審査結果発表 case1 エプスタ随筆大賞

編集・鎌田浩宮

 

ブログのくせに長めの事業でこざかしい
エプスタインズ創刊10周年記念特別事業
「エプスタ随筆大賞」
遂に発表します。

 

この度は、中央にいる者ではなく、首都にいる者でもない、地方に住む人で審査をしてもらおう!との明確な意図の下、スズキスキー・高橋紅・高橋基の3名に審査を依頼しました。

実は…!

昨年2020年で、実はほとんどの審査は終わっておったんです。しかし、秋田県横手市在住・高橋基がクラウドファンディング「地元秋田の仲間とともに、クッキングアップルの郷をまもりたい!」を開始することに。多忙のため、最終段階へ進めずにおりました。

横手市のクッキングアップル…加工用りんごは通常、首都圏のお菓子屋さん・飲食店などへ買い取られています。しかしコロナウイルスの影響で、買い取りは激減。大打撃を受けている地元りんご農家を救わんと、動いたのでございますよ。

しかし、予期しとらん出来事が!

2020年12月半ばから、秋田を含む日本海側・北日本に雪が降り始め、下旬から未曾有とも言える大寒波と豪雪に。しかも、1月に入っても雪が止まないのです。昨年からの数週間、太陽を見ない日々です。過去の天気を見てみて下さいませ。12月14日から、雪。日照時間ゼロ。そこから毎日、積雪量は22~123㎝。12月27日に1日だけ雪が止んで、また、雪です。

県内各地で、被害は様々なんです。秋田市と横手市では、天気予報も降雪量も風速も異なります。

低気圧が原因で、1月7日には暴風雨が発生。八峰町八森では最大瞬間風速42.4㎧を記録、観測史上最大となりました。2019年の台風19号の最大瞬間風速が、東京江戸川臨海で43.8㎧なので、巨大台風並みなんです。県内38件で、屋根などが飛ばされました。秋田市などで67,000戸の停電が発生し、避難所も開設。全復旧は、9日深夜11時32分までかかりました。

中央・首都ではあまり報道されていませんが、ビニールハウスの倒壊・りんご樹木の折損など、深刻な被害を受けています。現時点で、被害額は約2億円という報道です。高橋基や仲間の農家は、心労は既に限界を超えている、朝起きて雪を目にし吐きそうになると、SNSで状況を伝えています。

横手市・クッキングアップル農家の方が撮影

そのような理由で、審査発表が遅くなってしまいました。大変お待たせしましたが、遂に3名の各審査を順に発表し、そのうえで最終審査結果をお伝えします。

その中でスズキスキーは、エプスタ随筆大賞募集締切の2020年10月11日をもって、応募作品をほぼ読み終わっており、文を送ってくれました。まずは、スズキスキーによる素晴らしき寸評です。私達編集サイドも、断固支持します。以下、お読み下さい。

なお、前述したクラウドファンディングですが、集まったお金は豪雪で損害を受けた農業施設の復旧と、折損したりんごの代替苗木購入などにも充てられます。
https://readyfor.jp/projects/cookingapple

ご支援・情報拡散などご協力いただけたら、すんごく嬉しいです。横手を応援しようじゃないか。よろしくお願いします! (文責・鎌田浩宮)

 

 

審査員など、おこがましい。読んで、感じたことを、素直に書けたら。読んで、ひとつでも、良かったと思えた箇所を皆ンなと共有出来たら。
なんて積もりは毛頭無い。基本、褒めない。褒めて伸ばすとかは、しない。「こんな胸糞の悪い審査を受けるなら随筆なんか書くんじゃなかった」と怒られるくらい悪態をつきます。

番場正志氏。コンプライアンス感と事なかれ感が横溢してこの上ない息苦しさ。それを支えているのが氏の「医者でもないくせに」「応接室にノックもせずに入りこむ」「アポもなく来店」といった目線。自らが律している程度には他人にも自らを律することを要求している様子だが、それを唯一ぶち破る「だまされてもいいのよ!」、これは実に爽快だし、お金の使い方として決して無益ではないだろう。世の中には、損しても構わないという人はいくらでもいるのである。ただ、金融機関は、それを認めてしまったら仕事にならないから認めないだけであって、もしかしたら数年後には、お年寄りと犯人と双方の同意があれば送金が可能になるかも知れない。そういう世の中も悪くないかなと思う。ところで最後の2行、この正論が全体の力を削いでしまっている。これについては後述する。

表参道が好き氏。ディストピア小説の登場人物が作品内で書いた日記と読んだ。「ナチュラル」「個性を受け入れる」「死を意識している」、これらが圧倒的な同調圧力の結果で無いとは言い切れない。確かに彼らも自分の意見は言うだろうがその意見は宥和の範囲内でのみ交換されて、破綻の萌芽を発見すると「いいね」でよってたかって攻撃してまるっきり田舎の村八分じゃないか。ラクな世の中とは、お互いに認め合う世の中じゃなくて、お互いに「どうでもいい」と思い合える世の中のことである。

鎌田浩宮氏(在日ファンクだのサルゴリラだのどうしてこんな名前にするんだろう)。クラウドファンディングでお店に冷遇された原因が読み解けなかった。便乗詐欺扱いされたということか。「ボクはこのお店の常連で、良かれと思ってやってあげてるんですよ、なのにその態度は何だ!失敬な!」くらい言ってやってしかるべきだ。自転車撤去委託組合なる団体(実は個人かも知れないけれど)の文言は何を言っているのかさっぱり解らなかった。色々あった様だが、大体、徒労である。やらなかった後悔よりやった後悔を選ぶのは熟考の余地がある。折角ジンセー終えたんだから隠れて生きよ。

藤坂鹿氏。細やかな筆致で描き連なれる地獄物件の日々。読みながら顔をしかめずにいられない。時折挿入される夫婦漫才(グーグルの検索ワードっていつも滑稽だ)。管理会社とのネゴシエーション。そして新天地への残暑の陽射しの中での脱出。そんな奮闘の記録というのが表向きの顔で、実はこれはこの部屋で死んだ前住人の独白である。ネズミやゴキブリや(アオダイショウもか)カビが出た。だから前住人はこの部屋を退去した。退去したから死んだのである。死んだから退去したのでは無い(それでは怪談になってしまう)。生きることを終えた人には、次に向かう場所は、無い。死者は、空間の無い永遠の明日のなかにいる。それが、生きている人間には、スクリーンを照らす白い光の様に感じられるから、これを映像化するなら最後の中華料理屋のシーンは夜ではなくて露光オーバー気味の白昼にしたい。

鎌田浩宮氏再び。平成生まれ(平成生まれという時点で最早フリークスである)がこれを読んだらどう思うのかということが想像出来ない。何年前の何々、何年前の何々、と繰り返されるが、実際にその時間に居合わせた人だったら一挙に呼び起こせる当時の感覚を平成生まれの諸賢は得られない。それでいいんですよ。それだからいいんですよ。普遍的立法の原理として妥当し得るよう文章は、至極真ッ当かも知らんけど、面白く無いですよ。楽しく無いんですよ。想像だけなら、逮捕されない(FOE「DECLINE OF OTT」1986年)。鎌田家の永久機関、つまり時間から開放された故に死んだ機械。動かなくなったから死んだのでは無い。永遠に動くから、死んでいるのだ。

名無シー氏。色が、人物の立ち位置が絵コンテ的に浮かび上がってくる。噴火の朧げな赤。仔羊虐殺は、スローモーションで。遊ぶ子供達ははしゃがずに物静かに遊ぶ。不器用な長兄と気難しい三男のぎこちない会話。火葬場に響く雨音。赤ん坊をガラス越しに見つめる少年。終盤の、死を本棚になぞらえる話は、意識の逆走を思わせた。人は、生まれて、死に向かって生き続けているが、死を出発点として、母の胎内に還るような意識の持ち方は可能か?などと考えてみたりした。すると、誕生と死は、同じ現象を別の言葉で言い換えているだけなのだろうかなどと考えてみたりした。死者も生者も、大して変わらないのかも知れない。長兄が正月に引き合いに出した映画「ラストエンペラー」と通奏低音を響かせる太宰の『斜陽』。弟よ。僕は、貴族です。

名無シー氏連投。江戸Σには苦い思い出がある。横須賀の書店で雇われ店長をしていた頃、ベテルギウスという名前のアルバイトの女の子がいた。彼女は父親がアフリカ系の軍人で母親が日本人だった。そういう人は大抵バイリンガルだが彼女は英語を全く話せなかった。彼女は左目に義眼を嵌めていた。ふとした雑談から彼女がテオ・パリッシュが好きだと知って会話が増えた気がする。theoの発音がセオなのかテオなのか判別するのは日本人には難しいが、英語を話せない彼女がテオを選択したその根拠は永遠に仏滅。永遠の仏滅。ある日の閉店後バックヤードで成り行き的なセックスをした。陰茎に包茎手術の痕跡を認めた彼女は、それをユダヤの割礼と思い込み(後日に彼女がそう語った)、翌日、書店のエンド台に平積されていた、全然売れないのに取次が勝手に送品してきたキャス・キッドソンのバッグ付きムック本を全て返品ストッカーに押し込み、持参した変な鍋や変な石鹸を無断で陳列したのである。そこに社長(創業者の息子でどうしようも無い盆暗)が来店。いつものように怒鳴り喚くかと思いきや、エンド台の前で社長とベテルが、日本語では無い、聴いたことの無い言語で小声で話し合い始めた。聴いたことの無いその言語を理解しながら聴いている。

鎌田浩宮氏season3。毎朝仕事帰りのルーティンで買う麦焼酎かのかはローソンでは211円だがファミマだと214円するから必ずローソンで購入するかというと3円得したとか損したとかせこいことは考えたくないから躊躇せずファミマも使うががその癖レジ袋に3円支払うということには抵抗があり実家で貰ったエコバッグを利用するにせよコンビニの店頭には袋詰めスペースというものが存在しないため多量の商品の一括購入がためらわれるからわざわざコンビニを梯子して各店で2点か3点のみ入手することでレジでの煩雑さを回避するという分散購入方式を採用しているものの問題はつい最近折り畳み式から買い換えた長財布でこれはダイソーで300円の高コスパ商品だが折り畳み式に比して小銭入れの空間がほぼ倍の広さで現在どの硬貨が何枚入っているかを一瞥で知ることが困難であり例えば211円を支払う際にもたもたしたくないので511円出した後で50円玉に見えたのが実は100円玉で結果として財布の中に100円玉が5枚揃ってしまうという極めて不愉快なていたらくを招来することがままあるがそれがどうかした?としか言いようが無い文章であった。

皆さん本当に優等生でしたね。優等生過ぎて、随筆というよりも弁論大会あるいは青年の主張でした。
正論を、テレビやラジオのインタビューで小学生が答えている。「とてもおもしろかったです。またきたいとおもいました。」この小学生は大して面白いと思わなかったのでもう来たくない癖に必ずこう答える。そうしないとインタビュアーも困るし視聴者も嫌な気分になることを(小学生だからこそ=子供はこうやって社会をサヴァイヴする)想像出来るからだ。こうして正論は共犯を強要する。そして令和2年の現在、この共犯関係に基づいた安定した人間関係の構築にやっきになっている連中はいくら戸籍上大人でも中身は小学生である。大人なのに中身が小学生な大人は小学生以下の大人である。

今ここに1次関数のグラフがある。中心のゼロ点より下が暴論で、ゼロ点より上へ行くに従って正論という縦軸があり、横軸はゼロ点より左へ進めばポエム、右へ行くほど博物誌となる。これが随筆の座標軸である。諸作品を改めて拝読すると(名無シー氏の江戸云々はさておいて)正論を維持しているのは確かだが横軸の触れ幅が殆ど感じられなかった。つまりポエム側でも博物誌側でも無くゼロ点の極く近い範囲に留まっているように感じられた。それは「自分のこと」「自分の現実」に閉じこもっているからだ。もっと自分から離れて、むしろ自分を無くした方が、随筆は面白くなる。必要なのは人間性ではなく知性である。ものやことへの好奇心と偏愛と嫌悪・知識が新たな知識へと連鎖するコンボ即ち時空間の非連続的な抽出などが「とてもおもしろかったです。またきたいとおもいました。」のどこにあるか。

主催者の提示したテーマが抽象的過ぎる嫌いがある。その抽象性に引っ張られて、抽象の殻を抜け出せなかった感がある。試みにテーマを考えてみた。
「犬にとってリードとは何か」「胡桃割られ人形」「邦題問答」「日本人と仲良くする方法」「悲鳴学」「ハラカミが聴こえる夜」「ダサい服着て不味い飯喰った話」「マスク美女・視姦の代償」「始めるのに遅すぎることなんかない・遅すぎるのに始めることなんかない」
どうもいまひとつだな。すんません。

すんませんついでに、入賞作は、無いです。どうしても減点法でしか採点出来んくて、作品のマイナス幅の小ささでしか、判定出来へんかったです。折角の10周年記念に水を差して申し訳無いがこういう狭い時空間で馴れ合うの気持ち悪いから審査放棄します。高橋夫妻に丸投げします。本ッ当すんませんでした。すんませんでしたついでに一言。

まだまだ物足りないぜ。

(次回「審査結果発表 case2」へ続きます)

 

 

ブログ・エプスタインズ創刊10周年記念特別事業
エプスタ随筆大賞
応募締切:2020年10月11日(日)
ジャンル:随筆
形式:Microsoft Word または googleドキュメント
   ペンで紙に書いて、または点字などの郵送も歓迎です
枚数:制限なし
テーマ:以下の6つの中から選び、応募下さい。
   ・お楽しみはこれからだ
   ・おれは悪くない
   ・三等同僚
   ・死ぬのは奴らだ
   ・ビッグトゥモロウ
   ・耄碌と恍惚
賞品/賞金:後日発表
賞一覧:・大賞
    ・投票による読者賞
    ・裸の大賞
    ・若大賞
    ・青大賞
    ・のんき大賞
    ・Mr.BOO!ギャンブル大賞
審査員:高橋紅(くれない)
    高橋基(もとい)
    スズキスキー
発表:2020年10月吉日
応募先:info@epstein-s.net @を半角に変換して送信して下さい
郵送は〒154-0024 東京都世田谷区三軒茶屋2-20-13-410 鎌田浩宮まで

 

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2021.01.10