第9便「東京駅の、トイレの、落書き。」前編

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photo and text by Hironomiya Kamada

前回の柴又編がすこぶる好評、
ありがとうございます。

寅さんは旅に出る時、
上野駅を何度となくくぐったけど、
今回は
日本中から人が集まってくる
東京駅のトイレはどうだろう
と思い立った。

故郷の思いを込め
人は何をトイレに落書きるのか。

ふるさとの 訛なつかし停車場の 人ごみの中にそを聴きにゆく

気分は軽やかに、啄木です。
僕、東京生まれだけど、ね!

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東京駅、入って気づく。
トイレだらけ。

東京駅は6つの改札がありまして、
八重洲口の北口・中央口・南口、
丸の内口の北口・中央口・南口、でがんす。

しかもそれは地上口と地下1階とあるので
改札は合計12か所となり、
その12か所全てではないんですが
トイレが設置されてまして。

今回、その全てのトイレを取材。
時間にして約1時間半!

しかもさらに改札をくぐり新幹線の方にも、トイレ、相当数あるでしょ。
今回は切符代があれなので、そこの取材は、なしでがんすが。

して、1か所目。
早速、落書き発見。

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いわゆる便所落書学会で言うところの、
くさび形文字という枠組に入るものですね。
いわゆる、ペンではなく、彫って記されております。

文字、ぼやけててすいません。
「喫煙所ぐらい用意しとけよ」
とあります。

前回の柴又と同じですね、
喫煙マナー問題、
随所で勃発してます。
 

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これもくさび形文字ですね。
何か鋭利な物で彫って書かねばならぬほど
重要なことなのでしょうか。
「朝からウンコかよ」
と刻まれています。
それ、自分ツッコミ?

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これはペンですね。
「同和 部落 解放」などと書かれています。
何か懐かしい感じさえするタームですね。
子供の頃は、こういったフレーズの落書き、
ぎょうさんありました。

こういった問題が減っていることを、切に願います。

どれも写りが悪くてごめんなさい!
もうね、
臭いが尋常ではないのですよ。

今まで区役所などを主に調査してきましたが、
それらに比べ、トイレ(大)の利用者数が、半端ないのですよ。
便器の数も多いんですが
そのほとんどが使用中でして
こちらは使用が終わったばかりの
まさに今利用者さんが出て行かれたばかりのトイレに
バトンタッチして入るわけですよ。

もー、生まれたてなんだもの、「かほり」が。

home

加えて区役所などだと、
トイレに僕だけしかいない場合も多く
カシャカシャシャッター音がしても大丈夫だったのだが
今日は、駄目です。
利用者数が多いのでシャッター音が耳に入り
通報でもされたらタイヘン。
撮ったらすぐに出ないと。

elevator

しかし、東京駅はこれだけではないのだ。
地下4階・5階に、行け。
横須賀線直通・総武線快速と、成田エクスプレスが、ある。
そしてトイレも、ある。

phones

他に路線がないため、急にだだっ広くなる。
人通りも極端に、減る。
こんなに大量の公衆電話がぽつねんとしてるの、
久々に見た。

早速トイレに入るのだが、
今度は人が全くいなくて、少し怖くなる。
しかも、異臭。
便のかほり、ではないのだ。
どちらかというと、野宿生活者、のようなかほり。
大便の方を覗くと。

shoes

なぜスニーカーが。
野宿生活者の方が、倒れちゃあいないか。
僕は野宿生活者の方を決して差別はしないが
臭いと怖さで、これ以上、近づけない。

地上1階に、戻る。
何もなかったかのよーに、ユニクロさえ、ある。

uniqlo

東京は治安が、いい。
通行路沿いに服を置いても、
誰も、かっぱらわない。

恐怖から追放され、
(そう、解放されたわけでは、ないのだ)
天井を見上げると、
馬。

sky

しかしね、なんかね、
日本中から人が集まる
東京のど真ん中の
ステイタスを感じさせる場所で
野宿生活者の雰囲気を感じられたのは
そういったものを排除していないという意味で
よかったんじゃないかなあ、
と今は思うんです。

この項、つづく

2011.08.12