キャマダの、ジデン。⑱今泉見海

文・鎌田浩宮

SF小説読破の哲人かときんなど、
沢山の友達が出来て幸せだったんだが、
いまこはまた別のフィーリングを持った親友だった。

いまことはエプスタでも
「楽しい脱原発④ 脱原発キャッチコピー対決」
http://epstein-s.net/archives/5416
で登場してもらった今泉見海(けんかい)くんのことで、
未だに交流があって、たまに酒も酌み交わす。

3人の中で誰が1番親友か、っていうのはないんだけど
いまことは何から何まで気が合った。
他の2人にも共通の好きなものは沢山あったけど、
いまことだけ共有していたのは
「マカロニほうれん荘」と
ロックミュージックだった。

いまこの家は文房具屋さんをやっていて、
様々な週刊誌も売っていて
そりゃあもう天国のような場所だった。

いまこはその中から週刊少年チャンピオンを取り出して
皆と公園へ繰り出す。

当時の少年チャンピオンは断トツの売れ行き、ナンバーワンだった。
そりゃあそうだ、
「ドカベン」から読みだして興奮、
「750ライダー」を読んで背伸びした気分、
「がきデカ」でおゲレツ(さときっちゃんはこういうのが好き)、
「エコエコアザラク」で恐怖に身震いし、
「ブラックジャック」で締め、大満足。

でも、僕といまこの中では、断然
「マカロニほうれん荘」だった。
こんなにぶっ飛んだギャグ漫画を見た事がなかったし、
今後もないんじゃないかなあと思う。
それは初めてビートルズのシャウトを聴いた時のような
体中を電流が走るような刺激と興奮があった。

公園で主役のトシちゃんの台詞をいまこが読み、
もう1人の主役のきんどーさんの台詞を僕が読み、
皆がそれを聴き涙が出るほど大笑いしながら
食い入るように漫画を見つめ早くページをめくってよとせがむ。

「いまこ、NHKでやってたキッスのコンサート見た?」
「かまちょ、昨日の『ぎんざNOW!』のロックベスト10見た?」
当時テレビで洋楽を見ていたのは僕等2人と
ベイ・シティ・ローラーズ好きな同じクラスの長倉幸子ちゃんだけだった。

既に解散してテレビには出ないビートルズをいまこに教えた時は
「ん?ずうとるび?」
と返され興味を持ってもらえなかったのが残念だったが
他にも教室のほうきをギターに見立てながら
世良正則&ツイストの歌まねをして騒いだりだった。

小学3年生の終わりに作ったクラスの文集では
なんと2人とも将来の夢に
「ロックミュージシャンになる」
と書いてある。
マセているなあ!

僕にとっては天真爛漫で陽気なサイコーのヤツなんだけど、
ある日實おじさんが三軒茶屋に来て、
僕等の友達と皆で遊んだことがある。
「しろあき、あの子はそっぽを向いていてとっつきにくい、生意気だ」
實おじさんが指差したのは、意外な事にいまこだった。

いまこが幼い時にお母さんを亡くし、
親戚に養子として迎えられ、
たまに生みのお父さんとも会っている事を知ったのは
だいぶ後の事だった。
いまこにある、その年齢らしくないある種のフィーリング、
幼さや無邪気さから遠い影に僕は全く気付いていなかった。

そんな事は僕等に関係などありゃあしない、
そしてその後見事に中学で共にバンドを組み、
同時期に糸井重里らの影響でコピーライティングも始め、
グラフィックデザインへの興味からモンドリアンを好きになっていき、
今へと連なっていく。

小学2年の3学期に三軒茶屋に越してきて
いきなりかなりなイジメに遭い、
3年でクラス替えになり
気分を一新させるべく
ない知恵絞って
「馬鹿丸出し軍団」とゆーチームを作り
この歳になっても尚付き合いがあるほどの
さときっちゃん かときん いまこ
なんてな親友を何人も何人も作り
毎日毎日陽が暮れるまで遊び通し
すんばらしい先生とも出会い
人生の中でも最も幸福な時を過ごしてたってなわけだが。

小学4年。
ありゃりゃ、また親父がいなくなった。
女を作って家から出て行ったのさ。

「パパは、帰ってくるの?」


2012.04.06