退学を脅された東洋大学学生を応援するのだ 1

文・名無シー/鎌田浩宮
編集・鎌田浩宮

 

 

2019年1月21日。
東洋大学で
学生が立て看板を掲げ
ビラを配っただけで
大学職員から
退学を勧告された。

 

 

 

 

エプスタインズにて
度々登場する
映画評論家・名無シー。
エプスタインズ・鎌田浩宮は
東洋大学出身。

 

 

 

 

タテカンを掲げた「彼」を応援すべく
語り始めた。

 

 

 

 

大学がおかしい 批判タテカンの学生に「圧力」 管理強化で上意下達横行

東洋大白山キャンパス(東京都文京区)で今月、ひとりの学生が同大教授の竹中平蔵氏を批判するタテカン(立て看板)を設置するなどし、大学から退学処分を警告されたという情報がネット上で拡散した。大学側は否定するが、学則に反する行為として学生は長時間にわたって聴取された。山梨大では学長が年頭のあいさつで韓国について「異様な反日政策をとっている」と述べた。大学人の見識を疑う事例が相次ぐ。知を育む場で何が起きているのか。(中山岳、榊原崇仁、佐藤直子)

2019年1月31日 東京新聞朝刊特報面より抜粋

 

 

名無
東洋大、揺れてますね。
恐らく大学的には、塩川正十郎(編集部注:自民党所属。内閣官房長官などを歴任しながら、1988年から2000年まで東洋大学理事長を務めた)の頃もそうだけど、政権中枢にすり寄って便宜を引き出して来た背景があるんだろう。けれど、おもね過ぎて言論弾圧までやれば大学のイメージ落とすの分かってないのかも知れませんね。
今、SNSの反応をどう評価するか、どう火消しするか忙しいことになっているでしょう。

米で労働者のためにならず失敗とされながら、資本家の懐を肥やすために日本に突きつけて来た雇用の自由化の年次要望書の尻馬に乗って、市民を潰すようなことを推進してきたような輩と肩を組むなど、全く情け無くなりますね。

あと2018年11月24日に、東洋大学文学部哲学科教授・河本英夫が、立命館大学哲学会大会招待講演で「性犯罪を例にとり、その性犯罪を女性がまたしてほしいと思われるように実行せよ」と語った件。

 

三流大学が、体制におもねき巨大化した

 

鎌田
日大がアメフト問題で揺れた時、なぜ日大の学生は発言し行動に移さないのか、僕はイライラしていました。僕が学生なら、学生課に詰め寄っていたはずです。さらに時代を遡れば、火炎瓶を投げ込まれてもおかしくない事態です。

僕が、船橋君と同じ東洋大学文学部哲学科へ入学したのは、1987年。浅田彰さんの「構造と力」や中沢新一さんの「チベットのモーツァルト」が1983年。ポスト・モダンやニューアカデミズムと呼ばれた潮流が続き、思想・哲学がもう華やか。ときめいた時代でした。

一方東洋大学は、本当に何のとりえもない三流大学でした。今のように駅伝や野球などのスポーツに秀でているわけでもなく、ここを卒業したからといっていい企業に就職できるわけでもなかったんです。

何せ、自慢できる卒業生が、片手で足りてしまう。笠智衆、植木等、落合博満。高校の頃の方が、自慢できる卒業生が多かったという。

 

 

鎌田
埼玉県朝霞市の田畑の中に大学があり、風が吹くと農薬が舞うので息苦しい。しかしとてものどかで、僕と同じ哲学科だった長山和夫ちゃん…そう、去年僕が監督した映画に出てもらった和夫ちゃんと僕らは、毎日のように議論を交わし、田畑のど真ん中で世界の情勢を批評していました。

学生運動は、1968年前後もあまり盛り上がっていなかった東洋大。僕らの頃は、わずか1~2人の○○派極左とされるアクティビストな学生が、学内で活動をしていた記憶があるけれど、あまりに小規模で、大学に及ぶ影響もほぼ0であり、大学側も放置していました。

理事長は、直前まで文部大臣も務めていた塩川正十郎。この頃から東洋大は自民党や政権へすり寄っていたわけなんですが、僕ら学生への字自由がむしばまれていたわけではなかったんです。

 

 

ストレスなく生活する、2つの方法

 

鎌田
ただし、その頃に僕らが船橋君のような行動を取っていたらどうなっていたんだろう?加えて思うのは、船橋君に同調する学生はいないのか?彼が孤立しているのであれば、寂しく感じます。

僕らの頃は、東洋大の哲学科を卒業しても、採用してくれる企業なんぞなかった。逆に言えば、学歴に頼らない学生が集まっていました。

安倍政権になってから、自分の信条に沿って生きる事が困難になりました。「自分や他人に嘘を吐き、体制におもねる、へつらう事が最もいい生き方だ」と、子供から年寄りまでが信じています。首相自らが詐欺を働き、大学を設立させても辞任に追いやられない。嘘をついた方が利口な生き方だ、正義はバカバカしいとなるわけです。

しかし一方で、自分の信条のままに行動し生きる方が心地いい、自分自身にとってストレスがない、自身の快楽原則に従っている…そんな人間もいるんです。

そういった人間を見て「面白い奴だな!」と感じる人は減ってきているのでしょう。そこで、僕らおっさんが彼を応援し、彼や僕らが呼吸をしやすい世の中の空気作りをしていこうと思うのです。

名無
船橋君も、立て看同好会などというアカウントを作って、中々ユーモアのある器用な若者ですね。学内ではやや孤立してるのかな…でも、イマドキ。SNSなのかな?学外で思いを同じくする人とつながっている。

日刊スポーツのこの記事とか、彼は転んでもただ倒れたりしないしっかりした学生ですね。

鎌田
日刊スポーツ、読みました。彼が日大アメフト部事件において学生のふがいなさにワジワジしていたのを知り、よかったです!

もし当時僕らが所属していた、教員と学生が自由に討論することを目的とした自主ゼミ「月曜フォーラム」顧問・太田勇先生(東洋大学文学部教授(人文地理学))がお元気でいらしたら、すぐにでも声を上げている気がするんです。

 

2種類か。哲学科学生、そして人間の気質

 

鎌田
僕らの当時の哲学科の人々って、大きく分けると2種類かなあ、と思ってました。

1つは、先日公開した映画の被写体・和夫ちゃんのような、自身の哲学を社会に向け行動する人。
もう1つは、完全に座学として学ぶ人。社会とは一線を置いているどころか、隔絶しちゃっている。

これは教授会にも言えるのではないでしょうか?もちろん、哲学科だけではありません。全学部に言えるんです。

僕は哲学を学ぶにはかなり頭が悪く、途中で退学したわけですが、世の中に唾を吐く事…もったいぶって書くと、社会に向け行動することを面白がっていました。

僕がなぜ音楽や映画を通じて、世の中へアクセス(古い言葉だな)しとるのかというと、どうにかして他者や社会と繋がっていたいんでしょうね。

だから、船橋君のような人を見ると親近感がわくし、僕や橋ちゃんや和夫ちゃんと同類の人なんかなあ、と思うんです。こういう人を面白がる土壌を肥やしていきたいですね。

次回へ、続く!

 


2019.02.04