応募作品#2 我が家の困った習慣変わるかなあ

編集・鎌田浩宮

 

ブログのくせに長めの事業でこざかしい
エプスタインズ創刊10周年記念特別事業
「エプスタ随筆大賞」

随筆が、止まらない。
日常を、奪還する。
非日常を、狩猟する。
筆1本で、止まらない。
大賞決定前に、応募作品を1作ずつ掲載していきます。
読めばいいだに!

 

 

題・我が家の困った習慣変わるかなあ
著・表参道が好き
テーマ・お楽しみはこれからだ

 

 ∮       §       ∮       §       ∮

 

仕事を終えて2駅を都営新宿線に揺られて帰宅する。
今日は、帰宅途中にクリーニング屋さんによって、息子と娘の冬の制服を受け取った。
家に帰ると洗濯物を取り込む。お風呂を溜める。
夕ご飯の食材を冷蔵庫を見て考えて夕ご飯を作る。
高3息子、中3娘は夕ご飯を食べたら塾の自習室へ行く。
子ども達の夕ご飯が終わるころにお父さんが仕事から帰ってくる。
お父さんのご飯や晩酌の配膳して、私も一緒に夕ご飯。
食べ終わると、夕ご飯の後片付けをする。
洗濯物を畳む。アイロンかける。
お風呂に入って、少し一息。
そうするうちに息子や娘が帰宅する。
帰ってきた2人がそれぞれにいろいろ話してくれるのでそれを聞く。
お父さんや子供たちがお風呂に入った後に洗濯機を回して、朝干せるようにしておく。
明日の朝のご飯を炊飯器にセットする。
これが、私の近頃の夕方から寝るまでの行動だ。

そして今、わが家の父さんが寝ているベットの足元に置いてあるパソコン前で座布団に座って、カタカタとこれを打っている。

夜中に文章を書くのは久しぶりだ。
私は、1972年生まれの48歳。
高3男子、中3女子のダブル受験生を抱え中で時短勤務の正社員。
四年制大学を卒業し、印刷会社に営業職として就職、結婚して退職、16年の主には主婦生活(パートやアルバイトはしていたけれど)ののち、印刷系のお仕事に復帰して現在3年目をむかえたところ。という、よくある子育てが落ち着いてきたから働きます。教育費もかかるしね、な主婦だ。

今夜、こんな話になった。
中3娘が、
「1999年に男女共同参画法案ができたんだから、にいにはおうちのことを普通にできる男になってよね。」
と中間試験の勉強で仕入れたばかりの知識を使って高3兄さんに言う。
「うちは昭和だもんね~」
と私が言うと、
「そうそう。まじ昭和。」
と兄も妹も声を揃えて言う。

そうなのだ。うちは「お父さんが一番偉い」のである。
だから、お父さんは基本的に家事をしない。
それには事情があるのだけれど、、
兄が未来のパートナーに対して我が家のようであっては、兄のパートナーが大変だ
と思った。
我が家の「お父さんが一番偉い」は、子どもたちが小さな頃、お父さんだけが外で稼いできてくれていたときに出来上がった習慣がそのまま残っているのだ。
昼間は私と子どもで好きなようにしてるんだから、お父さんは、お仕事でくたびれているんだから帰ってきたらお父さんが好きなようにしてあげようね。っていう習慣。

今や、10代の子どもたちも、時短勤務の私も、お外で頑張っているのだから、それぞれおうちでは好きにしたい毎日だ。しかし、この習慣は残ってしまっている。
例えば、お父さんが帰宅するとテレビ権は自動的にお父さんのものになり、休日に在宅の日は一日中テレビ権はお父さんのもので食卓はお父さんの場所。
一緒にいてもつまらない子どもは、部屋にこもり、私は家事をする。
いかにお父さんにこちら側へきてもらうか。子どもたちがもう少し小さな時期に話し合いをすればよかったかと私も少々頭をかかえている。老後2人になった時に、家事をできる人になっておいて欲しい。と。一日中座っていられてはさすがに困る。

それを感じての今夜の娘の一言なのだ。
兄も十分に分かっているので、
「俺はやるよ。家事もするし、けっこう今もしてるよなあ。」
という。
確かに彼は、私がいないときは、雨が降ってきたら洗濯物を入れたり、ご飯の後片付けもしている。
しかし、続けて一言
「でもさあ、男って、女の人より気が付かないんだよね。俺も、かあちゃんが家事してるの見ちゃってるもん。あー、かあちゃんやってんなあ。って。きっと、男ってそうなんだよ。父さんも多分おんなじなんじゃないかなあ。自分から気が付く前に女の人がやってるか、ああ、いろいろやってんなあ、って眺めちゃう。」
とニコニコして言う。
それは確かにそうなのかもしれない。
と思っていると、
妹が
「それじゃあ、男の人は、結局家事やらないじゃん。
私みたいに、ずっと働き続けたい女の人は、どうやって家のことと仕事と子育てすればいいのよう。」
とワーワー言い出した。
私は、娘はそういう人生設計なのかと思いながら
「じゃあ、おうちのことが得意な人や協力できる人をパートナーになったらいいね。」
と娘に言った。
兄は
「今はさ、女性も男性も同じに働けるし、ほら、男女雇用機会均等法、習ったでしょ?
しかも、バリバリ働きたい女性がいる一方で、バリバリは働きたくない男性だっているわけよ。だからバランスとれそうな人がいたらいいんじゃね?俺は、家のことやるからバリバリ誰かに働いてほしい!」
とニヤニヤしているので、妹に
「ヒモかよ」
と突っ込まれていた。

私の育った昭和40年代のモデルのような家庭は、父親が稼いで母親が家を守るタイプが多かった。
今と比べると男女の役割分担がはっきりしていた時代だったっと思う。
それは、教育でも同じで、幼児のころや小学校でも、男の子だから、女の子だからという言葉をつけてしつけられていた記憶もある。女の子だから家事できないとね。っていう感じ。

「男が働いたって女が働いたって一緒に暮らしていくんだから、家のことは一緒にやればいいんじゃね?男と結婚するとも限らないだろうし、結婚しないかもしれないし、違う国の人と一緒になるかもしれなくね?」
という兄の言葉はとてもフラットだ。

わが家には、兄妹の友達が小さな時からたくさん来た。
そのおかげで、10代後半に成長した彼らの世代との交流を私も持たせてもらっている。
それを通じで感じることがある。
彼らはとってもナチュラルなのだ。
ナチュラルとはどんな感じかというと、自分のままでいるという感じ。
10代という男女の性差を大きく感じ、体も心もホルモンの影響をうけ、乱暴になったり、自分ではどうにもならない思いを抱える時期なのに、ストンとそこにいる。
もちろん、思春期に特有の自分をよく見せたかったり、自意識過剰になったりはしているけれど、自分と違う個性の他者を受け入れることができていて、自分の個性も自分で受け入れている。互いに個性を受け入れるゆとりが彼らの世代にはあるのである。
さらに自分の意見もきちんと伝えることができる。
彼らを見ていると、私たちの10代の時はどうだっただろう?
と考えてしまう時がある。
兄妹ともに、地元の公立中学校へ通ったが、女子がスラックスを履いている子もいるし、
ルーツが日本以外の国の仲間もいる。学校に来るのが得意ではない子もいるし、勉強が得意な子、人気者の子、内気な子、いろいろな子がいろいろな個性を持ち寄って刺激をしあっている環境がある。

私たちの10代の頃は、今よりも日本は日本人ばかりだし、男の人と女の人の役割がはっきり決まっていて、学校には嫌でも行かされた。大人は子どもに言うことを聞けといい、反発をした私たちは大人と揉めたり、学校で暴れたりした。話し合いや個性を認めるとういう生活からはまだ遠かったように思う。

もうひとつ、この子たちは私の世代と圧倒的に違うところがある。
それは、無意識でも意識的でも死を意識しているということ。
彼らは、東日本大震災を幼稚園や小学生、中学生で経験し、日常が急に変わってしまうことを知っている。毎年の台風の水害、ミサイルが日本の上空を飛びアラートの鳴る朝を知っている。そして今のコロナ禍。日常はいかにもろくて日常ではないことを知っている。その中で、自分のために、自分の未来のために、自分の大切な人のために、エネルギーを使う。そして、世界ともつながっている。日本だけではなく、世界として物事をとらえている。日常や命は消えることを知っているからこそ、今できることを今しようとする力がある。

彼らは新しい人たちだと私は思う。

私は、「お父さんは偉い」の習慣を兄妹が小さな時にわが家へ持ち込むような、ゴリゴリな昭和の男女の役割を刷り込まれている母親だ。
しかし、兄妹はお互いのパートナーと協力をしあって暮らしを築いていくのだろうと思う。彼らの世代の新しい人たちが、ナチュラルに生活を営み、私たちの生活の中の不自然なところを臆することなく指摘をしていく未来がきっとあるのだと思う。そんなそう遠くない未来はきっと、日本で暮らすことや世界の人が日本にいることが、もう少しラクになる世の中が来るような予感がする。それが楽しみで仕方がない。

私は、まず、お父さんに家のことをすこしずつしてもらえるように作戦を練るとしよう。
そうすれば、こんな夜中にパソコンを叩かなくてもよくなるかもしれない。

 

 

募集期間を延長しました。ぜひ、ご応募下さいね。

 

ブログ・エプスタインズ創刊10周年記念特別事業
エプスタ随筆大賞
応募締切:2020年10月11日(日)
ジャンル:随筆
形式:Microsoft Word または googleドキュメント
   ペンで紙に書いて、または点字などの郵送も歓迎です
枚数:制限なし
テーマ:以下の6つの中から選び、応募下さい。
   ・お楽しみはこれからだ
   ・おれは悪くない
   ・三等同僚
   ・死ぬのは奴らだ
   ・ビッグトゥモロウ
   ・耄碌と恍惚
賞品/賞金:後日発表
賞一覧:・大賞
    ・投票による読者賞
    ・裸の大賞
    ・若大賞
    ・青大賞
    ・のんき大賞
    ・Mr.BOO!ギャンブル大賞
審査員:高橋紅(くれない)
    高橋基(もとい)
    スズキスキー
発表:2020年10月吉日
応募先:info@epstein-s.net @を半角に変換して送信して下さい
郵送は〒154-0024 東京都世田谷区三軒茶屋2-20-13-410 鎌田浩宮まで

 

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2020.10.03