若女将 けい子(仮称)

「見上げてごらん夜の星を / 坂本九」
 

見上げてごらん 夜の星を
小さな星の 小さな光りが
ささやかな幸せを うたってる

見上げてごらん 夜の星を
ぼくらのように 名もない星が
ささやかな幸せを 祈ってる

手をつなごう ぼくと
追いかけよう 夢を
二人なら 苦しくなんかないさ

見上げてごらん 夜の星を
小さな星の 小さな光りが
ささやかな幸せを うたってる

見上げてごらん 夜の星を
ぼくらのように 名もない星が
ささやかな幸せを 祈ってる

 
   多分私は、畳の上で死なせてもらえない。
   これだけ多くの業を背負ってしまったおんなだし。
   そうしちゃいけないと、私の中の誰かも囁くし。
   望んではいけない。罪と強欲にまみれた獣が望んではいけない。

それでも私は祈ってしまうの

   叶うならば、満天の星空を見上げながら死なせて欲しい。
   あの人が旅立った、あの銀河の中へ、あの星雲の中へ。
   「見上げてごらん夜の星を」を聞きながら、
              九ちゃんの優しすぎる歌声を聞きながら、
   あの人との地上での幸いを思い出しながら死ねるなら、
   それだけでもう十分。何もいらない。何も欲しくない。
   でも多分、涙でもう星は見えないんだろうな。
 
 
   叶うならば、息子より後で死なせて欲しい。
   あの子を一人残して旅立つ事だけはしたくないの。
   私はあの子の地上の星でいたいの。
 
 
   叶うならば、愛するあの人と息子に、また来世で会わせて欲しい。
   彼らと私の関係が現世と違っても構わない。
   私は近所に住み着いてる野良猫でもいいの。
   今よりもずっとずっと、彼らが幸せであってくれたなら、
   それが知れるなら、それでいいの。

 
ささやかな幸せを 祈ってる
 
 
 
 
 
 

2010.12.07