キャマダの、ジデン。51 組体操

鎌田浩宮・著

今や小学生の子供達の間で空前絶後の話題になっているものと言えば、妖怪ウォッチでもスター・ウォーズでもトレンディエンジェルでもなく、組体操だ!

大阪市、組み体操のピラミッドとタワー禁止に
(東京新聞2016年2月9日夕刊)

大体だなあ、運動会において、NO KUMITAISO, NO LIFE.と考えているのは先生と親だけだぞ。

僕が小学5年生の時、1組から4組までが全て、以前から三軒茶屋小学校にいた先生ではなく、他校から異動で来たり、大卒で新任した先生が担任となった。
その中には、このジデンでも多々書いた、あの悪名高き大木美代子先生もいた。
そして僕らは6年生になり、その4人の先生もそのまま持ち上がった。
そしてこのスットコドッコイ4人組が、運動会ではこれまでの競争種目だけではなく、組体操を6年生に取り入れやがったのだ。
6年生の競争競技はと競争だけ。
あとは組体操とフォークダンスという、最後の小学校生活を飾るには迫力もない無念極まりない運動会となっちまった。

こちとら1年間待ちに待った暴れる機会の運動会、普段はいまいましい授業もなく、おおっぴらにゲームやかけっこに興じることができるってなもんだ。
運動神経が鈍く、体育の通信簿はいつも
〈もっとがんばりましょう〉
だった僕も、足だけは一丁前に早かったので、かけっこは何より楽しみだし、騎馬戦なんてのも発散できて楽しい。
子供は、ゲームが大好きなんである。
それをなんだよおい、品評会のように組体操をさせたって、苦しいだけで面白みなんぞありゃあしない。
ここまで指導できましたよっていう先生の自己満足と、ここまでできるのだと喜ぶ親の満足だけで成り立ってるんだもん。

確かに、かけっこや騎馬戦の嫌いな子も、いたっておかしくはない。
あんなのかったるい、楽しくない、そんな風に思うのも、自由でよろしい。
だけどさあ…組体操が好きで好きでたまらねえって子供は、まずいないと思うんだよなあ。
あれで達成感を感じる子供がいてもいいんだけれど、ちびっと先生に洗脳されてないかいと疑ってしまう。

とにもかくにも、4人組のエゴにより、僕らは組体操を、三軒茶屋小学校で初めて「やらされ」た。
得点競技ではないので、紅組に何点、白組に何点入るものでもない。
独裁主義国家や新興宗教のマスゲームじゃあるまいし、こんなもので協調性を学べもしない。
協調性というものは、押し付けられて学ぶものではないからだ。
ただ、ただ、苦痛。

だからと言って、教育委員会や政府などの体制側が、一方的に禁止を命ずるのは、嫌だ。
やりたい人の自由を奪う権利なんぞ、彼らには、ない。

玉入れに大玉転がし、パン食い競争に借り物競争、そういった単純なものだけで、充分盛り上がれるんだけどなあ。
親は校庭にゴザ敷いてさあ、水筒に隠した酒呑んじゃったりしてさあ、昼めしは親子一緒に食べるのもいいじゃねえか。
親が来てくれていない子供は、さあ、こっちのゴザにおいでよ、一緒にお食べよ。
自慢のデジカメで、君の分も撮ってあげるよ。

よし、中学校に入ったら、うんと運動会を堪能するんだと息巻いていたら、入学した駒沢中学校に運動会はなく、陸上競技会があるだけだった…。
がっくしがっくし。

つづく・・・


2016.02.11