続・オシゴトキャマダ。

文・鎌田浩宮

ああ、お正月が、懐かしい。
もう、いくつも寝ていたかったのに。
もう、2月。
早いわあ。
汗ばむわあ。

 

汗ばむその1 老眼鏡

最近、テレビのピントが甘いなあ。
大江麻理子アナの美しい顔がぼわーんとしとるなあ。
うち、未だにブラウン管だし、そろそろ寿命かなあ。
などと独りごちていたら、目が悪うなっとったんじゃ。
ライターとしての仕事が多くなり、あっちゅー間に視力が落ちまして。
同時に老眼も進み、手元もピントが合わなくなり、こりゃあいかん、老眼鏡を買う決意をしまして。
いわゆる、遠近両用っつーやつです。
最初は、20年前に買ったヴィヴィアン・ウエストウッドの眼鏡を気に入ってたのでレンズだけを交換しようと思ったんだが、なんとヴィヴィアン、日本では既にサングラスしか展開しておらず、対応してくれないとのこと。
おいおいわしは浦島太郎か。
世界の変化に全くついて行ってない。
正確に書くと、ヴィヴィアンの眼鏡は渋谷の桜丘にあった眼鏡屋で買ったと記憶しとるんだが、その眼鏡屋も、もう閉店していた。
もう、大江アナを見つめることは不可能なのか。
そこで、21世紀に入りどこの眼鏡屋さんが安いのか聴いて回り、JINSに行ったが気に入ったデザインのフレームはなく、眼鏡市場でようやく妥協できるデザインのフレームを発見、購入。
帰宅してテレビをつけたら、ゲッ!我が家は4Kテレビかっつーくらいの解像度。
大江アナが、帰ってきたぞ。

 

汗ばむその2 スマホン小便

バイト先の、トイレ。
儲かっている会社のトイレは、凄い。
手を近づけただけで泡立ち石鹸がスプレーされ、手を近づけただけでゴミ箱の蓋が開く。
そのうち、手を近づけただけで放尿できるだろう。
僕はうちの母くらいの年齢の掃除担当の女性と仲良くなり、そんなトイレで雑談に花を咲かす。
そんなある日。
若者が、スマホンしながら小便しておるではないか。
きっと彼は、寝る時以外は常にスマホンなのだろう。
もちろんシャンプーする時も、キスをする時も、サイコーの時もサイテーの時も、スマホンなのだろう。
そのうちスマホンから小便が出てきて、シャンプーもリンスも彼女の唇も、青い空も太陽もお星様も、スマホンから出てくることだろう。
あ、僕はガラケーです。
電話代が月に3000円行かない。
電話もネットも情報も、初老には鬱陶しいよ。

 

汗ばむその3 パイク

先日「ローグ・ワン」を観に行ったその足で、ナム・ジュン・パイク展に行ってきた。
大衆娯楽と前衛芸術の振れ幅、どちらもすんごく面白かった、それはいいとして、パイクの客層があまりに若いのに驚いた。
どこでどうやってパイクを知ったんだろう?
彼の代表作「グッド・モーニング、ミスター・オーウェル」や「バイ・バイ・キップリング」はもう今から約30年前。
その頃は小学校に入学していたかどうかの年齢層だ。
それとも何かい?
今時の美大は、パイクも教えるのかい?
初老には何が何だか分からない。
茫然としていたその時、園子温夫妻が入館してきた。
さすがだなあ、彼はパイクも好きだったんだ。
園さんくらいの年齢が、ちょうどパイクの世代だよなあ。
僕がマジメに学生映画を創っていた頃、目の上のたんこぶが園さんだった。
映画が、マジメじゃない。
「俺」に満ち溢れた自我だらけの彼の作品は、とても周到に戦略を練った評論家好みの臭いがして、当時は駄目だったのだ。
今は、大好きよ。
彼の映画は、ヴィデオで世界を繋げようとしたパイクに近づいている。

 

汗ばむその4 場末の酒場

今回の舞天(ブーテン)のアルバムジャケットを描いてくれたお礼に、漫画家・松添安広を渋谷ののんべい横丁へ連れて行った。
全てが数十年前の木造、まるで長屋のようだ。
彼はここが初めてで、その風情のよさに横丁を4周も回り、居心地の良さを楽しんでくれた。
さあ、どこで呑もう?
混んでない所がいい、食べログなんぞで探すのは無粋、ひょいと入ったのは、焼き鳥屋の「和かな」。
客は僕らだけ。
まあ、この横丁では雰囲気を肴に呑む、味は二の次と思っておったんだが。
まず、3串まではご主人のお任せ。
塩かタレかも、お任せ。
丁寧にゆっくり、焼く。
こんな横丁でも、しっかり炭火。
ごく普通の安価な小皿に、おっと思わせる小粋な盛り付け方で出してくる。
これが、どの串もど偉く美味いのよ!
味もよければ、肉の柔らかさが抜群、今まで食べてきた焼き鳥とは全く違う。
1本200円。
決して馬鹿高いものではない。
創業80年だそうで。
一方僕のホームタウン三軒茶屋には、戦後の闇市から続く三角地帯というエリアがあって、古い酒場達がわっしわっしと並んでいる。
この数年で、ほたるという居酒屋と、三友軒という中華料理屋が、暖簾を畳んでしまった。
ご主人女将さんの高齢化が原因だろう。
特にほたるは、どんなにネットで検索してもなかなか出てこない、なかなかの魔窟ぶりだった。
この時代に、グーグルが勝てないほど外部に情報の漏れていない店が、つい最近まであったのだ。
根付いている店と、去っていく店。
渋谷と三軒茶屋に、涸風1つ。

 

汗ばむその5 ライター呑み

仕事が終わり、たまに男のライター同士で呑むことが増えた。
58歳・最年長のベテランを組長と呼び、50歳の者を幹部と呼び、最年少32歳の者を若頭と呼び、呑む。
ライターというのはどうも嗜好も思想も一緒で、左翼や右翼の話から裏社会やオウム真理教まで、雑食性の話題で盛り上がる。
やはり組長のライティング経験は豊富で、大事件になりえた危ない橋を幾つも幾つも渡るエピソードに、我等組員は胸を躍らせ高笑いする。
エプスタインズで言えば、戦闘的ゴジラ主義者くんが6人ほどいるような感じだ。
同じ職場なので懐具合も分かっており、呑むのは生ビ1杯160円というせんべろ居酒屋。
しかし、今時の○○円均一の資本系居酒屋ではなく、個人経営の店なのが我々らしい。
では、我等はどんな媒体に執筆しておるのか?
公開できるよーになったら、また書きますね。

 

それでは最後に、僕が仕事で執筆した記事を紹介しますね。

地元の人たちと楽しめる。沖縄のおすすめの秋祭り6選
これはもう大好きな沖縄なので、あまり資料も調べずがんがんと書きました。

米粉で作る、もっちりヘルシーなグルテンフリーのクリスマスケーキ
これは、友達の中山久美子ちゃんを紹介したくて書きました。

クリスマスのホームパーティーにおすすめのメニュー3選
これも、三軒茶屋にある行きつけのブエノというレストランを紹介したくて書きました。

田中製簾所
後継ぎがいなくて、この代でなくなってしまうかも知れない全行程手作り簾(すだれ)のお店です。

岬そば工房
蕎麦屋ではなく蕎麦打ち体験をさせてくれる店なんだけど、ここの講師の蕎麦は食べたくなりますど。

アトリエminamoジオラマギャラリー
実際に鉄道ジオラマ作りを体験しているキャマダの顔がひどく怖い。

それでは皆さん、ごきげんよう。
さよなら、さよなら、さよなら。


2017.02.09