映画「鎌田浩宮 福島・相馬に行く」制作日誌03

撮影/文・鎌田浩宮

僕らは、
今、
どこに
いる?

上村愛子ちゃんの笑顔、素敵だったな。
今回もメダルに手が届かなかった。
でも、笑顔がとびっきりだった。

僕らは生きていて、メダルだとか、賞をもらうとか、いい子いい子頭なでなでしてもらうという事は、ほんに少ない。
一生縁のない人も、いる。
メダルのない人の方が、この世界には、圧倒的に多いのだ。
愛子ちゃんも、メダルも、いい子いい子もなかった。
でも、豊かな4年間を過ごせ、全力を出し切れたのだろう。
ジンセーというのは、メダルなどなくっても、あんなにいい笑顔になれるかどうか、が重要なんだと思う。

さあ、そんな笑顔になれるか、映画を創っていこう。

 

 

2014年2月12日(水) 急遽、チラシを作るのだ

相変わらず、雪が積もっている。
そのおかげで、福島各地の放射線量は、下がっている。
地面からの放出が、膝下まである大雪で遮られているのだ。
地元の新聞には、各地数百カ所の数値が毎日記載されている。
2012年の夏に来た時は、相馬の場合、高い所だと約0.3μSv/hもあったのが、今日は0.1、いい所はそれ以下の所もある。
これなら、大袈裟に言えば東京並みだ。
逆に言うと、このくらいの厚さの遮蔽がないと、線量は下がらないという事でもあるのかなあ。

  • 杉ちゃん家の軒先は、つららだど。

さて今日は、宣伝方法を模索。
お父さん(主演の杉本紀男さん)の世代だと、SNSどころかネットも見ない。
であれば、相馬市民の皆さんに幅広く告知できるのは、新聞の折り込みチラシだな、となり、地元の2大新聞、福島民友と福島民報の相馬配達店に電話。
こういう時はお父さんがすぐに電話帳で電話番号を調べてくれる。
で、分かったのは、A4チラシで1枚3円+消費税とのこと。
そして、民友が4200部、民報が4800部。
こりゃあかなりの宣伝効果がありそうだが、2紙に頼むと28350円もかかる。
もちろんチラシを作るにも、印刷代だのなんだのもかかる。
撮影開始から支出ばかりで収入のない状態、加えて今回は無料上映。
頭が痛い。
そこでお父さんがツルの一声。
「今回はそんなに宣伝したくない」

原発事故などについて本音で喋っているドキュメンタリーなので、72歳にして映画初出演のお父さん、相馬の皆さんからあらぬ批判を受けないかと不安で一杯なのだ。
そういう不安を抱えつつも上映に力を貸してくれるお父さんに、心から頭が下がる。
一方、息子の杉ちゃんは、宣伝は盛大にやりたいとの事。
しかしお父さんの意向を尊重し、今回は口コミだけの宣伝に決定。

  • おばあちゃんの部屋から。陽射しがすんごく温かい。暖房いらず。

だけんじょ、友人知人仲間達へ口コミをするにも、チラシはあった方がいいなあとお父さん。
今夜、お父さんの仲間が集まる呑み会がある。
そこでチラシ、配りたい。
よし、俺、今から簡単なデザインのチラシ、作っちゃうよ、とキャマダ。
なんと、エクセルを使って相馬でチラシを作っちゃおう。
必死になれば、夜までに間に合うだろうか。
杉ちゃん家にはプリンターがない、周りに持っている人もいない。
そこで杉ちゃんが、セブンイレブンでネットプリントなるものがあると提案。
これ、印刷したいデータをセブンイレブンに無料で送信すると、最寄りの店でプリントアウトできるというもの。
よし、これで行こう!
3人でのお茶の間緊急会議終了。
俺、猛然とチラシを作り始める。
以前からバンドのライヴのチラシなどは、エクセルで作っちゃうのだ。
自称「エクセルの魔術師」。
僕、高校では美術部の部長だったです。

フビンな脳みそをフル回転、午前中2時間かけ、映画からの写真も取り入れ、キャッチコピー(映画風に言うと「惹句」)もバシッと入れて、お父さんと杉ちゃんに見せ、完成。
2人とも、気に入ってくれた。
3人で昼飯を外へ食べに行くついでに、セブンイレブンへ寄りプリントアウトし、それをさらに、まずは40枚カラーコピー。
ちなみに、杉ちゃん家からセブンイレブンまでは、車で10分弱。
決して近くはない。
そして、チラシのPDFデータを杉ちゃんのPCに送信し、いつでも好きなだけプリントできるようにしておく。
帰宅し記念写真を撮り、それをツイッターとフェイスブックにアップ。
それをさらに杉ちゃんがシェア。
ありがたい事に、着々とリツイートやいいねをされていく。

  • そうか。美術部か。ふむふむ、と2人。

実は当初、チラシは東京で作り、それを抱え再度相馬に行って渡さないとと思っていた。
だからこれで、交通費も時間も大幅短縮できた。

ふう!これで、今夜お父さんの仲間が集う呑み会に間に合った。
そこでチラシを配り、口コミしていくのだ。
夕方、お父さん、ニコニコしながら仲間に電話する。
「ん?明日だったか!」
…。
お父さん、明日の呑み会を今日と勘違いしてた。
部屋がだっふんだな空気充満。
しかしすぐに笑い。
俺と杉ちゃんで夕飯を作り、今夜も楽しく呑む。
つーか、夜になると2人とも元気良すぎだぞ。
ガンガン呑み、ガンガンマシンガントーク。
今日も3人で、1つ仕事を終えたのだ。

  • 最初は100枚コピーしようと言ってたが、とりあえずは40枚。

杉ちゃん、かなり酔いながら、地元のある友人に電話。
その人は以前相馬で映画の上映会を催した事があり、宣伝方法をアドバイスしてもらおうと以前から言っていたのだ。
電話を代わってもらい、1番いいのは折込チラシより、新聞の記事に取り上げてもらうという事だった。
なるほど、ありがとうございます。
まだ夜9時前。
善は急げ、酔いを醒ますために濃いコーヒーをがぶ飲みし、福島民友、福島民報、河北新報に電話し取材要請をし、チラシのデータをメールで送る。
こんなどこの馬の骨とも分からぬ者に、3社とも対応がいい。
さあ、どこかから取材、来るかな?
杉ちゃん、べろんべろんに酔っ払って、俺の作ったおかずでご飯を2杯もおかわりしてる。

皆が寝て、深夜はおばあちゃんの部屋でオリンピック。

つづく・・・

映画「鎌田浩宮 福島・相馬に行く」特別先行無料上映会

入場無料です!!お気軽にお越し下さい。
日程 2014年4月6日 日曜日
開場 午後1時30分
開映 午後2時
場所 相馬市民会館内 多目的ホール
福島県相馬市中村北町63-3 電話 0244-35-2426

出演 杉本紀男 杉本敏之 チャコ 鎌田浩宮 他
監督 大友太郎・鎌田浩宮・菅野宏彰
撮影 菅野宏彰・平野哲郎
編集・構成 大友太郎
タイトルデザイン 井上綾
音楽 鎌田浩宮


2014.02.26