要キャプション。

和む!ウイグルの音楽 pt.4 ئۇيغۇر مۇزىكىسىنى ئاڭلاڭ

構成・文/名無シー・鎌田浩宮

 

 

قالتىس
ئۇيغۇر مۇزىكىسى

 

 

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エプスタインズ創刊10周年
記念事業第3弾
和む!ウイグルの音楽
ئۇيغۇر مۇزىكىسىنى ئاڭلاڭ

 

 

ウイグルの音楽を、聴いてみようじゃありませんか。
音楽で、ウイグルを訪ねてみようじゃありませんか。
東京芸大や博物館、ウイグル料理屋さんに寄り道しながら。
その道の大家に、話を聞きに行ったりして。
きっと、眩しい旅になるでしょう。
時間は、たっぷしありますよ。
さあ、一緒に出家しましょうぞ。

 

 

 

 

最初の手掛かりは、
図書館の倉庫に眠っていた、
下記2枚のCD。
ここからウイグルへ
浸っていくのだ。

 

キャラバンの調べ~ウイグルの器楽
1 ムシャーブラクムカーム
2 グンドゥパイ
3 カーデル・マルラン(マルラン公社幹部)
4 タシュワイ
5 ヤルー(恋人)
6 ダワンチェン(大板城)
7 ディハンラー・マディア(農民讃歌)
8 豊作
9 ウッシャーク・ムカーム 第一ダスタン
10 ラクダの鈴の音
11 カルワン(キャラバン)
12 ラーク・ムカーム テザ間奏曲

新疆ウイグル自治区歌舞団
新疆ウイグル自治区新玉区文工団(ホータン)

レワープ:ダウティ・アウティ
バラマン:バーキル・トゥルディ
アジェク:マハムティ・トルスン
ダップ:イミン・クルバン
1989年5月2日 キングレコード第1スタジオにて録音

 

 

 

オアシスの抒情~ウイグルの歌

1 タック・スーレイ(山水)
2 ヤルー・スイニン・ダルダン(恋人よ)(1)
3 ヤルー・スイニン・ダルダン(恋人よ)(2)
4 グリヤール
5 グレー・チスカン・ミニン・ヤレン(花を持つ恋人)
6 ティレック・ボスタン(生き生きとしたオアシス)
7 チャビアート・ムカームのチョンナグマン
8 白い泉
9 遥かなる道
10 トーガン・ジェル(ふるさと)
11 クォールケム・アルタイタウェ(美しきアルタイ山)

新疆ウイグル自治区歌舞団
新疆ウイグル自治区新玉区文工団(ホータン)

歌:パシャ・イシャ
レワープ:ダウティ・アウティ
アジェク:マハムティ・トルスン
ダップ:イミン・クルバン
歌・ドゥタール・タンブル:マハムティジャン・シャキル
歌・ドンブラー:ダリルハン
1989年5月2日 キングレコード第1スタジオにて録音

 

 

子供の映像、見つけた。

 


格好いい。ほれぼれする。

 

鎌田浩宮
日本でもテレビで、小学生くらいの子がギターやドラムスを演奏しているのを見かけます。その技量ときたら、僕やうちのバンドのドラマーを楽々超えてます。さてさてこの映像はフェイスブックの「ロンドン・ウイグル・アンサンブル」というページからなんですが、いいプレイヤーですね。

名無シー
こども と言うことで言うと、どこの国、地域だろうと、矢張り天性というものはあるでしょうね。音楽自体人間の発達と共に発展してきていますから、どの調律も旋法も和音やハーモニーも究極的には人間に親和性があります。


でもってこの子の場合、津軽三味線っぽさが前面に出てるよなあ!アラブ音階なんだけど、奏法が津軽なんだ。もーサイコー。ライヴ観に行きたい。


楽器もそうです。人間のために作られていて、人間の身体性と精神性を取り持つ橋としてデザインされています。ですが、矢っ張り、味覚の鋭い人や視覚が鋭い人がいるように、音感が鋭く、それが高い身体性と接続している人とそうでない人はいて、前者で、幸運にも早い段階でそれが分かっている人は、神童の道を歩むのでしょう。学問や囲碁将棋やスポーツと一緒ですね。


あ、それで言うと、ラワープはネックが細いので、子供でも演奏しやすそう。


フラメンコ・ギターのパコ・デ・ルシアは、未だギターに触る前の幼稚園児位の年頃の時、お兄さんがお父さんからギターの手ほどきを受けて苦戦しているのを見て、どうしてお兄さんがあんな簡単なことに苦戦しているか分からなかったと言っていました。一度も練習をしたことの無かったパコは、ギターを持ったその日その時からギターを普通に弾けたそうです。

 


スペインのパコ・デ・ルシア。2014年没。

 


一方、それだけではない要素もあって、すさんだ苦しみや、トンネルを抜けたような喜びの遠い空のようなものを歌に出来るかどうかなどは、音と言葉やイメージのアナロジーの問題、詰まり、ある感情や景色などを音としてはどんな風に感じるのかという総合的な感覚の問題で、上手に弾けるかどうかとはまた違う要素ですよね。


大多数の人が好むメロディーがあったりするし、多くの人が不快に思う不協和音があったりします。でもって、それらを踏まえたうえで映画に音楽を乗せたりもします。ある感情や景色に、音を乗せていくんですが、意外なメロディーがマッチしたりする。


神童が楽器を弾いているだけ、上手に歌を歌っているだけのレコードはそんなに食指を動かさないでしょう。ところが、楽器か下手な人が作ったものでも、魂に訴えかけるレベルの作品に仕上がったレコードは持っていたい。


親から無理やりやらされているのか、自発的にやっているのか、その音楽を好きなのか。その辺も音や顔に出ちゃうのかというと、意外にそうでもなかったりする。隠そうとするしないに関わらず、表層には一生出てこなかったりする。


或いは記憶を辿っても、クラフトワークのレコードのあのグルーヴ感は、当時まさか生で人がドラムを叩いているとは思わず、打ち込みかと思っていましたが、我々のグルーヴの壺にピタッと嵌まりました。

 


クラフトワークしかり、YMOしかり、意外とドラムスは人力だったりする。

 


神童かどうかは羨ましさも誘う反面、天は二物を与えないと言うくらいで、我々の何らかの理解はモナド的な重なり合わない固有のパースペクティヴによるところが多く、何かを羨む事には然程意味は無く、寧ろ、才能を持てる者、持たざる者が何らかの次元やチャンネルでは交流できるという事の方が面白い感じもします。


物質で言えば、原子よりも細かく分けることはできない…と言いつつ、科学が発展したら、それは可能になるかも知れない。そうではなくって、心や魂などといった分割不可能な1つの単位を、モナドと言います。細野晴臣さんが主宰していたレーベル「モナド」とはちゃいますねん。

僕の母はステージママになりたくて、俳優にさせようと無理やり僕を芸能事務所に入れたんです。小学2年だったか、アフレコかなんかの仕事であるスタジオに行った時、当時22歳のCharに会って、サインもらったことがあるんですよ!げっ!チャーだ!「気絶するほど悩ましい」のチャーだ!格好いい!ションベンちびりそう。

 


1977年の映像らしい。「ザ・ベストテン」放送開始よりも前になるわけだ。

 


チャーも神童と言われたけれど、22歳だと自覚的に活動し演奏しているはずでもあるが、歌謡ロックと揶揄されたりもして。自我の確立って大変。一生かかっても確立できない人、多かろう。


ちあきなおみの歌は、それを聞いて泣いてくれる飲んだくれあっての存在意義が、主成分です。神童が受ける喝采は、その喝采の中身、喝采する側の高い精神性に裏打ちされた視線の方が重要な気がします。


ぐわ。唐突にちあきなおみの名が。美空ひばりが岡林信康に接近したのは正調、さもありなんで分かりやすいんだけど、ちあきなおみが友川カズキに曲を依頼したっていうのは、グッと来るわあ。彼女「朝日のあたる家」歌ってるし。

 


格好いい。ほれぼれする。ちあきなおみ「夜へ急ぐ人」。作詞作曲友川カズキ。

 


あと気になるのはね、このウイグルの少年は、ロンドンで暮らしているのだろうか?であればジェノサイドからはとりあえず逃れられたのかも知れないが、異国の地で差別を受けたりしていないだろうか?この少年にとって、こんなにうまくなるまでラワープを学ぶって、どういうことなんだろう?


神童少年、多分先生はいるんじゃないでしょうか。亡命コミュニティはありそうな気もします。


色々調べてくと、ウイグル人は「子どもは歩きはじめると踊り出す。話しはじめると歌いだす」と言われるほどに、音楽と踊りを好むという話もありました。

 

ウイグルの弦楽器。サタール。

 


話をウイグルの楽器の話に戻しましょう。少年のソロの映像が貼ってある「ロンドン・ウイグル・アンサンブル」のページですが、ラワーブは矢っ張り津軽三味線のようなめりはりと切れの良い快活さが特徴的ですね。一方擦弦のサタールは長い音のなかで無段階的なベンドやコブシで中東的な雰囲気がある。

 


これがサタール。なんと!東京藝術大学 小泉文夫記念資料室YouTubeチャンネルより

 


サタールも、ウイグルの弦楽器。ネック、どえらい長いな。栗の木をくりぬいて作るらしい。弦は13本あるが、弓で弾くのは1本だけ。あとは共鳴弦ですって。サ=3・タール=弦という意味で、このサタールが日本の三味線のルーツという説がある。

 

ウイグルの弦楽器。タンブール。

 


タンブールではそう言う中東旋法的なものを半音階の速弾きで表現していて、マグリブ(編集部注:エジプトよりも西の北アフリカ地中海岸の一帯…モロッコ、アルジェリア、チュニジアを指す)辺りのウードゥの端正なペーソスに通じる臍の緒のようなものも感じさせました。

 


タンブール。Uyghur TelevisionのYouTubeチャンネルより

 


タンブールは、ヨーロッパのチターのような音色。ところどころ、マンドリンのようにトレモロ奏法。


リズムがレゲエですね。これは、日本の三味線の人がロックとかレゲエやるのと同じ様なあれですかね。外向きな、新しい時代の。

 


タンブール。

 


タンブール。やっぱりネック長すぎ。チューニングかなり面倒くさそう。あと、中東っぽかったり、中国っぽかったり、津軽三味線っぽかったりするラワープと同じで、演奏する人によって全然変わってくる。なので、2つの映像を挙げます。

 

ウイグルの弦楽器。ドゥタール。

 


ドゥタール。

 


そうかと思うとドゥタールは、歌を歌いながら弾くところも、そのバッキング的な弾き方もフォークギターを髣髴とさせますね。


なるへそ。右手はフォークギターのようにストローク奏法…バッキング的な弾き方なんだけど、ネックを押さえる左手の指があっちこっち動くもんだから、まるでアルペジオ奏法のような細かいメロディーとなっている。

このドゥタールはイラン発祥、ウイグルだけじゃなく、ウズベキスタンやタジキスタン、トルクメニスタンでも親しまれているそうで。ドゥ=2・タール=弦で、2弦という意味なんだって。


ウイグルの楽器は、ウズベクと共通するみたいですね。中東からウズベク経由で信仰とそれに付随する文化がウイグルに齎されたのでしょう。仏教文化時代は南からの文化受容があって、モンゴル帝国時代辺りから、中東の文化が西から入って来たと。

 

 

マグリブの弦楽器。ウードゥ。

 


ウードゥ。

 


先に比較で引き合いに出したマグリブのウードゥ。ちょっとウイグル音楽とは離れますが、イスラム音楽の東西と言うことで、文化的広がりを感じて貰うために紹介しますと、イベリア半島のギターのペーソスを誘発したのではないかと言う感じの、ペーソスと静謐さと緻密さをぎゅっと固めたような、そんな感じの楽器ですね。この辺はムスリム音楽文化の一つの頂点という感じもします。


あ、奄美大島の三線とおんなじ、細長い棒をバチに使ってる!ちなみに沖縄の三線は、水牛の角で作った爪を指にはめて弾きます。同じ三線でも、全然ちゃいます。

 

 

 

ウイグル音楽らしさ。ウイグルらしさ。

 


こうして、改めて色々聴いて行くと、ウイグル音楽には、地理的に極東と中東の間の中央アジアであることを象徴するように、中東らしさと極東に通じる部分が感じられますね。極東に通じる部分が、元々の極東らしさなのか、或いは中央アジアらしさが中国に入ったのかは色々調べなければ分かりませんが、一つ参考になるのは、唐代の中国は西方の文化受容に積極的であったことが、唐三彩で駱駝や西域の人々の特徴を持つ人物がモチーフになっていることにも見て取れそうです。

 

たくさん乗りすぎ!
7世紀末から8世紀初め、
唐の陶器「唐三採」でござんす。

 


そしてモンゴル帝国時代には、政治的支配による文化の変容もあったかも知れませんね。


支配と文化と言うと、日本でも古くは東北弁とかもそうですね。元々は板東の言葉、所謂あづまことばですが、板東の人々を編成して作った朝廷軍が東北に攻めてきて、三十八年戦争や前九年後三年の役などを通し支配が確定して行く中で、それまで話されていた夷語に取って代わられていったわけです。


言葉を奪う為政者ってぇのは、国内外いつの世にもおるもんですな。ちなみに箱根・足柄峠より東の国を「坂東」と呼ぶんです。


戦後の日本人がパンを食べるのもアメリカ支配による文化の変容です。戦後、アメリカは国内の小麦を捌くために、日本で移動バスのパン焼き教室まで展開しました。


となると、ウイグルの方々にとってイスラム教は比較的新しい文化なんですね?


ウィグルと言うより、世界全体にとって、イスラムは一番新しい世界宗教、文化なんです。

勿論文化的側面は何も無いところにいきなりぱっと出て来るわけではないので、以前からの文化と流入文化の融合があって、今があると。仏教時代にどんな風に暮らしていたかを調べるのも楽しいでしょうね。


今のウィグルの悲劇を思うと、中国の独裁的政治だけではなく、トルコの大トルコ主義に基づく動きの影響もあるのだろうかと、気になりもします。中国がそれに強く反発していると。

 

 


次回予告。ウイグルの絶品、ラグメンに迫る。東京でただ1軒のウイグル料理専門店・シルクロード・タリムに行ってくるかも!

 

謎が謎呼ぶ!pt.5はこちらをクリック


2021.03.04

和む!ウイグルの音楽 pt.3 ئۇيغۇر مۇزىكىسىنى ئاڭلاڭ

構成・文/名無シー・鎌田浩宮

 

 

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和む!ウイグルの音楽
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ウイグルの音楽を、聴いてみようじゃありませんか。
音楽で、ウイグルを訪ねてみようじゃありませんか。
東京芸大や博物館、ウイグル料理屋さんに寄り道しながら。
その道の大家に、話を聞きに行ったりして。
きっと、弾む旅になるでしょう。
時間は、たっぷしありますよ。
さあ、一緒に出発しましょうぞ。

 

 

 

 

最初の手掛かりは、
図書館の倉庫に眠っていた、
下記2枚のCD。
ここからウイグルへ
浸っていくのだ。

 

キャラバンの調べ~ウイグルの器楽
1 ムシャーブラクムカーム
2 グンドゥパイ
3 カーデル・マルラン(マルラン公社幹部)
4 タシュワイ
5 ヤルー(恋人)
6 ダワンチェン(大板城)
7 ディハンラー・マディア(農民讃歌)
8 豊作
9 ウッシャーク・ムカーム 第一ダスタン
10 ラクダの鈴の音
11 カルワン(キャラバン)
12 ラーク・ムカーム テザ間奏曲

新疆ウイグル自治区歌舞団
新疆ウイグル自治区新玉区文工団(ホータン)

レワープ:ダウティ・アウティ
バラマン:バーキル・トゥルディ
アジェク:マハムティ・トルスン
ダップ:イミン・クルバン
1989年5月2日 キングレコード第1スタジオにて録音

 

 

 

オアシスの抒情~ウイグルの歌

1 タック・スーレイ(山水)
2 ヤルー・スイニン・ダルダン(恋人よ)(1)
3 ヤルー・スイニン・ダルダン(恋人よ)(2)
4 グリヤール
5 グレー・チスカン・ミニン・ヤレン(花を持つ恋人)
6 ティレック・ボスタン(生き生きとしたオアシス)
7 チャビアート・ムカームのチョンナグマン
8 白い泉
9 遥かなる道
10 トーガン・ジェル(ふるさと)
11 クォールケム・アルタイタウェ(美しきアルタイ山)

新疆ウイグル自治区歌舞団
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歌:パシャ・イシャ
レワープ:ダウティ・アウティ
アジェク:マハムティ・トルスン
ダップ:イミン・クルバン
歌・ドゥタール・タンブル:マハムティジャン・シャキル
歌・ドンブラー:ダリルハン
1989年5月2日 キングレコード第1スタジオにて録音

 

 

 

インスタグラムを、見つけてしまった。

 

鎌田浩宮
ウイグル音楽について、掘って掘ってどんどん掘って。インターネットの中に、まだまだあるぞ未知の領域。細野さんじゃないけど、頭クラクラ・みぞおちワクワク・下半身モヤモヤです。遂に、ウイグルのインスタを見つけちゃった。今風だよなあ。投稿数4000点超え。見応えばっちし。ほんの時折、中国批判もあり。彼らの文化を、簡単に知ることが。

 

 

名無シー
中国内の情報も、大紀元とか海外に拠点を置くサイトを経由して、大連のコロナ対策で生きた人が住んでいるアパートの入口を鉄板で溶接して閉じ込めたりしている住民撮影の映像がリークされたりしていて、指導部のネット規制の裏を掻こうと市民も色々がんばっているようですね。


そうですね。この連載も、大っぴらに中国批判を掲げたいけれど、そうしちゃうとウイグルの方々が、容易にこのサイトへアクセスしにくくなる。だから、その辺りは考えながらやりたい。まずは、ウイグルの方々と僕らの広場、遊び場にしたいんです。

 

 


法輪功の人達の中には教養もデジタルリテラシーも高い人などもいて、2020年に日本でも劇場公開された映画「馬三家からの手紙」はそう言う草の根の闘いが絵描かれていました。ウイグルの人達にとっても状況は同じで、在外ウイグル人達とのネットワークを通して世界と繫がろうと言う動きがあるかと思いますが、寄らば大樹的に卜ノレコの情報筋もそこに噛んでいる場合もあるのかも知れません。

 

 


市民の闘いは、一人一人は小さな市民ですから、立場を保つのにも兎角難しい問題があると思います。それは、日本とて同じものがあるでしょう。言い寄ってくる甘言の裏にあるものを見抜くには様々な知識が求められるところもあると思います。


香港の方々とも繋がりたいんだけどさあ…グスングスン、容易にできない。だからこそ、巧妙に狡猾に進めたいですね。

 


ウイグルの楽器、ラワープ。
胴には、蛇の皮が張られていますね。

 

 

ベゼクリクの、加山雄三さん。

 


さてさて、ラワープの演奏に話を戻そうではないか。これは2009年かな?ウイグル自治区内・ベゼクリク千仏洞で、旅行者が撮影したもののようです。こんな凄腕、街角でごろごろしてるんだろうか?すごいぞ。左手を、フレットレスのようにスライドさせる。高音域で速弾き。この点が、津軽三味線に似たサウンドを醸し出しています。


中央アジアの加山雄三ですね、これは。音階は微妙にイスラムっぽさもある。


ある曲を演奏しているようでもあり、手癖でアドリブで弾いているようでもあり!


歌心が作った歌というより、楽器と奏法に引っ張られて曲が出来る感じでもありますが、歴史上も、その癖みたいなものは一旦一つの音の特徴として認識されるや常に新しい歌心になって、新しい歌を開拓する原動力になって来たでしょうね。そもそも調律もそうで、アイヌのウポポなどを聴くと、音階的楽器に影響される前の原初の歌心を感じさせます。

 


アイヌにはトンコリという弦楽器…音階楽器を用いる曲がある一方、
音階楽器を用いない曲・歌謡も多い。

 

 

私たちは、寺内タケシだ。

 


ところで加山雄三ですが、これなんかを聴くと、明らかに津軽三味線に引っ張られていますね。デイストーション加減や単音の4連符の短い切れの感じは非常に三味線的です。


ああ、そうか!若大将シリーズには、しょっちゅう寺内タケシがバンドメンバー役で出演してるんです。寺内タケシといえば、ベンチャーズによって日本に広まったエレキギターの第一人者。その後、日本の民謡を演奏してレコード化してますもんね!加山さんも、彼から多大な影響を受けています。名無シーさん、流石鋭い。

 


永遠の若大将。

 


日本エレキの先駆者は、やがて民謡に手を伸ばした。

 

 

音楽を伝承するには。

 


民謡の洋楽器再生で、民謡も変質したわけです。十二階音階の民謡になっていった筈なのです。五線譜に書き留め、フレットのある楽器で演奏することで、田畑や山や舟の上で歌われた、風雪と親和性のある古い歌心は、音符と音符の隙間から、往古の方へ消えていった筈でしょう。


それで思い出すのは、僕が敬愛している大友良英さんです。福島県広野町で廃れてしまった盆踊りの音頭を復活させようと、地元の若い方々が奮闘するんですね。残った音源(カセットテープとかかな)を聞き取り、笛のメロディーを五線譜に書き起こすことから始まるんですよ。そこから色々あって、最終的に大友良英スペシャルビッグバンドがリメイクに携わるんですが。

広野の若者はもちろん笛を吹けないので、とりあえず譜面に起こすしかない。古い歌心を伝承するのって、難しいのかな…?

 


伝承の一例です。
ちなみに鎌田、2度ほど二風谷を訪れてます。

 

 

そもそも、昔のチューニングは分からない。

 


この譜面が、我々と過去を分かつわけです。酷い場合は全てよさこいになってしまう。こう言う発想が、北宋期に唐代の音楽を探し求めた歐陽脩『新唐書』の「禮樂志」などにあって、唐の時代からの音楽を伝えているお爺さんに会いに行ったら、死んでました~!みたいな。


よさこい。全国230地域で開催されてるらしい。


宋代は軍事を縮小してでも文化を盛り立てようとした文治政治で有名ですが、そうした文化への情熱は質量共に凄まじいものがあり、それは先行する唐代の文化の隆盛への、元のものが失われつつある状態からの憧憬と言う特殊な状況も関わっていたと思われます。


宋の時代に、唐の時代を調べとるのか!すごいです。


唐代には唐代の音階での楽譜の記録が始まった時期ですが、それがどんなチューニングだったか、宋代の人達には判らない。チューニング研究に熱が入り、十二階音階が生まれたのも頷けますが、それは古楽には諸刃の剣となった訳です。エクリチュールはフォネーそのものではないのです。但し新しいものは生まれます。ラバーブが形を変えて新しい曲を作った様にプラス面、未来の面を見れば、それは豊かさでもあります。

編集部注:エリクチュール…書かれたもの、書くことを指す言葉。フォネー…声を指す言葉。

 


フレットのない楽器の例として、フレットレスベースの音を聴いてみましょう。

 

 

フレットのある楽器は、音楽を伝承するのか。

 


ウポポは音階楽器を使わない。音階楽器を用いる音楽の伝承とは、異なるのかしら?


楽器があれば、楽器自体の扱い方が楽譜のような記録的性質を発揮します。フレットのある楽器ではハーモニクスをちゃんと確認して調律すれば、同じ弾き方の曲はおおよそその曲として伝わるでしょう。現代の楽器が堅牢なフレームなどを追及したのはそう言う恒常性を志向しているわけです。


日本の三味線はフレットレスの楽器ですが、そこへ敢えて便宜的に数字を当て込んで、譜面にしています。1664年に発行された「糸竹初心集」が最古の譜面だそうです。現在三味線の譜面はおよそ3種類あり、下の写真のように当てどころを示してます。

 

 

 

周波数以外。

 


音階楽器を使わずに伝えられるものは音階に関して、現代的な周波数以外のところに重きを置いていた可能性もあるのではないかなどと妄想してしまいます。例えば魂が乗る響きとかそんな何か。


大好きなクドカンの「俺の家の話」。すごいぞ長瀬くん、能とプロレスの2つをマスターしながら演じてます。ざっくり言ってしまえば、能もプロレスも口承伝承の割合が大きいのかな。能には「謡本」というものがあり、台本に節回しまで記されています。

 

クドカンも長瀬くんも、凄いところに挑んでいる。
例えば1799年、宝生流謡本 内貮拾巻 高砂~百萬。

 


師匠の西田敏行が、長瀬くんら弟子に稽古をつけるんだけど、弟子によりエコひいきがすごくって!これも口承伝承だなっ、師匠次第でどうにも変わるなって、げらげら笑って観てます。ただ、能独特のおどろおどろしい声色ってえのは、カセットテープやSP盤で伝承するわけじゃなし。まさに「周波数以外」に重きを置き「何ものかを乗せる響き」にしていくんでしょうね。


それと、楽譜の弱いところは、他にもグルーヴを記録できないとか、ありますね。蠟管以降のレコードやテープ、コンピュータで使う緻密な記録なら、チューニングの問題もグルーヴの問題も記録できますから、福島の若者達は楽譜を使わず音データ耳コピの方が本当は理想的でしょうね。

 


2017年、福島県広野町での盆踊りの様子。

 

 

皆、元気でな!

 


我々が今辿ろうとしているのも、現代中国の指導部が破壊しようとしているいにしえのウイグル文化ではありますが、ウイグル人の若者達が打ち込みで地域性バリバリのラップとか畳み掛けている映像があったら、それはそれで聴いてみたいですね。


です!今、探し回ってますです!なかなか見つかりませんです!


地域系ラップの良いところは、嘗てはダサいとか言われそうな、訛りとか、地域経済の置かれた抑圧など、現地の空気、現地の気骨が伝わってくるところでしょうね。世界の平行性、あり得べきヴァリエイションの可能性を感じさせてくれて、どこかSFに似たクリティシズムがありますね。


以前テレビで、福島のラッパーを観ました。外見はギャングスタっぽいんだけど、原発事故に対する怒りがあって、ライムに力がありました。そう、気骨!


等と、大分横道にそれましたが、今ウイグルで壊されようとしているものはそう言う、世界の可能性であって、それを担う人々の命なので、必ずしも本質的にはこの話も的外れではないと信じます。


そうですよね!この度の連載、ウイグルの伝統音楽にこだわる気はなく、現在のウイグル音楽を探るのも本当に楽しみです。


そんな若者たち、彼等に伝えるもののあるお年寄り達、父や母や子供達、皆元気でいて欲しいですね。


そこへ行きつきますね!

謎が謎呼ぶ!pt.4はこちらをクリック


2021.02.23

和む!ウイグルの音楽 pt.2 ئۇيغۇر مۇزىكىسىنى ئاڭلاڭ

構成・文/名無シー・鎌田浩宮

 

 

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音楽で、ウイグルを訪ねてみようじゃありませんか。
東京芸大や博物館、ウイグル料理屋さんに寄り道しながら。
その道の大家に、話を聞きに行ったりして。
きっと、豊かな旅になるでしょう。
時間は、たっぷしありますよ。
さあ、一緒に出港しましょうぞ。

 

 

 

 

最初の手掛かりは、
図書館の倉庫に眠っていた、
下記2枚のCD。
ここからウイグルへ
浸っていくのだ。

 

キャラバンの調べ~ウイグルの器楽
1 ムシャーブラクムカーム
2 グンドゥパイ
3 カーデル・マルラン(マルラン公社幹部)
4 タシュワイ
5 ヤルー(恋人)
6 ダワンチェン(大板城)
7 ディハンラー・マディア(農民讃歌)
8 豊作
9 ウッシャーク・ムカーム 第一ダスタン
10 ラクダの鈴の音
11 カルワン(キャラバン)
12 ラーク・ムカーム テザ間奏曲

新疆ウイグル自治区歌舞団
新疆ウイグル自治区新玉区文工団(ホータン)

レワープ:ダウティ・アウティ
バラマン:バーキル・トゥルディ
アジェク:マハムティ・トルスン
ダップ:イミン・クルバン
1989年5月2日 キングレコード第1スタジオにて録音

 

 

 

オアシスの抒情~ウイグルの歌

1 タック・スーレイ(山水)
2 ヤルー・スイニン・ダルダン(恋人よ)(1)
3 ヤルー・スイニン・ダルダン(恋人よ)(2)
4 グリヤール
5 グレー・チスカン・ミニン・ヤレン(花を持つ恋人)
6 ティレック・ボスタン(生き生きとしたオアシス)
7 チャビアート・ムカームのチョンナグマン
8 白い泉
9 遥かなる道
10 トーガン・ジェル(ふるさと)
11 クォールケム・アルタイタウェ(美しきアルタイ山)

新疆ウイグル自治区歌舞団
新疆ウイグル自治区新玉区文工団(ホータン)

歌:パシャ・イシャ
レワープ:ダウティ・アウティ
アジェク:マハムティ・トルスン
ダップ:イミン・クルバン
歌・ドゥタール・タンブル:マハムティジャン・シャキル
歌・ドンブラー:ダリルハン
1989年5月2日 キングレコード第1スタジオにて録音

 

 

前回の紹介曲「タシュワイ」沼に浸る。

 

鎌田浩宮
前回紹介した曲「タシュワイ taxway」なんですが、ウイグル語・中国語・アルファベット・カタカナのいずれで検索しても、浮かび上がってこないんです。ただ「tashway」という単語に行き当たりまして、下に掲げた映像の他、「tashway」「tashvay」と呼ばれる曲がたくさん見つかりました。ただそれらは、どの曲もメロディーも含めて全然違うんですよね。やはり、コードやスケールだけ決まっていて、あとは自由に演奏していい曲なのかな。

ちなみにウイグル語は、右から左に向かって書くんです。もちろん、PC上でも同じです。なので、書いた文章を削除したり、コピーしたりする時は、右から左に向かってマウスを動かさないといかんのです。新鮮!汗ばむ!

 


前回紹介した「タシュワイ taxway」。

 

tashwayで調べたら見つかったぞ、ウイグルの映像。

 

ラワープと、ラバーブの違い。

 


どわー。この人カッコイイ。この楽器、ラワープ rawapといいます。CDのライナーノートでは、レワープと書かれています。津軽三味線のような大きなバチで弾いてるのかと想像してたけど、ギターのピックみたいなもので弾いてますな。でも、蛇の皮が薄いので、ペキペキした乾いた音がする!

名無シー
タシュワイ、何処となく南国の音楽を聴いているような感じもしますね。ラバーブ系の楽器は擦弦(さつげん)のものが結構あるようですが、撥弦(はつげん)へ奏法が変わる中で、使うスケールとかも変遷があるのか、説明無しに聴くと、イスラム文化を連想しないかも知れませんね。


お!元々は弓などでこする「擦弦」のラバーブが、バチやピックなどではじく「撥弦」のラワープへ変わっていったと、仮定してみる…。ちなみにラバーブ rabab ربابة‎は、東はインドネシアから、西は北アフリカ・マグリブ地方まで、イスラム圏で広まった楽器なんですね。

地方によって形状は大きく異なりますが、いずれも弓で弾きます。ただし例外として、アフガニスタン・ウズベキスタンのラバーブは、弓を使わない「撥弦」ですよ。


エジプトのラバーブ。

 


三弦と二胡等も、同じ楽器の流れから分岐したのかも知れませんね。


中国で生まれた、三弦と二胡。元は同じルーツだけど、撥弦の三弦と、擦弦の二胡に分かれていったと。


勿論擦弦楽器もバイオリンでのピチカートや、コントラバスのジャスでの奏法等横断的な使い方は、どの時代でもどの地域でも割と自然なものなんでしょうね。


そういや、ベースギターも指弾きとピック弾きがある。ジェームス・ジェマーソンは指弾き。ポール・マッカートニーはおおむねピック弾き。

 

 


寧ろ、日本で富山のお盆などでの二胡以外、余り擦弦が根付かなかった事の方が、何故なのかと言う視点もあると思います。日本人の琴線は、弾くべきものなのかと。


富山市の外れ、日本海から遠く離れた八尾という地で、見た目は三味線ですけれど「おわら胡弓」という、弓で弾く楽器があるんですな。そもそも胡弓という名称が、中国っぽい。名無シーさん、あんた物知りか!どんだけ物知りか!

 


こちら、エジプトのラバーブ。

 


こちら、サウジアラビアのラバーブ。

 


こちら、富山県八尾町のおわら胡弓。

 

近くで聴く。遠くで聴く。

 


今回紹介したCD「キャラバンの調べ~ウイグルの器楽」に収録されている他の曲は、アラブや中国、もしくはインド音楽の音階に近いんです。でも、この「Taxway タシュワイ」は短調…すなわちマイナーコードを多用する、日本音階に近い。ステレオデッキから離れた台所で、白菜の浅漬けなんぞを仕込んでいると、ありゃりゃ!津軽三味線に聴こえてくるんですよ。僕の耳がバカなのか?

以前「めちゃイケ」で、目隠しをしながら料理を1口を食べて、何の料理か当てるコーナーがあったでしょ?人間って面白いもんで、味覚だけだと何の料理か分からないんです。それどころか、使った素材さえも分からない。

それとおんなじで、何らかの理由である知覚がぼやけると、その音楽が違うように聴こえてくるっつーか…。

 

 

どこから来たのだこの音階は。

 


ウイグルには、西側からイスラム文化が押し寄せてきました。一方、東側から西側に伝播していったものもあり、十二階音階の調律は、宋の時代に中国で発明されるも、王朝で受け入れられず、民間のチューニングとして西に伝わって行きます。


1オクターブを、ドレミファソラシの7音+その半音5音=計12音に均等分割した「平均律」ですね。学校で習ったけれど、西暦447年の宋が発祥だったか!早!しかもヨーロッパじゃないのか。

 

 


ウィグル音楽を聴いていると、イスラム的装飾音的な物もありつつ、もう1枚のCD「オアシスの抒情~ウイグルの歌」2曲目「ルー・スイニン・ダルダン(恋人よ)(1)」の頭の弦楽器のイントロとかは、中国の弦楽と親和性があるようにも聞こえますね。


ヴォーカルものである「ルー・スイニン・ダルダン(恋人よ)(1)」については、後日読者の皆さんにも試聴できるようにしますね。このpt.2では、もう少しラワープによる器楽を深堀してみます。皆さん、下の動画でお聴き下さい。

 

 

やっとCDから紹介2曲目
「Gundipay グンドゥパイ گۇندىپاي」。

 


グンドゥパイ…ウイグル語で「看守」という意味らしいけれど、この曲名も同じ意味なのかな?あとですね、始まってから11秒後…Bメロに入るところが、琉球音階に似ている。このフレーズは、その後も度々演奏されますね。


琉球音階。ウイグルと沖縄を繫ぐ線、興味深いですね。


中東・南インド由来の音階が、ちょっと変じただけなのか?それとも、本当に琉球から伝わってきたものなのか?そもそもこの楽器・ラワープは蛇の皮を使う、蛇味線だし。


蛇味線。すなわち三線の起源から言うと、中国は関わっているでしょうね。三弦と同じく革張りの二胡とかは、胡と言う位で、北方から中原に入って来た楽器だそうです。


んだんだ。琉球・三線の由来を調べると、14世紀末に中国から持ち込まれた三弦なんですって。

 

上、三弦。下、三線。

二胡。

 

ヘビつながりだったのだ。

 


あっ、そうか。思い出した。二胡の胴も、ニシキヘビの皮を使ってるんだった!僕の家にある二胡、ワシントン条約で輸入禁止になるちょっと前、友達の小林奈美ちゃんが中国で買ってきてくれた物なんですよ。

ちなみに「胡」という言葉を調べると、かつての中国が北や西の異民族を呼んだ蔑称なんですね。しかも西というのは、西トルキスタンのイラン系を指すとか。


三弦(中国の伝統楽器)と言う言葉が文献に登場するのは元の時代からだそうで、そこから言っても、二胡や三弦はラワープと繋がりがありそうです。


CDのライナーノートによると「レワープは、主弦1弦、共鳴弦4弦からなる撥弦楽器である。右手で三角形のピックを持ち主弦を弾く。トレモロ奏法が多用される。18世紀のウイグル人学者モラ・イスミトラによれば、この楽器は新疆南部のカシュガルに起源をもつ。また1746年に完成された『四庫全書』は、この楽器の形態、調律などを詳しく記録しており、この楽器の発展を探るには重要な文献である。」とのこと。となると、カシュガル以前はどうだったのか!

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2021.02.21