第116話 第4章「London Calling? そんなのあったよね?」の巻

「ねえ、かえる」

 

「ン? どしたん?」

 

手をつなぎ、ポートベロの道を

ラッドブロークグローブに向かう道の途中だった

 

「どしたん? 具合悪いの?」

 

「やっぱ、にっぽんにかえる」

 

「え? なにそれ?」

 

「もう、あしたかえる」

 

「・・・。」

 

全てを捨てるって程じゃないけど

いろいろ決心して、わざわざロンドンくんだりまできたのに、

またコイツの気まぐれ?

 

「だから、どうしたんだよ?」

 

「べつに、帰りたいだけだよ」

 

なんだよ、それ…

 

「なに? ホームシックってやつ? オマエらしくないじゃん?」

 

「そんなんじゃないよ…」

 

だったら、なんなんだよ…

 

「ねえ、浅草にかき氷食べ行かない?」

 

「はぁ~? なに? カキゴオリ?」

 

「耳とーい?いまそういったじゃん、浅草でかき氷食べたい」

 

おい、ホンキかコイツ?

 

「ねえ、さあ、オマエさ、なにしにここきたの? かえるってナニ? ねえ、おれさ、なんでここいんの? ねえ? きいてる? ねえ?」

 

「なんか、あきたから帰るだけ」

 

「はぁ? オマエ、ナニいってんの?わかんねーよ」

 

「だーかーら、もうかえんの!」

 

俺、いつロンドンのこの地に来たんだっけ?

たしか、3週間前くらいだよな?

全部捨てて、“まっさらな自分”を夢見て、

ついでに、やっぱりコイツと一緒にいたくて

んで、ここに来たんだよな?

 

で、なに?

帰るってどこに?

鎌倉?目黒?ひっくるめてトーキョー?

 

おいおい、ちょっと待てよ

おれ、マジでナニをしにここきたんだよ?

 

「なあ、きゅうにどうしたん? おまえらしくないじゃん?」

 

本当は、心の底では、コイツらしいとは思ったものの

安っぽい言葉が無意識に口に出た

 

「なによ、おまえらしいって? かえりたいだけ、いま、おもったから…」

 

んだこいつ!

 

コイツと一緒にいて、105回位アタマきて

26回くらい、別れようと思ったけど

それでも、25回がまんして一緒にいるけど

残りの1回と、もう一回目のよくわからん、我慢できない発言だ

 

ちょっとだけ、オトナになりつつある自分に言い聞かせた

“おい、ここは、いつものとおりだ、冷静にいけ!”

 

「なあ、それはおいといてさ、今日キングスロードのチェルシーキッチンでごはんたべよっか?」

 

「いかない…、かえるから…」

 

まじ、なにこいつ?

 

かってにきといて勝手にかえる?

まあ、自分の好きにすればいいけどさ

 

「ふーん、じゃあ、おれまだここいるからかえれば?」

 

「うん、そーする」

 

以上か? これで、会話終わり?

まあ、俺もこれ以上いうことないけど

 

「なに、帰りのチケットあんだっけ?」

 

「あるよ」

 

「ふーん」

 

繋いでいた手をはなした

 

その瞬間、カノジョはUターンして

いまきた道をなぞるように歩いていった

 

“またこれかよ”

“俺のせいじゃないよな?”

 

二代目クリスは、俺とカノジョの顔を交互に見ながら

Uターンしたカノジョの後を追った

 

 

2013.06.23