「魔法使いのLesson」監督、倉田ケンジに訊く。①

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エプスタ内「『深夜食堂』を褒めちぎる」の連載を担当していた、
映画監督倉田ケンジが、ようやく待望の新作を発表しました。

今回の新作は映画館でかかるような劇場用のものではなく、
NTTドコモやYoutubeで無料配信される連続ドラマ動画です。

では一体、どんなものかと言いますと。
 

【概要】
ミス・ユニバース・ジャパンのナショナル・ディレクターである、
話題の美のカリスマ、イネス・リグロンの秘密のレッスン。
日本人女性が輝くための8週間トータルビューティープログラムDVD、
[INES SECRET]。
『魔法使いのLesson』は[INES SECRET]のスピンオフムービー。
 
【あらすじ】
すべての女性が持っている「魔法のちから」。
まだまだ少女なOL「さやか」。 受け継いだ古本屋を嫌々営む「千歳」。
日常のアレやコレ、ムダに過ごしてきた月日、そして誰かのせいで、
いつの間にか「魔法」を失ってしまったと夢想する、ふたりの女性。
そんな接点もないふたりは、[INES SECRET]に出会い、
幸福と疑問と不思議に満ちた、新世界を歩み出す。
女性ならば誰しも必ず秘めている「魔法」(自分を輝かせる力)を
取り戻すまでの、 自分を、人生を、幸せにしてあげる、
イネスと共に歩み出すハートフルストーリー!
 
【キャスト
さやか : 谷村美月   千歳 : 星野真里
加藤慶祐  山田ルイ53世  福田響志
平野勇樹  宮地真緒  イネス・リグロン  他
 
原案 / 脚本 / 監督:倉田ケンジ

 

ということでして、以下のサイトにて
6月30日まで無料で観る事ができます。 
 
[ドコモ動画特設サイト](※スマートフォン配信も同時配信)
http://hills-m.jp/docomo/ine/drama/

[魔法使いのLesson 予告編]
http://www.youtube.com/watch?v=asf_87Ejzd4

[ヒルズコレクションチャンネル](※全話随時配信)
http://www.youtube.com/user/hillscollection

[魔法使いのLesson 特設サイト]
http://www.hillscollection.jp/ine/move-d.html

 

いやあ、めでたい。パチパチパチ。
ということで、エプスタでは倉田監督にインタビューを行いました。
今回の作品のみならず、彼の映画に対する信条も垣間見えます。
数回に分けて連載しますので、どうぞ、お読み下さい。

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「魔法使いのLesson」の完成、配信おめでとうございます。

久しぶりの現場での監督作品となったわけですが、依頼を受けてから、クランクインを迎えるまでの気持ちや気構えはいかがでしたか?

御言葉、本当に感謝致します。
最近は長編映画の準備や小説、脚本関連ばかりに追われていたので、久々に脚本/監督ができるお仕事を頂き、本当に有難かったのが正直な気持ちでした。そしてショートとはいえ初めての連続ドラマ形式でしたし、長年やってみたかった事でしたので、少々興奮気味であの日々を過ごしていたと思います。
とはいえ、依頼からクランクインまでは二ヶ月もないという恐ろしいスケジューリングでしたので、ただただ「走りきらねばっ!」しかなかったように今となっては思います。

連続ドラマには映画や単発ドラマにはない「キャラクターの積み重ね」、それによる「愛着」が観客の方々に生まれやすいものだと思います。
単体のドラマであってもキャラクター性の深みをどう創りだしていくべきかと、ここ数年は連続ドラマを観て、個人的には研究しておりましたので、時間を追う毎に変化していくキャラクターを皆様に愛して頂けるか否か、これは個人的なテーマとして掲げておりました。

 

脚本の段階で苦労した点は?

 

今回はイネス・リグロンさんのDVD「INES SECRET」の為の、スペシャルスピンオフドラマとして企画されたものでしたので、イネスさんの思想や美への考え方、女性へ込められた愛情などを、出来る限り零さないようにと思いました。

またドラマを観て下さった方々が、実際に「INES SECRET」を手にとって体験して頂けたらと思い、色々と試行錯誤しました。
その結果が、一人の人物を描くのではなく、二人の異なる女性が
「INES SECRET」と出会い、成長していく様の物語となりました。

多くの人生パターンを描く事が「INES SECRET」にとっても最良だと思い、そのような設定をしたのですが、制作スケジュールが凄まじく厳しいのにそんな構成をしてしまう私は、すごく頭が悪かったかもしれません。
スタッフの皆さんすみませんでした(苦笑)。

脚本執筆で苦労した点としては「INES SECRET」が8週間のプログラムで構成されており、それに合わせるように8週間分のドラマ配信でしたので、一話一話の構成が各週のプログラムと連動しなくてはならなかった為、どうストーリーテーリングやキャラクター心理とDVD内容とを結びつけるかには腐心しました。

しかし基となる「INES SECRET」が精神性の高い、男の私から見ても素晴らしいメッセージが籠められたものであった為、歪みなく、真摯に、素直に生きるキャラクターと、彼女たちに対し、誠実に向き合うドラマ作りを考えられた事は良い体験だったと思います。
私自身、脚本を書いている時間は全くありませんでしたが、それでも書いている時はどこか幸せな気分でいました。そこから魔法は始まっていたかもしれません。

構成としては一話完結に近いものとしたのですが、やはり全話を観たくなる要素の配置にはかなり苦悩しました。
ですので千歳篇の物語最後に出てくるバラの名を実際に見つけた時には
「やった!」と声が出ました。

実際にはさやか篇/千歳篇、主人公一人に付き長編映画一本分は書きました。ですので「魔法使いのLesson」で語られたお話は、私の中では半分ほどかもしれません。

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そしてスタッフに関しては、学生時代から映画制作の苦楽を共にしたグループ、E.G.Tの方々と再び現場に立つことができたわけですが、感慨はいかがでしたか?

長年苦楽を共にしてきたe.g.t.のメンバーとしては、撮影監督の菅野宏彰と、撮影監督と照明技師をもこなす渡辺厚人に来てもらえました。
本当に素晴らしい二人です。
やはり現場に一つ落ち着きが持てる事と、ある意味私の趣味を理解してもらえているという、以前からの信頼は忙しい現場になればなるほど心強かったです。

 

様々な場所でロケをやったわけですが、あの古本屋は、僕も監督も好きなバンド、ソウルフラワーユニオンのメンバーの店だったそうですね?偶然見つけたんですか?

お借りした古本屋さんは大森駅近くにあります「東京くりから堂」さんでした。本当に素晴らしい本屋さんでした。
色々な方からの情報やネット等で調べ、直接出向き、一目で惚れました。
おしゃれな内装だけでなく、置いてある本の趣味、色合い、空気など、固定観念があった古本屋とは異なるものでした。

「魔女」というキーワードもあった為、店の装いは洋風か和風か悩んでいたところで「東京くりから堂」さんに出会い、イメージが開けました。

そこでロケハン中に、店内でソウルフラワーユニオンが流れていた際、我々も昔、阪神大震災の際にソウルフラワーのドキュメンタリーを撮りに行きましたと店長さんにお話したところ、なんと店長さんは現ライブメンバーだったという。
嬉しいやら恥ずかしいやらでした。ここにも魔法があったと思います。

あとは各所で撮影したのですが、外のロケーションは全てホームタウンの狛江です。またしても(笑)。ですので狛江に住まれている知り合いの方々には一発でバレました(笑)。多くの狛江市民の方々にはご協力頂きました。本当にありがとうございました。

 

さて、撮影が始まって、なんとキャストの皆さんは既に台本を持って来ず、台詞も完全に頭に入った状態で来てくれたそうですね。相当な気概を感じたのではないですか?

それは本当に驚きました。
ものすごく過密な制作スケジュールであった事と、多くのお仕事を同時に抱えているような俳優の方々でしたからそのような状態で今回の現場に来られた事には深く感動しました。
NGもほとんどと言っていいほどありませんでした。
それだけでなく俳優の皆さんが穏やかで真摯に取り組まれる方々ばかりでしたので、現場の空気は非常に和やかなものだったと記憶しています。

 

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インタビュー、次回へ続きます…。


2011.05.16