私の2019年外国映画ベストテン 鎌田浩宮編

写真・文/鎌田浩宮

 

2019年は、隠居になってから大分時間ができまして、54本の映画を映画館で観ることができました。51年のジンセーの中で、最多です。加えて、子供の頃から愛していたスター・ウォーズと寅さんの新作。これはどうしても喜ぶべきです。

例年に増して、良作が多かった気がします。なので、1位から12位までは、差がありません。どれが1位になっても問題ありません。ただ、「ジョーカー」は観ませんでした。大好きなクドカンもよかったと言っていたし、観なければならんのかな、でも、興味の沸かない作品は観なくてもいいかと。

今回は、外国映画・日本映画・ドキュメンタリー映画・総合と4回に分けてお送りします。

 

 

1位 私の20世紀

新作ではなく、再映(4Kレストア版)なんですが、もうどうしようもなく1位です。映像の美しさ。現実と幻想。ジャン・コクトー監督「オルフェ」を思い出します。

 

 

2位 COLD WAR あの歌、2つの心

正方形に近い独特なスクリーンサイズ。その中に、アングル・俳優の色香・音楽・舞踊などが奇跡のように調合する。この才能には驚いた。

第二次世界大戦があったからこの愛は実らなかった、とも言えるが、なかったとしても実らなかった、とも言える。一方に断言しない。それほどに愛というものは強固であり、弱いものでもあり、表裏がある。

 

 

3位 ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド

政治家の歴史修正主義はふざけんなだけど、本作における歴史改ざんは、全てのタランティーノ作品の中でも、とびぬけて甘美であり、悲しみに溢れている。

 

 

4位 テルアビブ・オン・ファイア

名無シーさんに教えてもらい行ったのだが、素晴らしかったし、信じられなかった。世界の中でもかなり過酷だと認識しているパレスチナの問題を、コメディーとして描き切ったのだ。

 

 

5位 家族を想うとき

崩壊しつつある家族の全員が車に乗って、わいわいがやがやと母が介護する老女の家へ行く。貧困と格差のあえぎの最中に、ふと浮かび上がる幻想のようなひと時。あのようなシーンを作り上げる事ができる映画監督は、この世界に10人もいないのではないか。

 

 

6位 タレンタイム~優しい歌

これも名無シーさんに教わって。子供が母親に詫びるシーンは、欧米の価値観からすると不可解なのだろうけれど、それを飛び越えて得られるものがある。

 

 

7位 イメージの本

これが遺作か、ゴダール。

 

 

8位 イリュージョニスト

細野晴臣さんデビュー50周年企画の上映で観ました。ジャック・タチの質感は、今では演じられる人もいないわけで、アニメーションならば、彼の質感、味わい深さを出せるという。

 

 

9位 象は静かに座っている

中国の抱えている閉塞感と絶望が、日本や欧米のそれと違わない事を伝えている。2020年のベストに入れるつもりである「パラサイト」も、世界中の貧困、分断と同質であることを描き、海外からも評価を得ている。

この作品は、中国を描いているのではない。日本を描いているのだし、世界を描いているのだ。

 

 

10位 スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け

ジョージ・ルーカスが微塵も絡んでいない新シリーズを、どう受け取ればいいのか未だに悩む。しかし、ルーカスによるエピソード1~3の失敗を見れば、仕方がないとも思え。

その中で総力を結集して、できるだけのことを遂げた作品。

僕は英語が得意じゃないけど、時折聴こえる台詞が効いている。再登場が格好良かったカルリジアン男爵は、レイア姫を「my love」と呼ぶ。亡き悪友、反・ソロの妻であり、反乱軍のミューズである、レイアを、そのように呼ぶ。

「帝国の逆襲」でハン・ソロがレイアに告げた名台詞、「I know」。この言葉を最終作のここで使うか。JJもよく考えた。

ヨーダを始めとするジェダイが、レイを励ます。「Rise」という言葉が、空から降り注ぐ。「起き上がりなさい。」「立ち上がりなさい。」美しいシーンだ。最終作の象徴となるシーンだ。

この言葉が、スター・ウォーズ・サーガの最終作である「Rise of Skywalker」にかかっているのだ。だから、「スカイウォーカーの夜明け」という邦題は、残念ながら誤訳だ。

ジョージ・ルーカスが作ったエピソード4・5・6には、厳格で神話や哲学のような台詞がある一方で、ソロやカルリジアンらが放つハスッパな台詞が、ユーモアを形作っていた。映画ならではの台詞。スター・ウォーズが堅苦しい映画にならず、子供も若者も心を奪われた。いい映画には、名台詞がある。

そのことを、JJは思い出させてくれた。よく頑張ってくれたと思う。

 

 

次点 ブラック・クランズマン


2020.02.09