染め続けることしばし。

小学6年時の「FROM TOKIO TO TOKYO」、中学3年時の「JAPAN TOUR」。YMOのライヴには、2回も行く事ができた。多くのファンは「ユキヒロ!」「教授!」と絶叫しているんだが、僕はそこに不満を感じずにいられない。ピンク・レディーであれば、ミーちゃんとケイちゃんの双方。YMOであれば、御三方を平たく愛する。それこそがファンなのだ。

なので僕は「ハリー!」と断続的に絶叫。細野さんに歓声を上げる小僧、少ないぞ。しかもハリーというニックネームを知っている小僧、皆無。

話がそれている。子供の頃熱狂していたピンク・レディーの事まで書いてしまった。今日の随筆は「想像」について沢山書くのだ。

僕は今なお、逮捕されない想像をたしなんでいる。53歳、初老。感覚も記憶もだだ下がっていく中で、何故か僕は結婚すると想像する事にした。

イカれたジンセーだった。湿気たチンピラのような僕に、惚れるような人は少なかった。反省は時既に遅く、独りばんめしをこさえ、広島東洋カープの試合を観戦する毎晩。しかし、ジンセーは分からない。ゲームセットして著しい僕にも運が巡り、結婚することになったのだ(と想像する)。



結婚か。僕の世代では、格式ばった披露宴を嫌い、パーティー形式にする友人も多かったな。良いパーティーばかりだった。しかし!ここは思い切りレンジを振り、披露宴をチョイス。ただし、パートナーが文金高島田のかつらをかぶるかかぶるまいか、それはお任せする。自由が何よりだ。

入場時、ほとんどの夫婦が音楽をかける。その多くがJ-POPという分野の曲ではなかろうか。そのようなものでは、祖母も祖父も心を和ませてはくれない。ジンセーとは、自分が何を訴えたいかではなく、他者がどう感じるか、なのだ!

であればここも格式ばって、琴や笙なんぞで雅楽を流そう。ただし、ひとひねりして訴える事を忘れやしない。ここは細野さんが作曲を担当した映画「源氏物語」のサウンドトラックにしよう。

細野さんが奏でた平安時代。ここで琴のように聴こえるのは、実は朝鮮のカヤグムだそうだ。しかも、チューニングを知らない細野さんは、アラブ音階で調弦して演奏したらしい。これはひとひねりしてる。祖母や祖父はどう感じるのか!

いかん。何が御三方を平たく愛すだ。細野さん一辺倒じゃないか。あと、母方も父方も全て、祖母と祖父はかなり前に他界しているぞ。

最も愛すべき映画「男はつらいよ」の終盤。さくらと博が結婚披露宴を開く。2人はJ-POPを流しただろうか。いや、雅楽さえも流れない。本来の披露宴は、音楽などかからないのではなかろうか。決まった。披露宴では、一切の音楽を流しません。音楽禁止。ただし、パートナーが異なる意見であれば、それはお任せする。自由が何よりだ。

料理は、福島は相馬の魚・米・野菜・果物・味噌などの調味料でこさえる。相馬産の肉はないと思うので、飯館牛などもいいだろう。相馬の地酒で乾杯どーん。

図書館で出力された紙の裏。東京ガスのご使用量のお知らせ。あっちこっちに、つらつらと書きだしてしまうぞ、誰を招待しようかリスト。名無シーも呼ぶぞ。女性の友人も沢山呼ぶ。友人が、間が空く時にひとりぽっちにならないよう、あいつを招待するのならあいつも招待する。

そねの母ちゃん、のんちゃん、和田先生も呼ぼう。りっちゃんは来てくれるだろうか。来てくれるなら、いまことタカツカさんとパコが話し相手になってくれるだろう。岩ちゃんの話をしてくれるだろう。

和夫ちゃんは生音くんとはるちゃん、麻子は実花ちゃんも連れてきてもらおう。親子で参加だ。サイコー。麻子の場合、のんちゃんも呼んでるから三世代で参加だ!

友(麻子の兄)とパートナーの3人で、千葉は浪花にある別荘へ行こう。車の中で、友が選んでくれたバッハのアルバムを聴く。着いたよ。そねと、正己さんと、浪に挨拶。 外房の魚と地酒で祝杯だ。あちらはどんな具合だい?こっちは色々大変だけど、遂に結婚したよ。いやあ、まさか結婚するとはねえ。はい、ありがとうございます。ちょっとだけ長生きしてみます。

スピーチは、最も古くからの僕を知っている、いまことかときんにお願いする。2人とは、三軒茶屋小学校3年2組で出会った。1976年から今日までの45年、遂に怒りは沸点。バカマダを糾弾してもらう。

親戚も全員呼ぶ(他界した人多いが)。いとこも全員呼ぶ。ただし、父は遊び人、女遊びもひどく、父方の親族に多額の借金をこさえたまま死んだので、僕も疎まれている。ババーン!ダークサイド・オブ・鎌田家。

ご安心下され。寅さんの父親も、遊び人だった。寅さんはグレたけれど、ちゃんと柴又に帰ってきたではありませんか。僕も既に初老爺、何のこれしきです。でもって、母のダークサイド(非道い人柄)についても、次回書くどー!

〆のスピーチは、母の兄である修おじさんにお願いする。僕にはビートルズを教えてくれ、いつも可愛がってくれた。修おじさんはグラフィックデザイナーだった。 写植オペレーターとして母を雇ってくれ、我が家は路頭に迷わずに済んだ。 高校の文化祭、僕が編集とデザインを担当したパンフレット。修おじさんに、全面的に関わってもらった。遂に、修おじさんと一緒に仕事できる喜び。たまらなかった。

過去に組んだいくつものバンド。メンバー全員に声をかけよう。しかし!ここでペンが止まった。初老53歳、名前を思い出せないメンバーがいるではないか!耄碌がひどすぎる。披露宴は中止だ。 久直がつぶやく。相変わらず馬鹿だなあ、鎌田は。

宴もたけなわ高輪プリンスホテル、そろそろしまいの時間になってしまった。本当は、気の利いた音楽であれば、かけてもよかっただろうか。パートナーは、どのような意見であろうか。

退場時に、レイ・ハラカミのような音楽を、少し流す。宴会場は、天との距離が近づいたかのような、穏やかな心持ちになる。




エプスタインズ創刊11周年記念特別事業
第2回エプスタ随筆大賞
応募締切:2021年11月23日(祝・火)
ジャンル:随筆
形式:文字、点字
枚数:制限なし
賞品:福島県相馬市の新米及び新米酒
選考委員:後日発表
発表:2021年12月25日(土)
応募先:info☆epstein-s.net ☆を@に変換して送信して下さい
郵送は〒154-0024 東京都世田谷区三軒茶屋2-20-13-410 鎌田浩宮まで

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2021.11.26